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第2章エクスプレス サイドB①魔窟の養生楼閣都市/集結編
Part21 天使と希望と/中央道調布IC
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■中央道調布ICにて
同時刻、一切の行動を秘匿して密かに警視庁から離れた2台の車が有った。
警察が一般的に用いる高級セダンで質素な黒系、覆面パトカーとして支給されているごく一般的なものだ。製造メーカーは同一。ナンバーさえ見なければ遠目には区別がつかないだろう。
それが桜田門の建物から時間差を置いて離れ、一路、首都高4号線をひた走る。そして中央道の調布にて降りるとICの路肩にて待ち合わせをしていた。5分ほど遅れて後続の車が停車する。互いの車のナンバーを確認すると遅れてついてきたパトカーの運転をしていた男がスーツのポケットから一台のスマホを取り出し、特殊なアプリケーションを起動させる。
特殊な暗号化を音声に施すそのアプリを通じて男は前方のパトカーの運転をしていた人物へと通話をはじめた。それはまるで他の者の視線と干渉を避けるかのようでもある。
後方の車両の運転席に座する男は、背広姿で幅の細いカニ目のメガネを掛けたオールバックの男性。前方の車両の運転席に腰を下ろしているのは、独特のデザインのハーフコートを身に着けシンプルなデザインのゴーグルヘルメットをかぶった男性型のアンドロイド。
オールバックの男性の名は公安部公安第4課課長で大戸島警視、男性型のアンドロイドは特攻装警の第4号機、対情報戦用に特化したディアリオである。
街灯の下、2人は2つの車の中で機械を介して、誰にも明かせない会話を始めたのである。
そして、先に口を開いたのは大戸島である。
「此処から先はお前一人だ。うまく立ち回れ。わたしが言えることはそれだけだ」
だがディアリオは答えなかった。生真面目で理性的であり目的達成のためなら手段を選ばない男、それがディアリオと言う男であったが、このときだけはその理性に曇りが見えていた。ディアリオの沈黙は怒りその物だった。だがその沈黙に大戸島は告げる。
「不服か?」
当然の問いかけだった。上司からの詰問に感情を押さえるようにしてディアリオは言葉を選びながら答えを返す。
「少なくとも完全同意はできかねます」
不用意に無様に感情を爆発させるような事をしないのがディアリオである。だが彼が選びに選んだ言葉には理不尽に対して押さえきれない怒りが潜んでいる。その怒りの正体を大戸島は知っていた。
「だろうな。わたしもだ」
大戸島は意外とも思える言葉を発した。ディアリオが驚きを飲み込みながらも上司の言葉の先をじっと待った。
2人は公安組織に身を置く者だ。だが一人は公安4課、もう一人は情報機動隊、巨大な公安組織の中においては主流から離れた異端の存在である。
そもそも公安4課は直接的に捜査活動には参加せず、他課が集めてきた資料やデータを分析蓄積し管理することが目的の部署だ。それが公安部内に情報機動隊が設立されるに辺り、公安部が情報機動隊の存在を公安本来の目的に過剰利用しないように独立性を保つため、あえて事務畑の4課を改変拡張して、公安4課3係を設立、この下に情報機動隊の実働部隊を配置しているのである。
鏡石は情報機動隊の隊長と言う肩書きだが、公安内部的には公安4課3係の係長であり、情報機動隊員も公安警察官と言う立場になるのである。ただそれはあくまでも公安内部上の肩書であり、一般社会に対しては情報機動隊と公安とのつながりは曖昧なままとされている。警察内部でも情報機動隊がどこの管理下となるかという情報は開示されておらず、独立した組織であると誤認している者すら居るのが現場であった。
しかし、情報機動隊は公安部の中においては、公安総務課や公安1課~3課と言った実働部隊とは分離した行動体制を持つ組織として運用されていた。公安部の巨大な捜査権限の過剰な強化とならず、それでいて刑事警察とも連動を可能にし、なおかつ公安内部の諸セクションとも臨機に連携するという、想像を絶する様な困難な組織運営を強いられていたのだ。
その想像を絶する困難の舵取りを行う男こそが、この公安4課課長である大戸島である。
大戸島が口にした言葉にディアリオは上司がその胸中に秘めていた複雑な思いの片鱗を察していた。いたずらに反発するのではなく、事実を完全に理解した上で意見を述べるべきだと気づいていた。そして大戸島は更に言葉を続けた。
「ディアリオ、よく聞け」
メガネのレンズ越しの鋭い視線が、前方車両運転席のディアリオのシルエットを見ていた。
「公安の主流派、そして過去の戦前から連綿と続いている〝亡霊〟たちが狙っている物を決して容認するつもりはない。公安とはあくまでも〝捜査〟し〝調査〟し、国家を危険にさらす異分子共を〝逮捕〟することこそが重要任務だ。武装を強化して犯罪者を一方的に攻撃することは公安としてあるべき姿ではないと認識している。今までもこれからも、公安はたとえ個人のプライバシーや自由を無視してでも、国家という枠組みと国体というシステムを擁護・維持するために、真実を知り突き止める事こそがその重要な役割であるはずなのだ」
大戸島が語る確固たる思いにディアリオはハッキリと頷いていた。
「その言葉、かねてから課長から度々拝聴しております。その言葉に疑いは一部たりとも抱いておりません」
ディアリオの言葉に大戸島は頷く。
「いいか。法とモラルを無視してでも行う事の行き着く先が単なる〝暴力〟であると言うのなら、それはもはや警察でも公安でもない。独裁国家の秘密警察か暴徒化軍隊だ。そんな物はこの国には必要ない」
「仰る通りです」
「しかしだ、ディアリオ。公安の確固たる理念に基づいた姿に相反する物が存在する。それが何かはわかるか?」
何時になく鋭い言葉がディアリオの認識を厳しく問いただしていた。即座に自分の知識と信念と記憶とを探ると彼らが信じる公安警察の理念から、大きく逸脱した存在が有ることに気付かされる。ディアリオの口が静かに開いた。
「わかります。ですが今ここで口にはしません」
「それでいい。真実は秘するからこそ守られるのだ」
そしてディアリオが大戸島の言葉に頷きを返した時、大戸島はディアリオにハッキリと告げたのだ。
「ディアリオ、わたしはお前をあの連中の元へと送る。お前は情報機動隊と言う組織を護るための人身御供だ。生贄だ。そしてそれは極めて重要な事なのだ」
ディアリオのシルエットが再び頷いていた。
「もし、ここでいたずらに反発し、〝あの連中〟の意図にそぐわないと判断されれば、公安4課もろとも情報機動隊は解体され、隊は実質、他セクションへと吸収されることとなる。そしてお前も鏡石も闇へと葬り去られる。それだけは絶対に阻止しなければならない」
「無論です」
ディアリオが発した言葉に大戸島が頷いている。その姿をディアリオはルームミラー越しに見ていた。
「ディアリオ、お前は〝あの連中〟の実働部隊であるゴロツキどもに同行し、洋上スラムの真っ只中へと送り込まれる。そして名目上はアトラスとエリオットの救出を行うことになる。だが〝あの連中〟が望んでいるのはこのドサクサに乗じて、お前を葬り去り、アトラスとエリオットの消息を断つことに有る。そうなればセンチュリーが大破し、グラウザーが消耗しつつある今、残されているのはフィールだけになってしまう。それだけは断固として阻止しなければならない。絶対にだ! お前がこれから望むのは情報戦でも対機械戦闘でもない――」
ディアリオは言葉の先をじっと待った。そして大戸島が語る言葉に刮目させられることとなる。
「お前が望むのは〝サバイバル戦〟だ!」
強い言葉が投げかけられる。冷静でクールで感情表現に乏しいとまで言われている大戸島には似つかわしくない感情的な言葉であった。
「ディアリオ」
「はい」
「わたしは、全特攻装警の中において最強とは、頑強なアトラスでも、俊敏なセンチュリーでも、重武装なエリオットでも、ましてや多機能なグラウザーでもないと認識している。世界中の情報を掌握し、旧社会主義国の極秘ファイルすらこじ開け、都市セクションをまるごと沈黙させることのできるお前こそが最強の特攻装警であると言う認識は一度たりとも揺らいでいない! いいかディアリオ――」
「はい」
淡々とした言葉の中に強い思いがにじみ出ていた。
「正義も悪も、正も邪も、破壊も創造も、森羅万象あらゆるものを掌握できる存在、それがお前だ! お前のその能力をフルに活用し必ず生きて返ってこい! それが今回私がお前に課する唯一の任務だ」
それは信頼という言葉で表現するには足りないほどに、強く熱い思いであった。そして大戸島が自らが持つものをすべて注いで育て上げた最強の情報戦の担い手こそが、ディアリオであるのだ。
その思いを理解してディアリオは復唱する。
「復唱します。特攻装警ディアリオ、湾岸地域の洋上スラムに潜入、アトラス・エリオット両機を救出するとともに、私自身も必ず生還いたします」
ディアリオの言葉に大戸島はハッキリと頷いた。その大戸島にディアリオが尋ねる。
「課長、一つだけよろしいでしょうか?」
「なんだ」
「鏡石隊長は何処へ?」
現在、鏡石は連絡不通であり、所在不明であった。ディアリオですら知らない所在についての問いかけだった。
「鏡石は無事だ。私個人の外部協力者のつてをたどってすでに日本国外へと脱出済みだ。あいつは有能だが、お前ほど公安の裏の論理に精通していない。こう言う緊急事態の対処能力は満足できるものではないからな。やつの命を守るためにも行った判断だ。しかしお前は別だ。お前ならいかなる事態にも対抗できるはずだ」
「無論です。電脳化されたこの都市こそが、わたしの最も得意とするフィールドですから」
「それでいい。特に今回は、お前専用の特殊装備の使用を許可してある。たとえ違法武装サイボーグに囲まれても何の不安もない。安心して暴れてこい!」
「了解です。特攻装警の命脈は必ず守ります」
そして通信が切られると、前方の覆面パトカーが走り出す。向かう先は警察航空機とは無縁のはずの調布飛行場であった。
大戸島はその走り去るシルエットを見届けると自分自身も覆面パトカーを走らせ、インターチェンジを入り直して都心方面へと首都高を走り出す。今夜のこの2人のやり取りは記録には一切残らない。公式には2人はこの場所では会っていない。一切の真実が秘匿されたまま、過酷な夜は更けていくのである。
同時刻、一切の行動を秘匿して密かに警視庁から離れた2台の車が有った。
警察が一般的に用いる高級セダンで質素な黒系、覆面パトカーとして支給されているごく一般的なものだ。製造メーカーは同一。ナンバーさえ見なければ遠目には区別がつかないだろう。
それが桜田門の建物から時間差を置いて離れ、一路、首都高4号線をひた走る。そして中央道の調布にて降りるとICの路肩にて待ち合わせをしていた。5分ほど遅れて後続の車が停車する。互いの車のナンバーを確認すると遅れてついてきたパトカーの運転をしていた男がスーツのポケットから一台のスマホを取り出し、特殊なアプリケーションを起動させる。
特殊な暗号化を音声に施すそのアプリを通じて男は前方のパトカーの運転をしていた人物へと通話をはじめた。それはまるで他の者の視線と干渉を避けるかのようでもある。
後方の車両の運転席に座する男は、背広姿で幅の細いカニ目のメガネを掛けたオールバックの男性。前方の車両の運転席に腰を下ろしているのは、独特のデザインのハーフコートを身に着けシンプルなデザインのゴーグルヘルメットをかぶった男性型のアンドロイド。
オールバックの男性の名は公安部公安第4課課長で大戸島警視、男性型のアンドロイドは特攻装警の第4号機、対情報戦用に特化したディアリオである。
街灯の下、2人は2つの車の中で機械を介して、誰にも明かせない会話を始めたのである。
そして、先に口を開いたのは大戸島である。
「此処から先はお前一人だ。うまく立ち回れ。わたしが言えることはそれだけだ」
だがディアリオは答えなかった。生真面目で理性的であり目的達成のためなら手段を選ばない男、それがディアリオと言う男であったが、このときだけはその理性に曇りが見えていた。ディアリオの沈黙は怒りその物だった。だがその沈黙に大戸島は告げる。
「不服か?」
当然の問いかけだった。上司からの詰問に感情を押さえるようにしてディアリオは言葉を選びながら答えを返す。
「少なくとも完全同意はできかねます」
不用意に無様に感情を爆発させるような事をしないのがディアリオである。だが彼が選びに選んだ言葉には理不尽に対して押さえきれない怒りが潜んでいる。その怒りの正体を大戸島は知っていた。
「だろうな。わたしもだ」
大戸島は意外とも思える言葉を発した。ディアリオが驚きを飲み込みながらも上司の言葉の先をじっと待った。
2人は公安組織に身を置く者だ。だが一人は公安4課、もう一人は情報機動隊、巨大な公安組織の中においては主流から離れた異端の存在である。
そもそも公安4課は直接的に捜査活動には参加せず、他課が集めてきた資料やデータを分析蓄積し管理することが目的の部署だ。それが公安部内に情報機動隊が設立されるに辺り、公安部が情報機動隊の存在を公安本来の目的に過剰利用しないように独立性を保つため、あえて事務畑の4課を改変拡張して、公安4課3係を設立、この下に情報機動隊の実働部隊を配置しているのである。
鏡石は情報機動隊の隊長と言う肩書きだが、公安内部的には公安4課3係の係長であり、情報機動隊員も公安警察官と言う立場になるのである。ただそれはあくまでも公安内部上の肩書であり、一般社会に対しては情報機動隊と公安とのつながりは曖昧なままとされている。警察内部でも情報機動隊がどこの管理下となるかという情報は開示されておらず、独立した組織であると誤認している者すら居るのが現場であった。
しかし、情報機動隊は公安部の中においては、公安総務課や公安1課~3課と言った実働部隊とは分離した行動体制を持つ組織として運用されていた。公安部の巨大な捜査権限の過剰な強化とならず、それでいて刑事警察とも連動を可能にし、なおかつ公安内部の諸セクションとも臨機に連携するという、想像を絶する様な困難な組織運営を強いられていたのだ。
その想像を絶する困難の舵取りを行う男こそが、この公安4課課長である大戸島である。
大戸島が口にした言葉にディアリオは上司がその胸中に秘めていた複雑な思いの片鱗を察していた。いたずらに反発するのではなく、事実を完全に理解した上で意見を述べるべきだと気づいていた。そして大戸島は更に言葉を続けた。
「ディアリオ、よく聞け」
メガネのレンズ越しの鋭い視線が、前方車両運転席のディアリオのシルエットを見ていた。
「公安の主流派、そして過去の戦前から連綿と続いている〝亡霊〟たちが狙っている物を決して容認するつもりはない。公安とはあくまでも〝捜査〟し〝調査〟し、国家を危険にさらす異分子共を〝逮捕〟することこそが重要任務だ。武装を強化して犯罪者を一方的に攻撃することは公安としてあるべき姿ではないと認識している。今までもこれからも、公安はたとえ個人のプライバシーや自由を無視してでも、国家という枠組みと国体というシステムを擁護・維持するために、真実を知り突き止める事こそがその重要な役割であるはずなのだ」
大戸島が語る確固たる思いにディアリオはハッキリと頷いていた。
「その言葉、かねてから課長から度々拝聴しております。その言葉に疑いは一部たりとも抱いておりません」
ディアリオの言葉に大戸島は頷く。
「いいか。法とモラルを無視してでも行う事の行き着く先が単なる〝暴力〟であると言うのなら、それはもはや警察でも公安でもない。独裁国家の秘密警察か暴徒化軍隊だ。そんな物はこの国には必要ない」
「仰る通りです」
「しかしだ、ディアリオ。公安の確固たる理念に基づいた姿に相反する物が存在する。それが何かはわかるか?」
何時になく鋭い言葉がディアリオの認識を厳しく問いただしていた。即座に自分の知識と信念と記憶とを探ると彼らが信じる公安警察の理念から、大きく逸脱した存在が有ることに気付かされる。ディアリオの口が静かに開いた。
「わかります。ですが今ここで口にはしません」
「それでいい。真実は秘するからこそ守られるのだ」
そしてディアリオが大戸島の言葉に頷きを返した時、大戸島はディアリオにハッキリと告げたのだ。
「ディアリオ、わたしはお前をあの連中の元へと送る。お前は情報機動隊と言う組織を護るための人身御供だ。生贄だ。そしてそれは極めて重要な事なのだ」
ディアリオのシルエットが再び頷いていた。
「もし、ここでいたずらに反発し、〝あの連中〟の意図にそぐわないと判断されれば、公安4課もろとも情報機動隊は解体され、隊は実質、他セクションへと吸収されることとなる。そしてお前も鏡石も闇へと葬り去られる。それだけは絶対に阻止しなければならない」
「無論です」
ディアリオが発した言葉に大戸島が頷いている。その姿をディアリオはルームミラー越しに見ていた。
「ディアリオ、お前は〝あの連中〟の実働部隊であるゴロツキどもに同行し、洋上スラムの真っ只中へと送り込まれる。そして名目上はアトラスとエリオットの救出を行うことになる。だが〝あの連中〟が望んでいるのはこのドサクサに乗じて、お前を葬り去り、アトラスとエリオットの消息を断つことに有る。そうなればセンチュリーが大破し、グラウザーが消耗しつつある今、残されているのはフィールだけになってしまう。それだけは断固として阻止しなければならない。絶対にだ! お前がこれから望むのは情報戦でも対機械戦闘でもない――」
ディアリオは言葉の先をじっと待った。そして大戸島が語る言葉に刮目させられることとなる。
「お前が望むのは〝サバイバル戦〟だ!」
強い言葉が投げかけられる。冷静でクールで感情表現に乏しいとまで言われている大戸島には似つかわしくない感情的な言葉であった。
「ディアリオ」
「はい」
「わたしは、全特攻装警の中において最強とは、頑強なアトラスでも、俊敏なセンチュリーでも、重武装なエリオットでも、ましてや多機能なグラウザーでもないと認識している。世界中の情報を掌握し、旧社会主義国の極秘ファイルすらこじ開け、都市セクションをまるごと沈黙させることのできるお前こそが最強の特攻装警であると言う認識は一度たりとも揺らいでいない! いいかディアリオ――」
「はい」
淡々とした言葉の中に強い思いがにじみ出ていた。
「正義も悪も、正も邪も、破壊も創造も、森羅万象あらゆるものを掌握できる存在、それがお前だ! お前のその能力をフルに活用し必ず生きて返ってこい! それが今回私がお前に課する唯一の任務だ」
それは信頼という言葉で表現するには足りないほどに、強く熱い思いであった。そして大戸島が自らが持つものをすべて注いで育て上げた最強の情報戦の担い手こそが、ディアリオであるのだ。
その思いを理解してディアリオは復唱する。
「復唱します。特攻装警ディアリオ、湾岸地域の洋上スラムに潜入、アトラス・エリオット両機を救出するとともに、私自身も必ず生還いたします」
ディアリオの言葉に大戸島はハッキリと頷いた。その大戸島にディアリオが尋ねる。
「課長、一つだけよろしいでしょうか?」
「なんだ」
「鏡石隊長は何処へ?」
現在、鏡石は連絡不通であり、所在不明であった。ディアリオですら知らない所在についての問いかけだった。
「鏡石は無事だ。私個人の外部協力者のつてをたどってすでに日本国外へと脱出済みだ。あいつは有能だが、お前ほど公安の裏の論理に精通していない。こう言う緊急事態の対処能力は満足できるものではないからな。やつの命を守るためにも行った判断だ。しかしお前は別だ。お前ならいかなる事態にも対抗できるはずだ」
「無論です。電脳化されたこの都市こそが、わたしの最も得意とするフィールドですから」
「それでいい。特に今回は、お前専用の特殊装備の使用を許可してある。たとえ違法武装サイボーグに囲まれても何の不安もない。安心して暴れてこい!」
「了解です。特攻装警の命脈は必ず守ります」
そして通信が切られると、前方の覆面パトカーが走り出す。向かう先は警察航空機とは無縁のはずの調布飛行場であった。
大戸島はその走り去るシルエットを見届けると自分自身も覆面パトカーを走らせ、インターチェンジを入り直して都心方面へと首都高を走り出す。今夜のこの2人のやり取りは記録には一切残らない。公式には2人はこの場所では会っていない。一切の真実が秘匿されたまま、過酷な夜は更けていくのである。
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