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第2章エクスプレス サイドB①魔窟の洋上楼閣都市/グラウザー編
Part14 GUILTY―断罪―/システム起動
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〔1分ですね?〕
〔わかった。やってみるぜ〕
若い男性の声が二人分帰ってくる。それを耳にしているのは神の雷ことシェン・レイだ。
闇夜の薄暗がりに沈む荒れた街路の上、その視線の先に捕らえているのは2体のアンドロイド警官と1体のテロアンドロイド――、特攻装警の二人とベルトコーネである。
シェン・レイは両足を広めにスタンスをとって佇むと、自らが全身にまとっているウェアラブル装備のコンディションをチェックしつつ音声メッセージを返す。無線回線のその先の特攻装警の二人に向けた返答である。
何時になく意識がクリアになるほどに冷静にクールに思考が冴えている。シェン・レイは抑揚の押さえられた落ち着いた声で答えていた。
〔頼むぞ。こちらも作業を開始する〕
その声に対して返ってくるのは、未来の可能性を秘めた若い力を象徴するような声だ。
〔はい!〕
シンプルな返事だが、そこに込められた思いはストレートだ。作業を開始するシェン・レイの口元には自然に笑みが漏れていた。無線音声回線を切ると思考操作で自らのウェアラブル電脳装備の全機能を立ち上げる。そして、シェン・レイの周囲の空間に3Dホログラム映像による仮想ディスプレイが立ち上がっていく。さらに3Dホログラムのヴァーチャルキーボードも浮かび上がる。
シェン・レイが闇社会において最強の電脳犯罪者の名を得ている理由の一端。
それは、何時いかなる時でも自由自在にネットアクセス、電子システム介入を可能にする、超高機能のウェアラブルコンピューターシステムを有しているが故である。
【インナースーツ】――身体の上に直にまとっており、装着者のシェン・レイの体温や発汗などのケアと、全システムの通信信号のバイパス回線を成している。
【ジャケットスーツ】――インナースーツの上に着ているのがダークメタリックの人造レザー風の全身スーツで、繊維自体が蓄電性能を持った一種の〝電池〟である電源繊維で出来ており、ウェアラブルコンピュータの電源を賄う機能を持つ。
【ウェアラブルサーバージャケット】――さらにその上の胸部に装着しているチョッキタイプの肉厚ジャケット。防弾チョッキの外見と機能を有するが、その中に収められているのは超高機能なコンピュータープロセッサーユニット。12のサブユニットから構成されるマルチプロセッサータイプのコンピューターだ。
【ソーラーコート】――最も外にまとっている漆黒のロングコートで、太陽電池パネルの機能を有し自家発電を可能にしており、周囲の空間に仮想ディスプレイやヴァーチャルキーボードを投影する3Dホログラム装置を多数内蔵している。
【サイバネティックス・インターフェース・グローブ】――両腕にはめており、微細な人工筋肉繊維が内部に仕込まれている。バーチャルリアリティとしての人工的な触感を再現可能なデーターグローブであり、メカニカルな外装は非常戦闘用のナックルとしても使用可能。
【ディスプレイゴーグル】――多重液晶スクリーン構造の大型ゴーグルでヘッドマウントディスプレイとして機能する。脳波誘導のインターフェイス回路も備わっておりシェン・レイの思考で様々な操作を行うことが可能。
自己開発したそれらのアイテム群を身にまとい、日進月歩で変化を続ける電脳犯罪の世界に身を投じて日夜戦い続けているのが彼――シェン・レイなのである。
「全システム起動、フルスペック開放」
思考誘導にみちびかれて起動を始めたコンピュータープロセッサー群に向けて、シェン・レイは音声コマンドを送った。それまで準起動状態のアイドリングモードであったものが、120%のレベルで全機能を開放する。
「ウェアラブルシステム、ブートアップ」
さらなる音声コマンドを送り、ウェアラブルシステムの基幹OSを立ち上げる。周囲の空間に投影されている3Dホログラム映像の仮想ディスプレイに起動メッセージが瞬時に表示された。
【 Southern Cross Operating System
【 Version 12.7
【 Boot-up sequence
【 > Check start
【 #0001: > #0002: > #0003: > #0004: > #0005: > #0006: >
【 #0007: > #0008: > #0009: > #0010: > #0011: > #0012:
【 All sub processor unit
【 > Check OK
【 Spatial multiplex communication network
【 > Access standby
【 > Connection ID: Main line: # XXX00004398743
【 > Connection ID: Sub Line: # XXX00002729835
【 > Real time variable password:Checking clear
【 [Connection requirements are satisfied]
【 > Main / Sub Connection OK
【 > Line priority setting: highest degree
【 Confirmation of all storage device status
【 > Unit # 0001 # 0002 ............... # 0047
【 [Check Okay No Error]
【 Visualized interfaces system
【 > Operation start
起動メッセージが一瞬にして流れされば、各種ツールプログラムが実動作可能なヴァーチャルインターフェースシステムが作動を開始する。
【STAND BY】の表示がされて使用できなかったヴァーチャルキーボードも作動可能状態であることを示す。全ての準備は完了した。あとは対象攻略のために必要なツールプログラムを行使するまでだ。
空間に浮遊するヴァーチャルキーボードを展開してツールプログラムを選択し即座に起動する。
【 High function Android Deep system 】
【 maintenance program 】
【 ――Daedalus―― 】
そしてさらに操作対象を指定する。
【 Operation target select ―― 】
【 > Target NAME:BELTCOUNE 】
当然ターゲットはベルトコーネにほかならない。さらに進める作業はベルトコーネの体内システムへの侵入である。
【 Access mode 】
【 > High cracking 】
【 Variable unique ID 】
【 [designation OK] 】
【 Realtime variable password 】
【 Cracking logic Specified 】
【 > Patching by external file 】
【 External file specification 】
【 File name:Marionet-Lola-Alteration 】
【 Cracking sequence START 】
操作過程を示すメッセージの中にはある人物の名が記されている。
マリオネットのローラ。ベルトコーネと創造者を同一とするアンドロイドである。
そこから採取した固有IDファイルを改変・拡張したものがそこに含まれていた。ベルトコーネのセキュリティシステムの一部データに強制上書きする事で、セキュリティシステムの一部をこじ開け、そこから深部システムのIDチェックをクラッキングする。その行為にはシェン・レイがローラに対して秘して抱いていたもう一つの狙いが示されていた。
【 Higher internal system security 】
【 > Variable unique ID 】
【 > Realtime variable password 】
【 [ Overwrite "COMPLETE" ] 】
【 Cracking sequence SUCCESSED 】
SUCCESSED―― すなわち〝成功〟の文字が画面を踊った。
「鍵は開けられた――」
静かなつぶやきを持ってしてシェン・レイは冷たく微笑んだ。
「さぁ、ベルトコーネ――、キサマの狂える魔拳を封滅させてもらうぞ」
〔わかった。やってみるぜ〕
若い男性の声が二人分帰ってくる。それを耳にしているのは神の雷ことシェン・レイだ。
闇夜の薄暗がりに沈む荒れた街路の上、その視線の先に捕らえているのは2体のアンドロイド警官と1体のテロアンドロイド――、特攻装警の二人とベルトコーネである。
シェン・レイは両足を広めにスタンスをとって佇むと、自らが全身にまとっているウェアラブル装備のコンディションをチェックしつつ音声メッセージを返す。無線回線のその先の特攻装警の二人に向けた返答である。
何時になく意識がクリアになるほどに冷静にクールに思考が冴えている。シェン・レイは抑揚の押さえられた落ち着いた声で答えていた。
〔頼むぞ。こちらも作業を開始する〕
その声に対して返ってくるのは、未来の可能性を秘めた若い力を象徴するような声だ。
〔はい!〕
シンプルな返事だが、そこに込められた思いはストレートだ。作業を開始するシェン・レイの口元には自然に笑みが漏れていた。無線音声回線を切ると思考操作で自らのウェアラブル電脳装備の全機能を立ち上げる。そして、シェン・レイの周囲の空間に3Dホログラム映像による仮想ディスプレイが立ち上がっていく。さらに3Dホログラムのヴァーチャルキーボードも浮かび上がる。
シェン・レイが闇社会において最強の電脳犯罪者の名を得ている理由の一端。
それは、何時いかなる時でも自由自在にネットアクセス、電子システム介入を可能にする、超高機能のウェアラブルコンピューターシステムを有しているが故である。
【インナースーツ】――身体の上に直にまとっており、装着者のシェン・レイの体温や発汗などのケアと、全システムの通信信号のバイパス回線を成している。
【ジャケットスーツ】――インナースーツの上に着ているのがダークメタリックの人造レザー風の全身スーツで、繊維自体が蓄電性能を持った一種の〝電池〟である電源繊維で出来ており、ウェアラブルコンピュータの電源を賄う機能を持つ。
【ウェアラブルサーバージャケット】――さらにその上の胸部に装着しているチョッキタイプの肉厚ジャケット。防弾チョッキの外見と機能を有するが、その中に収められているのは超高機能なコンピュータープロセッサーユニット。12のサブユニットから構成されるマルチプロセッサータイプのコンピューターだ。
【ソーラーコート】――最も外にまとっている漆黒のロングコートで、太陽電池パネルの機能を有し自家発電を可能にしており、周囲の空間に仮想ディスプレイやヴァーチャルキーボードを投影する3Dホログラム装置を多数内蔵している。
【サイバネティックス・インターフェース・グローブ】――両腕にはめており、微細な人工筋肉繊維が内部に仕込まれている。バーチャルリアリティとしての人工的な触感を再現可能なデーターグローブであり、メカニカルな外装は非常戦闘用のナックルとしても使用可能。
【ディスプレイゴーグル】――多重液晶スクリーン構造の大型ゴーグルでヘッドマウントディスプレイとして機能する。脳波誘導のインターフェイス回路も備わっておりシェン・レイの思考で様々な操作を行うことが可能。
自己開発したそれらのアイテム群を身にまとい、日進月歩で変化を続ける電脳犯罪の世界に身を投じて日夜戦い続けているのが彼――シェン・レイなのである。
「全システム起動、フルスペック開放」
思考誘導にみちびかれて起動を始めたコンピュータープロセッサー群に向けて、シェン・レイは音声コマンドを送った。それまで準起動状態のアイドリングモードであったものが、120%のレベルで全機能を開放する。
「ウェアラブルシステム、ブートアップ」
さらなる音声コマンドを送り、ウェアラブルシステムの基幹OSを立ち上げる。周囲の空間に投影されている3Dホログラム映像の仮想ディスプレイに起動メッセージが瞬時に表示された。
【 Southern Cross Operating System
【 Version 12.7
【 Boot-up sequence
【 > Check start
【 #0001: > #0002: > #0003: > #0004: > #0005: > #0006: >
【 #0007: > #0008: > #0009: > #0010: > #0011: > #0012:
【 All sub processor unit
【 > Check OK
【 Spatial multiplex communication network
【 > Access standby
【 > Connection ID: Main line: # XXX00004398743
【 > Connection ID: Sub Line: # XXX00002729835
【 > Real time variable password:Checking clear
【 [Connection requirements are satisfied]
【 > Main / Sub Connection OK
【 > Line priority setting: highest degree
【 Confirmation of all storage device status
【 > Unit # 0001 # 0002 ............... # 0047
【 [Check Okay No Error]
【 Visualized interfaces system
【 > Operation start
起動メッセージが一瞬にして流れされば、各種ツールプログラムが実動作可能なヴァーチャルインターフェースシステムが作動を開始する。
【STAND BY】の表示がされて使用できなかったヴァーチャルキーボードも作動可能状態であることを示す。全ての準備は完了した。あとは対象攻略のために必要なツールプログラムを行使するまでだ。
空間に浮遊するヴァーチャルキーボードを展開してツールプログラムを選択し即座に起動する。
【 High function Android Deep system 】
【 maintenance program 】
【 ――Daedalus―― 】
そしてさらに操作対象を指定する。
【 Operation target select ―― 】
【 > Target NAME:BELTCOUNE 】
当然ターゲットはベルトコーネにほかならない。さらに進める作業はベルトコーネの体内システムへの侵入である。
【 Access mode 】
【 > High cracking 】
【 Variable unique ID 】
【 [designation OK] 】
【 Realtime variable password 】
【 Cracking logic Specified 】
【 > Patching by external file 】
【 External file specification 】
【 File name:Marionet-Lola-Alteration 】
【 Cracking sequence START 】
操作過程を示すメッセージの中にはある人物の名が記されている。
マリオネットのローラ。ベルトコーネと創造者を同一とするアンドロイドである。
そこから採取した固有IDファイルを改変・拡張したものがそこに含まれていた。ベルトコーネのセキュリティシステムの一部データに強制上書きする事で、セキュリティシステムの一部をこじ開け、そこから深部システムのIDチェックをクラッキングする。その行為にはシェン・レイがローラに対して秘して抱いていたもう一つの狙いが示されていた。
【 Higher internal system security 】
【 > Variable unique ID 】
【 > Realtime variable password 】
【 [ Overwrite "COMPLETE" ] 】
【 Cracking sequence SUCCESSED 】
SUCCESSED―― すなわち〝成功〟の文字が画面を踊った。
「鍵は開けられた――」
静かなつぶやきを持ってしてシェン・レイは冷たく微笑んだ。
「さぁ、ベルトコーネ――、キサマの狂える魔拳を封滅させてもらうぞ」
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