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しおりを挟むあれから、私はエルドラ侯爵家の養女となり、しばらくしてトラン様の婚約者としても世間に発表された。
ちなみにハートラル伯爵家は爵位を取り上げられ、元両親と元兄は辺境の村へ、そしてリリスは犯罪や問題を起こした令嬢が行く修道院へと送られている。
後、リリスが産んだ子供だが相手方のご両親が引き取って現在育ているらしい。
「息子を廃嫡したから孫を後継者にするらしいけど、大丈夫なのかしら……」
お義母様が心配そうにそう言うと、紅茶の香りを楽しんでいたお義父様が微笑む。
「環境で人は変わる……とは言えないが、あの家にはしっかりとした教育係が送られるから心配はないだろう。それよりも、二人ともその格好で良いのかな?」
お義父様にそう言われて私達は自分達のドレス姿を見た後に頷く。
「アイリスも私も最高に仕上げてもらったから大丈夫よ」
お義母様が自信満々にそう答えた後、執事が来て言ってきた。
「皆様、スペンド公爵令息が来られましたので、庭にご案内しております」
執事の言葉に私達は頷き庭に出ると、外にはエルドラ侯爵家にいるほとんどの使用人が出ていて、みんないつもより身なりを綺麗にして立っていた。
そんな中、カメラと脚立を持った使用人が嬉しそうに駆け寄ってくる。
「旦那様、後は場所決めだけです」
「そうか。では、みんな揃ったら早速撮ろう。しばらくぶりの写真だ。沢山撮るぞ」
「ふふ、寝室にも廊下にも飾りましょうね」
お義父様とお義母様は楽しそうに、使用人達を交えて撮影する位置を決めている。
そんな光景を見て私は頬がつい緩んでしまう。
私にとっても久しぶりの写真ね。
変に写らないかしら……。
私はそう思いながら、手鏡を持ってこなかった事を悔やんでいると、トラン様が庭に到着したらしく声をかけてきた。
「アイリス」
「トラン様」
私はトラン様に淑女の礼をすると、眩しそうに私を見て言ってきた。
「その青いドレス、とても君の髪と瞳の色に合ってるよ」
「ありがとうございます。トラン様はドレスの選び方がお上手ですね」
「これでも、どれを送ろうかをかなり悩んだんだ。なんせ、大切な家族写真に着るドレスだからね」
トラン様がそう言うと、側にいたシャルが口元を押さえながら言ってきた。
「アイリス様のドレス選びにトラン様はかなり悩んでましたよ。変なドレスを選んで嫌われたらどうしようって……ぷぷ」
「おい、シャル!余計な事を言うな」
トラン様はそう言いながらも笑顔である。
そんな二人を見て私もつい可笑しくて笑っていると、お義父様が撮影準備ができたと呼んできた。
その際、満面の笑顔で手を振ってくるお義父様を見て苦笑する。
エルドラ侯爵家のみんなで撮る写真、そして家族で撮る写真、そしてトラン様と二人で撮る写真……。
きっと数枚では終わらないわよね。
私はそう思いながら、トラン様と一緒に家族の元へと歩いていくのだった。
この一年後、アイリス・エルドラ侯爵令嬢とトラン・スペンド公爵令息は盛大に結婚式をあげ周りから沢山の祝福を受けた。
そして、数十年後もその仲の良さから二人は国一番のおしどり夫婦と呼ばれるのであった。
fin.
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