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卒業パーティーで魅了されている連中がいたから、助けてやった。えっ、どうやって?帝国真拳奥義を使ってな

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 俺は帝国の第三王子だ。
 最近、兄上達が戦う以外にも何かを見つけろとうるさい。
 そこで、隣りの王国の卒業パーティーに来賓として出席することにした。
 何せ、王国は帝国と違って面白いものがあるから。

 案の定、面白いものを会場で見つけることができた。
 
 ピンク髪に目が異様にでかい女か。しかも、あの異様な気配……

 じっと見ていたら、ピンクの髪が一本こちらに向かって延びてきたのだ。
 俺はすぐに帝国式呼吸法を使う。

「ふうーー」

 ピンクの髪は途中で引きちぎれ消えていった。

 こいつ、何者だ……

 そう思っているとピンク頭を囲んでいた男の一人が対面にいた令嬢を指差す。

「エリーゼ、貴様との婚約を破棄する!」

 そう叫ぶと男はエリーゼという令嬢を睨む。正直、何やってるんだと思ったが原因がわかり俺はピンク頭を睨んだ。
 ピンク頭からピンクの髪が一本伸びて暴言を吐いている男の胸辺りに入っているのを見えたから。
 しかも、よく見るとその男だけじゃなかった。ピンク頭からは沢山の髪が伸び、周りにいる男達の胸に入っていたのだ。
 俺はその瞬間、帝国で学んだ文章の一部が頭の中に浮かぶ。

 魅了には気をつけろと。

 まずいな……
 この国は既にこのピンク頭に乗っ取られかけているじゃないか……

 俺は王族席を見ると女性陣以外は全員魅了されているようだった。
 そんな中、王妃が一瞬、俺に目を合わせてきた。
 そして、達人ができる目での会話をしてきた。
 お前はどうにかできるのかと。
 だから、俺は答えてやった。
 行動でな。
 俺はまだエリーゼ嬢を睨んでいる男の後ろに隠れているピンク頭の元に向かう。
 すると、ピンク頭は俺を大きな目で見つめてきた。

「あっ、格好良い! こんなキャラいたっけ?」

 ピンク頭はわけのわからない事を言ってきたが、俺は無視して構えた後に気を高めた。

「はあああああっーーーーー!」

「えっ、何これ? 隠しイベント?」

「はあああああああっーーーーー!」
 
「何? もしかして追加コンテンツ?」

「帝
  国
   真
    拳
     奥
      義
       魅
        了
         潰
          し
           ‼︎」

 俺は全神経を集中し魔力を込めた人差し指と中指をピンク頭の両目に突っ込んだ。

「グギャアアアアァッーーーーーー‼︎」

 指を突っ込まれたピンク頭は変な声を上げた後に蛙の様なポーズを取りながら倒れる。
 すると、魅了された男達は驚いた後、俺に怒鳴ってきた。

「何をした貴様あぁぁーーー!」
「ふっ、気づいていないのか……」

 俺はもう既に終わったとばかりに背中を向ける。
 すると男の一人が聞いてくる。

「ど、どういう意味だ⁉︎」
「ふん、俺はお前達には何もしていない。したのはこのピンク頭がかけていた魅了魔法を解いただけだ」

 俺がそう言うと会場中が騒ぎ出す。
 なんせ魅了魔法は禁忌であるからだ。
 しかし、男達は信じられないとばかりに俺に詰め寄ろうとした。なので、俺は男達を睨む。

「お前達は既に解けている」
「えっ……ふでびっ」

 男達は変なポーズに訳の分からない言葉を発した後に弾けはしなかったが、頭を抱えてうずくまり出した。
 それを見た俺はうずくまっている男の服で汚れた指を拭いてから、王妃を見る。すると王妃は王族席から飛び上がり、俺の目の前に音もなく着地した。

「まさか、帝国真拳に助けられるとは……」
「王国真拳には魅了潰しはないのか?」
「残念ながら、一子相伝だったのよ……」

 王妃はそう言って頭を抱えて蹲る国王を見る。

「なるほど……。まあ、これで解決したろう。俺はもう帰らせてもらう」
「礼をしますよ」
「必要ない」

 俺は会場の出口に向かう。
 すると、誰かが追いかけてきた。

「お待ち下さい」
「なんだ?」

 仕方なく振り向くと、声をかけてきたのはエリーゼ嬢だった。
 エリーゼ嬢は胸に手を当てながら頭を下げてきた。

「助けて頂きありがとうございます」
「気にするな。助けたのは魅了されていた連中だ」
「それでも私が助けられたのは変わりません」
「ふむ、律儀だな。まあ、礼は受け取っておこう」
「ありがとうございます!」
「さあ、早く魅了が解けた婚約者のところに行ってやると良い」

 俺がそう言うと、エリーゼは微妙な顔をしながらも頷く。
 まあ、魅了されたとはいえ恥をかかされたのだ。
 仕方ないでは済まされないだろう。
 そんな事を思いながら俺は踵を返し、パーティー会場を出るのだった。



 あれから帝国に帰った俺だが、しばらくして歳の離れた一番上の兄、つまり皇帝に呼ばれた。

「呼ばれた意味はわかるな」
「わかりませんね」
「隣国で何やらやらかしたようではないか?」
「やらかしたなど、とんでもない」
「ふむ、まあいい。おかげでお前に良い相手が現れたのだ」
「ほお、どこの流派ですか? 腕がなりますな」
「……相変わらずだな。まあ、いい。入ってきなさい」

 皇帝がそう言うと部屋にエリーゼ嬢が入ってきた。

「あの節は本当にありがとうございました」
「いや、気にするな。だが、何故お前がいるのだ? 私と戦う王国真拳の使い手を連れて来たということか?」
「違います。あなた様の妻になる為にきたのです」
「……なんと」

 俺は驚きエリーゼ嬢を見ると皇帝が言ってきた。

「オラ強えやつと戦いてえ、みたいな事しか考えてないお前にこんな素晴らしい女性が来てくれたのだ。喜べ」

「しかし、婚約者はどうしたのだ?」
「あの日に解消しました。元々、政略でしたし、王妃様もあなた様の所に行きたいと言いましたら喜んで送り出してくれました」

 エリーゼ嬢はそう言って微笑むと、皇帝が続けて言ってきた。

「ちなみに、魅了された者達は心の弱い者とされ、今、王国真拳の本部に連れてかれ厳しい修行をしているそうだ」
「まあ、それは当然でしょう。しかし、良いのか俺なんかで? 戦うしか能がない男だぞ」
「はい、皇帝には何度も考えなおした方が良いと言われましたが、私の考えは変わりません」

 俺は一瞬、皇帝を睨むとすぐに目を逸らされたが、エリーゼ嬢に向かって頷く。

「わかった。不甲斐ない男だが、それでも良ければ」

 俺が頷くとエリーゼは嬉しそうに微笑む。
 そんな戦いと無縁なエリーゼ嬢を見て、俺は戦う以外の道も本気で模索しようと心に誓うのだった。



 あれから、長い月日が経ち俺の横にはエリーゼがいて、肩には息子が座って遠くを眺めている。

「お父様、あそこに白い鳥が飛んでいます」
「ふむ、あの鳥が飛んでいるという事は、今年はこの帝国も豊かになるという事だな」
「良い世の中になりましたね」

 エリーゼはそう言って幸せそうな表情をする。
 そんな妻と息子を見て俺はずっと戦う以外の道を模索し続けたが、とっくに見つけていたのだなと思うのだった。


fin.
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