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6 霊媒登場

6-001 夢の裡に

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夢を見て、声を聞いた。

鮮明な印象に伴い、事細かく状況を説明してくれる、誰とも知らぬ者の声。

神の声なのか、初代の声なのか、意識化されていない自分の声なのか。意識のより深い部分で、世界と繋がっているという話の、いわゆる『高次の自我』とかいうモノなのか。

それが何なのかはよくわからないが、重要なのはそれの声聞ける、ということが自分という人間の能力の中で、おそらく一番のあてになる、ということだった。

母はこの能力を持っていなかった。だから自分は、自分自身で試行錯誤しながらこの能力を磨かなければならなかった。

冨田に教団の古い資料を探してもらい、あれこれ読んでみたりしたが、教科書として使えるようなものはあまりなかった。

薄々だが、直観神理の歴史の中でこの能力を持っていたのは実のところ、初代と、当代の自分だけなのではないか?  と考えている。

自分がこの能力を持っている、ということが教団の中で何かの問題の種になったり、もっといえば話題になることすらなかった。冨田以外には隠しているので当たり前ではある。

ただ自分について、状況から与えられている役割や権威のようなものと、その当人の能力は、ほとんど何の関係もないのだな、と今しみじみ椋戸辺むくとべ科乃しなのは考えているのである。

瞼を開けると、真っ白な高い天井が瞳に映った。

科乃は、ゆっくりふとんから身を起こす。

きっちり整理された、古い本が枕元に平積みになっていた。

本棚から持ってきて、置いておくのだ。読み終わったらまた戻す。

学習のためのものや、気を入れて読まなければいけないものは一気に読んでしまうが、優先順位の低い、趣味性の高いような本は複数をバラバラに、つまみぐいするように読んでいく。

当然栞がたくさん必要になるので、科乃の趣味の一つには色んな種類の、栞集めがある。

時計を確認してみた。まだ早い。冨田はよく、家まで帰るのがめんどくさい、という理由で、よく宿直室に泊りこんでいるが、今日はどうだろう?

もしかしたら居るかもしれないが、あまり朝早くに電話するのは気が引けた。

もうしばらく待てば、職員達が出勤して来るだろうから、その時に事務室に電話して誰かに冨田を呼んでもらおう、と科乃は考えた。

白妙会館の職員達もみな直観神理の信者だが、比較的科乃に好意的な者が多い。好意というか同情なのかもしれないが。それでも他の信者と話すよりはまだ気分的にマシだった。

時間を待って電話をかけてみる。

「あらあ、科乃様」

という、中年の女性職員の一声が科乃の耳に飛び込んできた。

恐縮した様子の女性職員に、冨田に文書保管室に行くより先に、自分の部屋まで来てくれるように、とことづけを頼むと、
「ええ、ええ。そりゃおやすい御用ですとも。冨田のおじいちゃんですね」
と、色良い返事だった。

それから十分ほどで、えっちらおっちら冨田が階段を上がって四階、科乃の居住スペースまでやってきた。
 
いそいそと、科乃はいつもの大広間で出迎える。
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