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「すいません……ホントに、笑うつもりは、なかったのですが……。いえ、はい。その疑問はごもっともです」
未夜は咳き込みながら呼吸を整え、ようやく話せる体勢になった。

「えーっと、一、二、三……古谷守お兄さんの三代前のご先祖様、ひいおじいさんになるんですかね。このかたが直観神理と若干交流があり、ひつきを預かることになった、という話のようです」

あっさり未夜が答えたが、守にとっては全くの寝耳に水でピンとこない。

「あのう、古谷のお兄さん、本当に、全く心当たりないんですか?  そういえばそんな話が、代々家に伝わってた、みたいな?」

「それがないんです……。でも、それをどこかに持って行こうとしてたんですから、親父は知ってたってことですよね?  何で僕には言わなかったんだろう?」

「守さんが、成年するまで黙っておくつもりだったんじゃありませんか?」

須軽が助け舟を出すように言った。まあ、そう思えば守にも納得がいかないこともないので、取りあえずこの場では須軽に同意しておいた。

それにしても、父親の宗州が何も伝えずに死んでしまったということは、須軽が見つけなければ、そんな得体のしれないものが自分の知らないまま、ずっと家の地下に眠っていたということになる。あまりぞっとしない話だった。

「ですのでですね、宗州さんは完っ全に、ひつきのためだけに佐一の肝入りでLCCに入ったんです。ミカドのおじさん、佐一、宗州さんの三人で会うことはよくあったみたいですけど、LCCの講座にはあんまり顔出してなかったみたいですよ。一応直観神理の信者にもなってますが、あれも名簿に名前のせるだけですから」

未夜は慮るように、言葉を紡ぐ。

「まあ、ひつきについては、冨田さんが詳しいので、気になるのならあの人に色々聞いてみてください。正直、私の知っていることは冨田さんに聞いたことが多いです」

冨田というのは、さっき出てきた教祖と同じ建物の『文書保管室』か何かの管理人という男のことだろう。

聞いてくれと言われてもコンタクトが難しそうだ、と守が考えていると、
「さて、では守さんにやっていただきたいことを、お伝えしましょう」
と、未夜が居住いを正して言った。

「その前に……。お二人はどういう目的で調査をなされてるんですか?  宗州さんを殺した犯人探しなんです?」

須軽は未夜の問いに答えて〝私は一応飯豊志摩さんの行方を捜す、という依頼を受けていますよ〟と、言った。

そうだ、考えてみれば、未夜は志摩の妹と名乗っている人物ではないか。志摩の消息を知っていて良さそうなものだ。

そう思い、守が訊ねてみると、未夜は何ともいえぬ趣き深い微笑みを面貌に湛えた。

「ちょっとわからないんですよねぇ……。私もあの日以来、連絡が取れないんです。おまわりさんにも話したのですが」
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