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しおりを挟むアリスティア生誕祭より一ヵ月ほど経った。現在、私はローライト王国の隣国にあるマグルスの杖が所有している屋敷にいた。
なんでこんな場所にいるのかというと私の所為である。マグルスの杖は選ばれた者しか本部の魔術師の塔にいけない。だから、今アルがかけあってくれている最中なのだ。
全く迷惑ばかりかけているわ。
私はそう思いながら目の前で馬車に荷物を載せているドノバンを見る。ドノバンは今からローライト王国にいるお父様達に会いに行くのだ。
会いにいけない私のために手紙や必要になりそうな物を持って。準備が終わったドノバンが馬車から降り駆け寄ってくる。
「リアお嬢様、準備ができました。手紙は必ずお渡しします」
「本当にありがとう、ドノバン」
「礼を言うのはこちらです。旦那様や奥様に会いに行けるのですから」
ドノバンは嬉しそうに言ってくるため私もつい頬が緩んでしまう。
「皆によろしくお伝えしておいてね」
「はい! では、リアお嬢様。行ってまいります」
ドノバンは手を振って馬車に乗る。その姿を見ていたらいつの間にか側にいたアルが声をかけてきた。
「ご両親の元に手紙を届けに行ったか」
「はい」
私が頷くとアルは馬車を見ながら尋ねてくる。
「ご両親と会いたいか?」
私は微笑んで首を横に振る。だって元気でいてくれればいいのだから。それに私がローライト王国に行けばまた混乱を巻き起こすかもしれない。
そう思っていたらアルが私を抱きしめてくる。
「必ず会わせる。約束だ」
「……はい」
私達はしばらくお互いの温もりを確かめ合う。しかし、アルがゆっくりと私から離れた。
「ドノバンが戻ってきたらマグルスの杖の拠点に行こう」
「魔術師の塔……。許可が降りたのですか?」
「ああ。許可はすぐにおりたが手続きに手間取ってしまっていたんだ。まあ、住む場所とか今後リアが俺の側で魔法を勉強できるようにな」
アルはそう言って頭をかいていると、ミゲルさんとモンドさんがやってきた。
「リアさん、こんにちわ。師団長がまた迷惑かけていませんか?」
「私達がいつでも引き剥がしますので言って下さい」
「お前ら……」
アルは二人を睨むがすぐに諦めた顔で私に声をかけてくる。
「今日から二人はリアの仕事仲間になる。色々とわからないことがあったら聞くといい」
「ありがとうございます。お二人もこれからどうぞよろしくお願いします」
「いえいえ、こちらこそ」
「ふう、これでアルフォンス師団長も丸くなってくれれば……」
「モンド、俺はいつでも優しい上司のつもりだが?」
「そうだよモンド」
「裏切り者ミゲルめ……」
モンドさんはミゲルさんを睨んだ後、思い出したように手を打つ。
「そういえばアルフォンス師団長、これを」
モンドさんは細長い木箱を取り出しアルに渡す。アルはすぐにそれを私に見せてきた。
「リア。君に俺達マグルスの杖からのプレゼントだ」
そう言って木箱の蓋を開けた。中には花の紋様がいくつも入った白い短杖が入っていたのだ。私はその美しさに見惚れてしまう。
「ドラゴンの牙を削って作ったんだ。気にいってくれたか?」
私は思わず短杖を抱きしめ何度も頷く。するとアルはホッとした顔になった。
「ふう、良かった……」
「アルフォンス師団長が真心込めて作ったんですからね。あっ、ちなみにあっちも渡さないんですか?」
ミゲルさんは指で輪を作り笑みを浮かべる。その瞬間、アルは慌ててしまう。
「ミゲル! お前知ってるのか⁉︎」
「そりゃ、ぶつぶつ言いながら作ってるんですからね。もし言えないなら僕が代わりに言って……って、ひいいいーー!」
アルが指を鳴らしミゲルさんに向かって水の玉をぶつける。しかも逃げるミゲルさんに何度も。おかげでミゲルさんは水浸しになりながら逃げていった。
正直、見慣れてしまったので私はもう驚くことはない。そんな私にモンドさんが言ってくる。
「リアさんも試しに魔法で撃ってみては?」
「さすがにそれは……」
私は苦笑してしまう。するとアルが頷いてくる。
「いや、しよう。もちろん的当てじゃなく門を開く魔法だ」
「門を開く?」
「魔術師の塔に行くための魔法があるんだ。もちろん誰でもいけるわけじゃない。マグルスの杖が認めた者とその短杖がないといけないようになっている」
そう言って短杖に刻まれた魔術紋様を指差す。私はそっと魔術紋様を撫でるとアルが言ってきた。
「きっとリアの世界が広がる。だから沢山見て感じて学ぶといい」
そう言われ私は今まであったことを思い出す。幼き日に突然、狭い部屋に閉じ込められ限られた本だけを読み過ごしていたことを。
あの本の中にあるような世界も見られるのかしら。
私はそう思ったら楽しくなってきた。しかし、同時にミルフォード侯爵家のことも考えてしまう。自分だけこんな思いをして良いのだろうかと。
お父様とお母様は私のために必死に頑張ってくれた。それにマシューやコーデリア先生だってそう。ルネ達みたいに人形にされていたのかもしれないのにギリギリまで私のために頑張ってくれていた。
なのに私だけが……
だが、その時にお父様と対面した時のことを思い出した。そして言われた言葉を。
『自由に生きなさい。それが私達の願いだから』
だから、私は顔を上げた。
「アル、魔法を教えて下さい」
「ああ、では……」
私はゆっくりと短杖を持ち上げ、前に向ける。
お父様、お母様、私はこれから沢山のことを学びにいきます。そして、いつかきっと……
「だから、もう少しだけ待っていてくださいね」
そう呟くと私は自分の道を切り開くため、魔法を唱えるのだった。
完
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コメントありがとうございます!
最後まで読んで頂いてありがとうございました!
夫妻なんかはもうちょい書きたしたかったところですが、機会があればというところで(^。^)
コメントありがとうございます!
最後まで読んでいただきありがとうございました!
話を収束させていくのがきつかったです(笑)
コメントありがとうございます!
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