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第2章エクスプレス サイドB①魔窟の養生楼閣都市/死闘編
Part34 カエルノオウジサマ/道化師を追うもの
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東京アバディーン扇状市街区の南米系の住民の多いエリアから、襲撃事件の起きているこの荒れ地のエリアへと足を踏み入れてきた女たちが4人ほど現れる。
エルバ、イサベル、マリアネラ、プリシラ――
ファミリア・デラ・サングレの首魁ペガソの腹心の部下でペガソの寵愛を受ける者たち。
部隊名『ペラ』
一人一人が強力な力を持つ戦闘エキスパートの集団であった。
彼女たちはスラム街の背後を迂回する形で細路地を通り抜けて、今回の戦闘エリアへと足を踏み入れつつあった。本来彼女たちは5人で今回の作戦を命じられていた。だが1名は独断で先行し、残っているのは現在の4名、その4名の中で斥候として先んじる者がいる。
地上ではなく建築物の頂きにて巧みにその身を隠しながら打ち捨てられた建築物の屋上をつたって移動している。そのステルス能力は極めて高く、その存在が気取られている様子は微塵もない。
今、戦闘が行われているエリアの背後を突くように回り込み、残る3人の仲間たちを誘導しつつあった。4人の中のひとり、ナイフ使いのエルバが、独特のイントネーションが特徴のプリシラに声をかけた。
「プリシラ。あとどれくらい?」
その問いにプリシラは肉声では答えない。特攻装警たちやプロセスたちがしているように、体内に仕込まれた通信回線により返事を返してくる。
〔もうすぐぅ。あと一個ビルを回り込んだらね。戦闘の目の前だから気をつけてね――〕
独特の緊張の薄いイントネーション、その話し方こそがプリシラの個性の一つである事は誰もが理解していた。だがプリシラは意外な言葉を口にしていた。エルバが返事を返す前に、仲間たちに向けて声を発したのだ。
〔あー、ひどーい〕
その微妙な言い回しにエルバは思わず問い返していた。
〔ちょっと? 何が起きてるの? あんたの見えてるものこっちにも回しなさいよ〕
〔うん、わかったー〕
緊張感の無さがプリシラという女性の持ち味だったが、その能力はペラの女たちにとっては重要な〝目〟の役割をはたすことになる。そして体内回線を通じて送られてきた映像を目の当たりにしてエルバ以下の3人は瞬時にして〝怒り〟を誘われずには居られなかったのである。
まず、驚きを口にしたのはナイフ使いのエルバ。
〔ちょっとこいつら何やってるのよ?〕
次に、嫌悪感を吐き捨てたのは銃器使いのイサベル。
〔ゲス野郎〕
冷静に淡々と告げたのは青いマニキュアが特徴のマリアネラ
〔こいつらアレよ。日本警察の薄汚れた黒い奴らよ。情報戦特化小隊。名前くらいは知ってるでしょ?〕
〔知らないはずないわ、1000回殺しても飽き足らない連中よ!〕
〔女子供も見境なしの黒い特殊部隊。気の触れたサイボーグ部隊〕
〔うん、そうだよー。どうやらコイツらが騒ぎをひろげてるみたいだねー〕
プリシラが冷静に状況を分析していた。
〔でもどうするぅ? アタシはこうやって視覚フィルター通してどうにか見れるけどぉ、コイツらのステルス能力面倒だよ?〕
ステルス能力を持つ敵とやり合うには、相手の存在をどう認識するかが要となる。だが現状ではそれを把握できるのはプリシラしか居ないようだ。その現状に判断を下したのはナイフ使いのエルバである。
〔どうするも何もいつも通りよ。わかってるでしょ? プリシラ、あんたの力を使うわよ〕
〔うんわかったー、ちょっとまって〕
その言葉の後に、ビル屋上から一気に飛び降りてくるプリシラ。地上に降りた際の足音こそするもののその彼女の姿は一切見えない。だが魔法を解いたかのようにプリシラの姿が唐突に現れる。
〔こっから先はアタシたちも地上から行くね。アタシが先頭で立体ホログラム映像を展開するから一緒についてきて〕
プリシラの能力――それは単なるステルス能力ではない。自分自身を含む複数の存在を完璧に消しされる程の立体ホログラム映像を広範囲に展開可能なのだ。
〔OK、それでいいわ。此処から先は肉声の会話は無しよ良いわね?〕
エルバがそう命じれば、イサベルとマリアネラが答えを返す。
〔オーケィ〕
〔了解〕
そして4人は一塊となって先へと進む。そして、今さに戦火が激しく交わされている現場へと突入して行く。その彼女たちが目の当たりにしたものそれこそが――
〔燃えてる?〕
〔カエル? 何あれ?〕
――銃火に敗れて地上へと真っ逆さまに落ちていくイプシロンであった。その姿にイサベルが叫んだ。
〔あれ! クラウンの部下よ! いつもクラウンにくっついてる腰巾着!〕
その声がきっかけだった。彼女たちに与えられている命令は一つ――、あの死の道化師の姿を捕らえる事。そしてそれを彼女たちを支配しているペガソへと知らせることであった。
本能が彼女たちを突き動かした。なぜなら――
〔あのイカれピエロをなんとしても見つけるよ!〕
〔当たり前よ!〕
――彼女たちもペガソと同じように過去の悪夢に捕らえられた者たちだからである。
エルバ、イサベル、マリアネラ、プリシラ――
ファミリア・デラ・サングレの首魁ペガソの腹心の部下でペガソの寵愛を受ける者たち。
部隊名『ペラ』
一人一人が強力な力を持つ戦闘エキスパートの集団であった。
彼女たちはスラム街の背後を迂回する形で細路地を通り抜けて、今回の戦闘エリアへと足を踏み入れつつあった。本来彼女たちは5人で今回の作戦を命じられていた。だが1名は独断で先行し、残っているのは現在の4名、その4名の中で斥候として先んじる者がいる。
地上ではなく建築物の頂きにて巧みにその身を隠しながら打ち捨てられた建築物の屋上をつたって移動している。そのステルス能力は極めて高く、その存在が気取られている様子は微塵もない。
今、戦闘が行われているエリアの背後を突くように回り込み、残る3人の仲間たちを誘導しつつあった。4人の中のひとり、ナイフ使いのエルバが、独特のイントネーションが特徴のプリシラに声をかけた。
「プリシラ。あとどれくらい?」
その問いにプリシラは肉声では答えない。特攻装警たちやプロセスたちがしているように、体内に仕込まれた通信回線により返事を返してくる。
〔もうすぐぅ。あと一個ビルを回り込んだらね。戦闘の目の前だから気をつけてね――〕
独特の緊張の薄いイントネーション、その話し方こそがプリシラの個性の一つである事は誰もが理解していた。だがプリシラは意外な言葉を口にしていた。エルバが返事を返す前に、仲間たちに向けて声を発したのだ。
〔あー、ひどーい〕
その微妙な言い回しにエルバは思わず問い返していた。
〔ちょっと? 何が起きてるの? あんたの見えてるものこっちにも回しなさいよ〕
〔うん、わかったー〕
緊張感の無さがプリシラという女性の持ち味だったが、その能力はペラの女たちにとっては重要な〝目〟の役割をはたすことになる。そして体内回線を通じて送られてきた映像を目の当たりにしてエルバ以下の3人は瞬時にして〝怒り〟を誘われずには居られなかったのである。
まず、驚きを口にしたのはナイフ使いのエルバ。
〔ちょっとこいつら何やってるのよ?〕
次に、嫌悪感を吐き捨てたのは銃器使いのイサベル。
〔ゲス野郎〕
冷静に淡々と告げたのは青いマニキュアが特徴のマリアネラ
〔こいつらアレよ。日本警察の薄汚れた黒い奴らよ。情報戦特化小隊。名前くらいは知ってるでしょ?〕
〔知らないはずないわ、1000回殺しても飽き足らない連中よ!〕
〔女子供も見境なしの黒い特殊部隊。気の触れたサイボーグ部隊〕
〔うん、そうだよー。どうやらコイツらが騒ぎをひろげてるみたいだねー〕
プリシラが冷静に状況を分析していた。
〔でもどうするぅ? アタシはこうやって視覚フィルター通してどうにか見れるけどぉ、コイツらのステルス能力面倒だよ?〕
ステルス能力を持つ敵とやり合うには、相手の存在をどう認識するかが要となる。だが現状ではそれを把握できるのはプリシラしか居ないようだ。その現状に判断を下したのはナイフ使いのエルバである。
〔どうするも何もいつも通りよ。わかってるでしょ? プリシラ、あんたの力を使うわよ〕
〔うんわかったー、ちょっとまって〕
その言葉の後に、ビル屋上から一気に飛び降りてくるプリシラ。地上に降りた際の足音こそするもののその彼女の姿は一切見えない。だが魔法を解いたかのようにプリシラの姿が唐突に現れる。
〔こっから先はアタシたちも地上から行くね。アタシが先頭で立体ホログラム映像を展開するから一緒についてきて〕
プリシラの能力――それは単なるステルス能力ではない。自分自身を含む複数の存在を完璧に消しされる程の立体ホログラム映像を広範囲に展開可能なのだ。
〔OK、それでいいわ。此処から先は肉声の会話は無しよ良いわね?〕
エルバがそう命じれば、イサベルとマリアネラが答えを返す。
〔オーケィ〕
〔了解〕
そして4人は一塊となって先へと進む。そして、今さに戦火が激しく交わされている現場へと突入して行く。その彼女たちが目の当たりにしたものそれこそが――
〔燃えてる?〕
〔カエル? 何あれ?〕
――銃火に敗れて地上へと真っ逆さまに落ちていくイプシロンであった。その姿にイサベルが叫んだ。
〔あれ! クラウンの部下よ! いつもクラウンにくっついてる腰巾着!〕
その声がきっかけだった。彼女たちに与えられている命令は一つ――、あの死の道化師の姿を捕らえる事。そしてそれを彼女たちを支配しているペガソへと知らせることであった。
本能が彼女たちを突き動かした。なぜなら――
〔あのイカれピエロをなんとしても見つけるよ!〕
〔当たり前よ!〕
――彼女たちもペガソと同じように過去の悪夢に捕らえられた者たちだからである。
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