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四:明治村・後編
四の四:明治村後編/面接の答え
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フォーは神妙な声で言う。
「おっさんの本体は寝たきりなんだよ。完全看護のベッドの上で身動き一つできねぇ。それを中枢神経に直接ネットシステムを接続してアバターボディを動かしてる。当然、体にも負荷がかかる。あと何回起動できるか俺にもわからねぇ。でも――」
フォーの右手がエイトの体からはなれる。非接触式のアクセスで内部システムを再起動させたようだ。
「――こう言う裏世界に何が何でも戻りたい理由があるんだ。ヤクザとしてけじめを付けるってな」
「ヤクザ――」
俺がそう声を漏らせばカツのやつもつぶやく。
「やっぱり任侠の人だったんですね」
エイトと拳を交わしあった者として思い至ることころがあったのだろう。
「あぁ、でもこの話は内緒だぜ。バラされるの無茶苦茶嫌がるからな。っと――目をさますぜ」
フォーがエイトから離れて立ちすくむ。俺たちも少し距離を取りエイトを見守った。
――キュィィイイン――
甲高い電子音がする。内部動力が再起動をはたしその全身に動力が伝わっているのが判る。そして、仰向けに横たわっていたその体躯は徐々に動き出ていったのである。
「―――」
無言のままエイトは上体を起こすと、右手を突いて全体を起こしていく。そして、そのまま立ち上がりその身を起こしていく。俺もカツもその光景をじっと見守るしか無い。
緊張してやつが言葉を発するのを待てば、やつは右手を自らの頭部に当てると生身の人間がするように頭をかるく左右に振る。そして、こう一声発したのだった。
「効いたぜ、久しぶりに死にかけた」
彼の視線は俺たちの方へと向く。
「よくやったな。見事だったぜ」
俺たちの目の前に立ち上がったのは背丈1メートル90は有りそうな大男だった。分厚いバイカーレザージャケットに身を包み、赤いシャツに白いスカーフを襟元に巻いている。レザーのロングパンツにゴツいライダーブーツ――と隙無く決めている。その頭部のガトリング頭は8つの砲身を束ねて四角いフレームで保持されている。
その四角いフレームの四隅に4基のアイカメラが設置されている。
そのアイカメラが俺たちを見つめていた。
表情は浮かべられないはずなのに、不思議とそこには人間らしい視線を感じるのだ。
改めて数歩足元を踏みしめながらエイトは俺達の方へと向き直る。
「改めて名乗らせてくれ。サイレントデルタ、9大幹部の一人〝ガトリングのエイト〟だ。よろしく頼むぜ」
そう告げながらエイトは右手を差し出した。
「緋色会の若衆の柳澤です」
継いでカツ――
「田沼と言います。柳澤さんから兄弟盃いただいてます」
エイトは田沼の手を握り返しながらこう問い返してきた。
「緋色会の身内じゃねえんだろ?」
「はい残念ながら今のところは」
すまなそうに答える田沼にエイトはこう諭したのだ。
「気にすんな。お前くらいの力量だったら喜んで受け入れてもらえるさ。なあ?」
エイトの声は俺へと向けられる。
「ええ、間違いなく」
俺の言葉にエイトも頷いている。そして彼はこう答えたのだ。
「いいコンビだ。文句なしだ。今日の面接は〝合格〟だ」
一つの答えが出た。俺達の両肩から緊張が抜けるのがよくわかった――
俺たちは無事生き延びたのだ。
「おっさんの本体は寝たきりなんだよ。完全看護のベッドの上で身動き一つできねぇ。それを中枢神経に直接ネットシステムを接続してアバターボディを動かしてる。当然、体にも負荷がかかる。あと何回起動できるか俺にもわからねぇ。でも――」
フォーの右手がエイトの体からはなれる。非接触式のアクセスで内部システムを再起動させたようだ。
「――こう言う裏世界に何が何でも戻りたい理由があるんだ。ヤクザとしてけじめを付けるってな」
「ヤクザ――」
俺がそう声を漏らせばカツのやつもつぶやく。
「やっぱり任侠の人だったんですね」
エイトと拳を交わしあった者として思い至ることころがあったのだろう。
「あぁ、でもこの話は内緒だぜ。バラされるの無茶苦茶嫌がるからな。っと――目をさますぜ」
フォーがエイトから離れて立ちすくむ。俺たちも少し距離を取りエイトを見守った。
――キュィィイイン――
甲高い電子音がする。内部動力が再起動をはたしその全身に動力が伝わっているのが判る。そして、仰向けに横たわっていたその体躯は徐々に動き出ていったのである。
「―――」
無言のままエイトは上体を起こすと、右手を突いて全体を起こしていく。そして、そのまま立ち上がりその身を起こしていく。俺もカツもその光景をじっと見守るしか無い。
緊張してやつが言葉を発するのを待てば、やつは右手を自らの頭部に当てると生身の人間がするように頭をかるく左右に振る。そして、こう一声発したのだった。
「効いたぜ、久しぶりに死にかけた」
彼の視線は俺たちの方へと向く。
「よくやったな。見事だったぜ」
俺たちの目の前に立ち上がったのは背丈1メートル90は有りそうな大男だった。分厚いバイカーレザージャケットに身を包み、赤いシャツに白いスカーフを襟元に巻いている。レザーのロングパンツにゴツいライダーブーツ――と隙無く決めている。その頭部のガトリング頭は8つの砲身を束ねて四角いフレームで保持されている。
その四角いフレームの四隅に4基のアイカメラが設置されている。
そのアイカメラが俺たちを見つめていた。
表情は浮かべられないはずなのに、不思議とそこには人間らしい視線を感じるのだ。
改めて数歩足元を踏みしめながらエイトは俺達の方へと向き直る。
「改めて名乗らせてくれ。サイレントデルタ、9大幹部の一人〝ガトリングのエイト〟だ。よろしく頼むぜ」
そう告げながらエイトは右手を差し出した。
「緋色会の若衆の柳澤です」
継いでカツ――
「田沼と言います。柳澤さんから兄弟盃いただいてます」
エイトは田沼の手を握り返しながらこう問い返してきた。
「緋色会の身内じゃねえんだろ?」
「はい残念ながら今のところは」
すまなそうに答える田沼にエイトはこう諭したのだ。
「気にすんな。お前くらいの力量だったら喜んで受け入れてもらえるさ。なあ?」
エイトの声は俺へと向けられる。
「ええ、間違いなく」
俺の言葉にエイトも頷いている。そして彼はこう答えたのだ。
「いいコンビだ。文句なしだ。今日の面接は〝合格〟だ」
一つの答えが出た。俺達の両肩から緊張が抜けるのがよくわかった――
俺たちは無事生き延びたのだ。
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