121 / 124
17 王権の儀式
17-003 道化の王
しおりを挟む
「さあ。その行方は杳として知れず、ってとこです」
思いの外あっさりと、未夜は答えた。
「もっとも科乃様辺りは何か知ってるかもしれませんが。あたしにはちょっとお手上げですね」
「ご要望があれば、調べてもいいですよ。大仕事になりそうだから、料金がかさみそうですが」
須軽が開豁な様子で提案する。途端に、うわー、と未夜が呆れたような声を上げた。
「お兄さん、度胸ありますねえ。あたし、もうあんなのに関わるのごめんです」
「いや、度胸は負けますよ」
「誰に?」
笑顔で問う未夜に、いや、と短く応えて須軽は目を逸らす。
「さて、もうこの辺でいいですかね」
未夜は一息ついて立ちあがった。
「あ、ご依頼があればあたしも、ひつきとか以外なら受けますので、お二方ともいつでもご連絡お待ちしてます。……今回は貸しがありますからタダでいいですが、次回からはお金いただきますよ」
守と須軽も席を立つ。
「あの動画って、ネットのやつとか落としてきたの?」
「ちがいますぅー。独自のルートで入手したんですぅー」
会計に並びながら、須軽と未夜が何やら話しこんでいる。
「今のところ動画サイトとかに流出してる様子はありません。将来そういうことがあってもあたしではないです……。っていうか本当に誰にも言ってませんよね? 守さんにも」
「言ってないです」
妙な緊張感が漂っているが、守はふとした思いつきをまとめることに熱中しており、ほとんど、その会話が聞こえていなかった。
「あっ」
小さく、驚きの声を上げる。ようやっと守の思いつきに一つの結論が出たのだ。
「なんです?」
「どうしました?」
須軽と未夜が、同時に訊ねた。
「あの、あれですよ。あの、冨田さんが言ってた話」
そう言っても、二人ともピンとこないらしく怪訝な顔をしている。
「あの、特定の期間だけ王様をやって、そのあと殺される、とかいう」
はっきり思い出せない自分に焦れているようで、守はもどかしそうだ。
「そうだ! 偽物の王様、『モック・キング』!」
そう言われて二人共思い当ったようで、ああ、とか、言ってましたね、などの言葉で応じた。
「それが?」
未夜が、訝しげに訊ねる。
「あれ、佐一のほうがそれだったんじゃないですか? 科乃さんのほうじゃなくって。その、道化の王」
思いの外あっさりと、未夜は答えた。
「もっとも科乃様辺りは何か知ってるかもしれませんが。あたしにはちょっとお手上げですね」
「ご要望があれば、調べてもいいですよ。大仕事になりそうだから、料金がかさみそうですが」
須軽が開豁な様子で提案する。途端に、うわー、と未夜が呆れたような声を上げた。
「お兄さん、度胸ありますねえ。あたし、もうあんなのに関わるのごめんです」
「いや、度胸は負けますよ」
「誰に?」
笑顔で問う未夜に、いや、と短く応えて須軽は目を逸らす。
「さて、もうこの辺でいいですかね」
未夜は一息ついて立ちあがった。
「あ、ご依頼があればあたしも、ひつきとか以外なら受けますので、お二方ともいつでもご連絡お待ちしてます。……今回は貸しがありますからタダでいいですが、次回からはお金いただきますよ」
守と須軽も席を立つ。
「あの動画って、ネットのやつとか落としてきたの?」
「ちがいますぅー。独自のルートで入手したんですぅー」
会計に並びながら、須軽と未夜が何やら話しこんでいる。
「今のところ動画サイトとかに流出してる様子はありません。将来そういうことがあってもあたしではないです……。っていうか本当に誰にも言ってませんよね? 守さんにも」
「言ってないです」
妙な緊張感が漂っているが、守はふとした思いつきをまとめることに熱中しており、ほとんど、その会話が聞こえていなかった。
「あっ」
小さく、驚きの声を上げる。ようやっと守の思いつきに一つの結論が出たのだ。
「なんです?」
「どうしました?」
須軽と未夜が、同時に訊ねた。
「あの、あれですよ。あの、冨田さんが言ってた話」
そう言っても、二人ともピンとこないらしく怪訝な顔をしている。
「あの、特定の期間だけ王様をやって、そのあと殺される、とかいう」
はっきり思い出せない自分に焦れているようで、守はもどかしそうだ。
「そうだ! 偽物の王様、『モック・キング』!」
そう言われて二人共思い当ったようで、ああ、とか、言ってましたね、などの言葉で応じた。
「それが?」
未夜が、訝しげに訊ねる。
「あれ、佐一のほうがそれだったんじゃないですか? 科乃さんのほうじゃなくって。その、道化の王」
0
お気に入りに追加
5
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる