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14 雨と迷宮
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佐一は小人達を使い、さまざまな企業の内部情報を手に入れていた。それをLCCの会員の中でも、さらに選ばれた者達が集まる懇親会、で売り捌き利益と地位を得ると同時に、一種の共犯関係になることで結束を固めていたらしい。
なかなか面白いな、と須軽はそれを聞いた時素直に感心した。だが、ひつきがやってきて事情が変わってしまう。ひつきが〝人形遊び〝の相手に、佐一の小人達を所望したのである。
佐一は、何とか交渉のすえ七人の小人達のうち、一人だけは今まで通り情報活動に充てることをひつきに認めさせた。その一人が開陽である。しかし、今まで七人でやっていたものを一人でやるのだから、当然効率は落ち、懇親会のメンバーからも不満の声が出ていたようだ。
小人達も、ひつきの相手を嫌がっており、佐一は内実四苦八苦していたようだった。
というのが科乃に会いに来た日、須軽が開陽から説明されたこの件の事情である。
あまり根拠のないただの感想だが、どうもこの仕組み自体、遠からず限界を迎えそうだったのではないか? と須軽は考えていた。
この辺りの事情を、全て見越していたとしたら科乃という人物も相当人が悪い。
「もし知ってたら教えて欲しいんだけど……ひつきは古谷さんの親父さんと、三浦さんを殺した後、どういう経緯でここまで来たの?」
「それも僕がやったんですよ!」
開陽が泣きそうな声で絶叫する。
「二人がひつきを連れてくる様子を見張ってて、って佐一の大君の命令で古谷家に行ったらあんなことになって……。その後、ひつきに捕まってここまで案内させられたんです」
開陽は身体をガタガタ震わせていた。思い出すだに恐ろしい体験だったらしい。
「よく殺されなかったよなあ」
紫微は心から同情している様子で、開陽の肩を叩いた。
「あれから大変なことばっかりですよ。それまでは順調にいってたのに……」
開陽は目頭を押さえながら応える。
「君、妙な役ばっかり押し付けられて大変だなあ」
「僕、なんか昔から運が悪いんですよね」
話こみ始めた紫微と開陽に、ちょっと待て! と天柩達から物言いがついた。
「その代わりお前は、我々がひつきの相手をさせられていた時、ずっと外にいただろう!」
「俺達が、どれだけ大変だったか」
「そうだよ! ひつきはよくわからない猫娘のあやかしの死体を持ってくるし……薄気味悪いったら」
「なんかあれ、腐らなかったからまだよかったけどな」
文句か愚痴が判別できないような言葉が、次々と開陽に浴びせられる。
「一人だけで調査するのだって、大変ですよ!」
「そうだよなあ。個人の家ならまだともかく、会社とかだと大きい建物のとこもあるだろうしなあ」
紫微がうんうん、と頷きながら開陽の肩を持った。
「ちょっと、関係ない奴口出さないで!」
天柩の隣の小人に抗議されても、紫微は涼しい顔で
「関係なくはないじゃないか」
と、笑いながら応える。
「これから仲間になるんだから」
「おい! どさくさにまぎれて何言ってんだ!」
「こいつ、開陽を取りこもうとしてるぞ!」
騒然としかけた時、輿鬼がねえ、と初めて声を上げた。
「のんびりしてるところ悪いんだけど、ひつきが戻ってくるって可能性もあるから、どっちにしても早く話終わらせたほうがいいんじゃない?」
一瞬にして、場の空気が氷つく。
なかなか面白いな、と須軽はそれを聞いた時素直に感心した。だが、ひつきがやってきて事情が変わってしまう。ひつきが〝人形遊び〝の相手に、佐一の小人達を所望したのである。
佐一は、何とか交渉のすえ七人の小人達のうち、一人だけは今まで通り情報活動に充てることをひつきに認めさせた。その一人が開陽である。しかし、今まで七人でやっていたものを一人でやるのだから、当然効率は落ち、懇親会のメンバーからも不満の声が出ていたようだ。
小人達も、ひつきの相手を嫌がっており、佐一は内実四苦八苦していたようだった。
というのが科乃に会いに来た日、須軽が開陽から説明されたこの件の事情である。
あまり根拠のないただの感想だが、どうもこの仕組み自体、遠からず限界を迎えそうだったのではないか? と須軽は考えていた。
この辺りの事情を、全て見越していたとしたら科乃という人物も相当人が悪い。
「もし知ってたら教えて欲しいんだけど……ひつきは古谷さんの親父さんと、三浦さんを殺した後、どういう経緯でここまで来たの?」
「それも僕がやったんですよ!」
開陽が泣きそうな声で絶叫する。
「二人がひつきを連れてくる様子を見張ってて、って佐一の大君の命令で古谷家に行ったらあんなことになって……。その後、ひつきに捕まってここまで案内させられたんです」
開陽は身体をガタガタ震わせていた。思い出すだに恐ろしい体験だったらしい。
「よく殺されなかったよなあ」
紫微は心から同情している様子で、開陽の肩を叩いた。
「あれから大変なことばっかりですよ。それまでは順調にいってたのに……」
開陽は目頭を押さえながら応える。
「君、妙な役ばっかり押し付けられて大変だなあ」
「僕、なんか昔から運が悪いんですよね」
話こみ始めた紫微と開陽に、ちょっと待て! と天柩達から物言いがついた。
「その代わりお前は、我々がひつきの相手をさせられていた時、ずっと外にいただろう!」
「俺達が、どれだけ大変だったか」
「そうだよ! ひつきはよくわからない猫娘のあやかしの死体を持ってくるし……薄気味悪いったら」
「なんかあれ、腐らなかったからまだよかったけどな」
文句か愚痴が判別できないような言葉が、次々と開陽に浴びせられる。
「一人だけで調査するのだって、大変ですよ!」
「そうだよなあ。個人の家ならまだともかく、会社とかだと大きい建物のとこもあるだろうしなあ」
紫微がうんうん、と頷きながら開陽の肩を持った。
「ちょっと、関係ない奴口出さないで!」
天柩の隣の小人に抗議されても、紫微は涼しい顔で
「関係なくはないじゃないか」
と、笑いながら応える。
「これから仲間になるんだから」
「おい! どさくさにまぎれて何言ってんだ!」
「こいつ、開陽を取りこもうとしてるぞ!」
騒然としかけた時、輿鬼がねえ、と初めて声を上げた。
「のんびりしてるところ悪いんだけど、ひつきが戻ってくるって可能性もあるから、どっちにしても早く話終わらせたほうがいいんじゃない?」
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