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17 王権の儀式
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「どーもです~。お待たせしました」
相変わらず飄々とした様子で、未夜が姿を現した。
「いやあ、面白いことになりましたねえ」
挨拶もそこそこに未夜は着席し、本題に入る。
店員に自分のぶんのコーヒーを注文したあと、
「ほらこれ。お土産です」
と言いながら、未夜は手提げからスマートフォンを取り出し、二人に向けた。
守と須軽は、ほぼ同時に小さい画面を覗き込む。
二人がLCCの講座に行った日から、二週間経った。
あれからのち、最終的な報告も兼ねて守、須軽、安東の三人が古谷邸に集まっている時のことである。
須軽が急に、
「あ、あの佐一って人、直観神理追い出されたらしいですよ。LCCも解散ですって」
と、思いだしたように言い始めたのだ。
どういうことかと守が問い質すと、須軽が言うには、LCCの講座から帰ってからも地味に直観神理の動静を探っていたらしい。
そして今、古谷家に来る少し前に、そのニュースを聞いたと言う。守の中では、この事件は既に終わったものになっていた。
だが、あんな形で関わってしまったことではあるし、詳細も少しは気になる。
その旨伝えると、なら未夜に連絡をとってまた話を聞こう、という流れになったのだ。ああ、これ料金外でいいですよ、と須軽は笑って言った。
ちなみに、安東の中でも終わっていたらしく、須軽の報告を聞くにも、あまり身が入っていない様子だった。
何でも昔の知り合いに、どこかの縁日の出店を手伝ってくれ、と、急に頼まれたらしくそっちのほうに気がいっていたようだ。
それで、また駅前の喫茶店『ラ・メール』で未夜と会合を持つことになったのである。
未夜のスマートフォンの画面には、しずしずと壇上に姿を現す科乃の姿が映し出された。会場内に大きなどよめきが起きる。
「事前に予告とかなかったんですかね、これ」
「完全にサプライズだったみたいですねえ」
なるほど、それなら信者達がこれだけ驚いてもしょうがない、と守は思った。
簡単な式辞の後、科乃の話はいよいよ問題の個所に入る。
「――そもそも直観神理は、現世利益的な信仰、及び活動には重点を置いておりません。したがって佐一哲郎氏にはお身内より外れていただき、氏にふさわしい場所で意義ある活動をしていただければ、私達双方にとってより良い関係が気付ける、と判断いたしました」
あくまで淡々と、科乃は言葉を紡いでいた。
「結構ハッキリ言っちゃってますね」
守は他人事ながらドキドキしながら見守っている。
画面の中の会場は、水を打ったように静まり返っていた。
相変わらず飄々とした様子で、未夜が姿を現した。
「いやあ、面白いことになりましたねえ」
挨拶もそこそこに未夜は着席し、本題に入る。
店員に自分のぶんのコーヒーを注文したあと、
「ほらこれ。お土産です」
と言いながら、未夜は手提げからスマートフォンを取り出し、二人に向けた。
守と須軽は、ほぼ同時に小さい画面を覗き込む。
二人がLCCの講座に行った日から、二週間経った。
あれからのち、最終的な報告も兼ねて守、須軽、安東の三人が古谷邸に集まっている時のことである。
須軽が急に、
「あ、あの佐一って人、直観神理追い出されたらしいですよ。LCCも解散ですって」
と、思いだしたように言い始めたのだ。
どういうことかと守が問い質すと、須軽が言うには、LCCの講座から帰ってからも地味に直観神理の動静を探っていたらしい。
そして今、古谷家に来る少し前に、そのニュースを聞いたと言う。守の中では、この事件は既に終わったものになっていた。
だが、あんな形で関わってしまったことではあるし、詳細も少しは気になる。
その旨伝えると、なら未夜に連絡をとってまた話を聞こう、という流れになったのだ。ああ、これ料金外でいいですよ、と須軽は笑って言った。
ちなみに、安東の中でも終わっていたらしく、須軽の報告を聞くにも、あまり身が入っていない様子だった。
何でも昔の知り合いに、どこかの縁日の出店を手伝ってくれ、と、急に頼まれたらしくそっちのほうに気がいっていたようだ。
それで、また駅前の喫茶店『ラ・メール』で未夜と会合を持つことになったのである。
未夜のスマートフォンの画面には、しずしずと壇上に姿を現す科乃の姿が映し出された。会場内に大きなどよめきが起きる。
「事前に予告とかなかったんですかね、これ」
「完全にサプライズだったみたいですねえ」
なるほど、それなら信者達がこれだけ驚いてもしょうがない、と守は思った。
簡単な式辞の後、科乃の話はいよいよ問題の個所に入る。
「――そもそも直観神理は、現世利益的な信仰、及び活動には重点を置いておりません。したがって佐一哲郎氏にはお身内より外れていただき、氏にふさわしい場所で意義ある活動をしていただければ、私達双方にとってより良い関係が気付ける、と判断いたしました」
あくまで淡々と、科乃は言葉を紡いでいた。
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守は他人事ながらドキドキしながら見守っている。
画面の中の会場は、水を打ったように静まり返っていた。
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