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14 雨と迷宮

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「お前ら、佐一とかいう奴の下で好き勝手に使われて、ひどい目におうたんじゃろが。ぐだぐだ言うとらんと、さっさとわしらと一緒にここを出るぞ」

輔星が言うと、天柩と呼ばれた小人はムッツリした顔で、押し黙る。
「……だからこそ、お前らの言いなりにはなれん。もう間違えることは出来んのだ。我にもこいつらを守る責任がある」

しばらくして、天柩はぼそりとこれだけの言葉を吐き出した。

「ああ、なるほどね。了解了解。そういうことね。うんうん」
紫微は、大袈裟に頷いて見せる。

「でもさあ、お前ら最近はずっとここで、あれ、あの」
しばらく言い淀んでいたが、
「ひつきの相手させられてたんだろ?  どんなにひどくなっても、それよりはマシな状況になると思うぜ」
と、優しく諭すように紫微は語った。

……いや、それを言うなら、と七人の内の一人が手を上げて発言する。
「もうひつきは出て行ったわけだから、問題はないとも言える。ひつきが来るまでの、色んな会社の内情を調べたりする仕事に対しては特に不満はなかった」

「お前らなあ!」

紫微は辛抱しきれなくなったらしく、再び声を張った。

「だいたい、肝心のひつきをここから去らせたのは、あのよくわからん猫娘だろう?  お前らに恩人ヅラされるいわれはない」

あ、ホントだ、たしかに言われてみれば、等々と、口々に天柩の側の小人達が同意する。息を吹き返してきたようだ。

「……なあ、どう思う?」

とうとう音を上げた紫微が、振り返って須軽に訊ねた。憔悴仕切った表情である。

「知らないよ俺は」

須軽は欠伸を噛み殺しながら答えた。自分でも少し無責任かな、と思ったが、小人達の事情には、まだよく把握しきれない部分があるので、他に答えようがないのだ。

「そういえば、この大君は何を生業にしておられるのか?」

「おお、それは大事だ。それによって私らの仕事の内容も変わってくる」

向こう側の小人達から疑問の声が上がったので、
「ピッキング」
と、須軽は簡潔に答えた。

〝ピッキング?〝〝何それ?〝ごしょごしょと、天柩達が内輪で相談を始める。

「いや、探偵だよ、探偵!  色々調べたりすんの!」
紫微が慌てて訂正した。

「探偵……」

「なかなか良いな、惹かれるものがある。……企業スパイも良かったけど」

七人の小人達は、少し心が動いたようだが、なかなか意見がまとまる気配がない。

「なあ、お前らって座敷童子みたいなもんなの?」
須軽が突然口を開いた。

「な、なんだよいきなり」

「いや、よく知らないけど座敷童子って、居る家に幸福や富をもたらすって聞くからさ。お前らがやってるのって結局そういうことなのかな、って思ったんだけど」

「我らを上手く使えば富を得るのは可能だが、それは我らの存在と直結するものではない」
天柩が代表のようになって答える。

「佐一は巧みにそれをやってのけたが、みんなそうするとは限らん」

ふうん、と須軽は興味深げに応じた。
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