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幕間1:サイベリア
幕間1-1:サイベリア/ファイブとフォー
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俺はネットへとダイブする――
意識の全てを投入して、忘我のゲートを超える。そして、全感覚をネット上の仮想空間領域〝サイベリア〟にて再現する。
――リアライズ(現実化)――
あらかじめ設定構築されていたネット空間上でのアバターボディへと自分自身の体と意識を構築すると、俺はあらためて周囲を認識した。
俺の姿を現実化したのは円形のホールのような場所だった。スペースの中央だけが光が降り注いでいて、中心から離れるにつれて薄暗くなっていく。
俺はその薄暗いエリアに佇んでいた。
足音少なく進んで行けば、光のエリアにはまだ誰も現れてはいなかった。
俺は呟く。
「なんだ一番乗りかよ」
俺が呟いた声に、別な声が返ってくる。
「残念ですけど2番目ですよ」
「あぁ?」
俺はその声に訝しげに返事をする。正直聞きたくない声だ。
「なんだ、ファイブのおっさんじゃねーかよ」
「おっさんとは――相変わらず口が悪いね、フォー」
「気安く呼ぶなつーの」
「はは、君は相当僕のことが嫌いらしい」
俺の冷やかしと悪態に帰ってきた声はとても落ち着いていて知性を感じさせる。インテリってやつ? まぁ、多分〝もどき〟だろうけど。
俺の眼前に佇んでいるのはメタリックブルーの三つ揃いスーツに身を包んだ男だった。ただし頭は人間のものじゃない。ミラーメタリックの目鼻のない鏡のような顔、そこにオシロスコープのように波形の光が浮かんでいる。
黒いワイシャツにライトブルーのネクタイ。トラディショナルな革シューズに両手には白いシルクの手袋。斜に構えたインテリぶった仕草が俺の神経をイラッとさせる。
こいつの名前はファイブ、通称〝シルバーフェイスのファイブ〟
俺たちサイレントデルタのネットシステムを総括管理する〝メインアドミニストレーター〟と言う肩書きの男だ。
いわいる作戦指揮官ってやつだな。そういう役割を任せられる程度にはデキるらしいけどな。
「ワンの野郎の決定じゃなかったら、おめえなんか認めてねーよ」
「はっ、好きに吠えるがいいさ。全てをゲーム感覚で捉える君では僕の芸術的才能には変わらないからな」
「言ってろ!」
ご覧の通り俺たちは仲が悪い。向こうはあらゆることを見下したかかってくる。このサイレントデルタのシステムを構築し完成させたのは奴だからだ。その意味では現時点で俺は奴に逆らえない。そして、やつは俺を〝ガキ〟と嘲笑う。
その俺はといえば――
ラフな仕立てのグリーンのフード付きのロングパーカージャケット姿、目深く被ったフードの中から覗くのは蜂の巣のようなハニカム形状の穴――
その蜂の巣の一つ一つにスズメバチの大きさの六角柱の形をした蜂型の飛行デバイスが無数に収納されているのだ。
ハチ型のマイクロデバイスが蜂の巣穴から見え隠れしている。非人間的な不気味さが何よりものウリだ。
俺の名はフォー、またの名を〝ビークラスターのフォー〟
この顔面に巣食っている蜂どもをフルに活かしての諜報や情報収奪や暗殺なんかを得意にしてる。
ファイブのおっさんはいつでも単独だが、俺はチームを編成している。俺が厳選に厳選を重ねて選び出した精鋭部隊『チーム4』だ。
俺はその仲間たちとゲーム感覚で仕事をする。
行動の成果がポイントとなり、そのポイントがチーム内の立場を評価する鍵となる。俺はそのゲームマスターとなりチーム以外の他の連中を巻き込んでおもしろおかしく仕事するのがモットーだ。
俺はファイブに尋ねた。
「それで他の連中は?」
「そろそろ来ると思いますよ。私の予想ではセブンかと」
「じゃあ俺はシックスだ」
「何をかけます?」
「―金―」
「じゃあ勝った方が100万受け取るということで」
常に張り合おうとする俺たちはよくこう言う賭け事をする。この時の100万という額は毎回の決まった金額だ。今のところそれぞれの勝率は3割、残りの4割はドローだ。
「乗った」
「いいでしょう」
そんな軽い感じで俺たちの賭けが成立すれば、ちょうどその時、次のやつが到着した。
意識の全てを投入して、忘我のゲートを超える。そして、全感覚をネット上の仮想空間領域〝サイベリア〟にて再現する。
――リアライズ(現実化)――
あらかじめ設定構築されていたネット空間上でのアバターボディへと自分自身の体と意識を構築すると、俺はあらためて周囲を認識した。
俺の姿を現実化したのは円形のホールのような場所だった。スペースの中央だけが光が降り注いでいて、中心から離れるにつれて薄暗くなっていく。
俺はその薄暗いエリアに佇んでいた。
足音少なく進んで行けば、光のエリアにはまだ誰も現れてはいなかった。
俺は呟く。
「なんだ一番乗りかよ」
俺が呟いた声に、別な声が返ってくる。
「残念ですけど2番目ですよ」
「あぁ?」
俺はその声に訝しげに返事をする。正直聞きたくない声だ。
「なんだ、ファイブのおっさんじゃねーかよ」
「おっさんとは――相変わらず口が悪いね、フォー」
「気安く呼ぶなつーの」
「はは、君は相当僕のことが嫌いらしい」
俺の冷やかしと悪態に帰ってきた声はとても落ち着いていて知性を感じさせる。インテリってやつ? まぁ、多分〝もどき〟だろうけど。
俺の眼前に佇んでいるのはメタリックブルーの三つ揃いスーツに身を包んだ男だった。ただし頭は人間のものじゃない。ミラーメタリックの目鼻のない鏡のような顔、そこにオシロスコープのように波形の光が浮かんでいる。
黒いワイシャツにライトブルーのネクタイ。トラディショナルな革シューズに両手には白いシルクの手袋。斜に構えたインテリぶった仕草が俺の神経をイラッとさせる。
こいつの名前はファイブ、通称〝シルバーフェイスのファイブ〟
俺たちサイレントデルタのネットシステムを総括管理する〝メインアドミニストレーター〟と言う肩書きの男だ。
いわいる作戦指揮官ってやつだな。そういう役割を任せられる程度にはデキるらしいけどな。
「ワンの野郎の決定じゃなかったら、おめえなんか認めてねーよ」
「はっ、好きに吠えるがいいさ。全てをゲーム感覚で捉える君では僕の芸術的才能には変わらないからな」
「言ってろ!」
ご覧の通り俺たちは仲が悪い。向こうはあらゆることを見下したかかってくる。このサイレントデルタのシステムを構築し完成させたのは奴だからだ。その意味では現時点で俺は奴に逆らえない。そして、やつは俺を〝ガキ〟と嘲笑う。
その俺はといえば――
ラフな仕立てのグリーンのフード付きのロングパーカージャケット姿、目深く被ったフードの中から覗くのは蜂の巣のようなハニカム形状の穴――
その蜂の巣の一つ一つにスズメバチの大きさの六角柱の形をした蜂型の飛行デバイスが無数に収納されているのだ。
ハチ型のマイクロデバイスが蜂の巣穴から見え隠れしている。非人間的な不気味さが何よりものウリだ。
俺の名はフォー、またの名を〝ビークラスターのフォー〟
この顔面に巣食っている蜂どもをフルに活かしての諜報や情報収奪や暗殺なんかを得意にしてる。
ファイブのおっさんはいつでも単独だが、俺はチームを編成している。俺が厳選に厳選を重ねて選び出した精鋭部隊『チーム4』だ。
俺はその仲間たちとゲーム感覚で仕事をする。
行動の成果がポイントとなり、そのポイントがチーム内の立場を評価する鍵となる。俺はそのゲームマスターとなりチーム以外の他の連中を巻き込んでおもしろおかしく仕事するのがモットーだ。
俺はファイブに尋ねた。
「それで他の連中は?」
「そろそろ来ると思いますよ。私の予想ではセブンかと」
「じゃあ俺はシックスだ」
「何をかけます?」
「―金―」
「じゃあ勝った方が100万受け取るということで」
常に張り合おうとする俺たちはよくこう言う賭け事をする。この時の100万という額は毎回の決まった金額だ。今のところそれぞれの勝率は3割、残りの4割はドローだ。
「乗った」
「いいでしょう」
そんな軽い感じで俺たちの賭けが成立すれば、ちょうどその時、次のやつが到着した。
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