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5-014 佐一哲郎
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「この佐一哲郎は元は広告代理店に勤めてた人間で、信者でも何でもなかったんですが、今の講務長、塩見さんに請われて直観神理に来た人です」
妙な経歴の男である。守は、はあ、と気の入らない返事をしてしまった。
「直観神理は、まあ、時代の流れとか、あまり積極的に広報活動や信者獲得のための活動とかしなかったのもあって、近年信者さんの数が急激に減ってきてたんです。今の教祖に求心力がないせいだ、という声もありますが……。なので、講務長さんは、直観神理にも新しい風を入れて、淀んだ空気を一掃しよう! と思い立ちまして、業界でやり手と評判だった佐一をスカウトします。この男は、ざっと教団の内情を調べた結果、なんか意外にセレブな信者さんが多い、というのがこの団体の一番の強みである、という結論に達しました」
須軽は小さく、なるほど、と言って頷いた。守もここまでくれば、どう話がつながっているのかわかってくる。
「その方達をまとめるために、まず佐一が作ったのが……」
「それがリーダーシップ・コーチング・コミュニティってことですか」
「そうです。この集まりを直観神理の新しい求心力にしよう、と講務長さんその他を説得したようですね」
未夜は、須軽の方を向いて頷いた。
「これがですねぇ、佐一がどこまで考えてたのかわかりませんが、講務長さんやその他の教団幹部の方々の思惑を超えて上手くいっちゃいまして。LCCはものすごく活気づいて会員の人達もやる気マンマン。セレブ仲間の人達を、LCCに誘ったりして順調に教団は立ち直っていくかに見えました」
それがそんなに教団のためになったんですか? という須軽の質問に、
「ええ。LCCに入会するために、直観神理の信者にならなきゃいけませんでしたからね。お金持ちの人が多かったんで、献金や寄進もそれなりに増えたわけです」
と、未夜は率直に答える。
「人間力養成講座、とかさっきの紙に書いてましたけど、どんな講座なんです? そんなに魅力がある集まりなんですか?」
須軽が胡散臭そうな調子で訊ねた。どうもLCCがそんなに人気がある、という点にピンとこないらしい。ですですぅ、と未夜は眉根に皺を寄せて同意を示す。
「なんかLCCってミョーにガードが固くってですねぇ。あたし、あの講座覗けたことないんですよぉ。あの日以来余計警戒がキツくなって、やってる建物自体入れなくなっちゃったし」
未夜は、イライラした様子でため息をついた。
「講座で使うレジュメみたいのは、ミカドのおじさんが持ってきてくれたんですけどねえ。ニューエイジ系の思想や色んな自己啓発をチャンポンにしたような内容で。そこまで関心を惹くようなものとも思えないんですが……見ます?」
未夜は、手提げの中を探ろうとしたが二人共に断られた。
「もうちょっと興味持ちましょうよぉ」
「このLCCってのを調べるために、公調からあなた達が派遣されたわけですか?」
須軽の質問に、アルバイトですから、と念を押した後で、未夜は喋り始める。
妙な経歴の男である。守は、はあ、と気の入らない返事をしてしまった。
「直観神理は、まあ、時代の流れとか、あまり積極的に広報活動や信者獲得のための活動とかしなかったのもあって、近年信者さんの数が急激に減ってきてたんです。今の教祖に求心力がないせいだ、という声もありますが……。なので、講務長さんは、直観神理にも新しい風を入れて、淀んだ空気を一掃しよう! と思い立ちまして、業界でやり手と評判だった佐一をスカウトします。この男は、ざっと教団の内情を調べた結果、なんか意外にセレブな信者さんが多い、というのがこの団体の一番の強みである、という結論に達しました」
須軽は小さく、なるほど、と言って頷いた。守もここまでくれば、どう話がつながっているのかわかってくる。
「その方達をまとめるために、まず佐一が作ったのが……」
「それがリーダーシップ・コーチング・コミュニティってことですか」
「そうです。この集まりを直観神理の新しい求心力にしよう、と講務長さんその他を説得したようですね」
未夜は、須軽の方を向いて頷いた。
「これがですねぇ、佐一がどこまで考えてたのかわかりませんが、講務長さんやその他の教団幹部の方々の思惑を超えて上手くいっちゃいまして。LCCはものすごく活気づいて会員の人達もやる気マンマン。セレブ仲間の人達を、LCCに誘ったりして順調に教団は立ち直っていくかに見えました」
それがそんなに教団のためになったんですか? という須軽の質問に、
「ええ。LCCに入会するために、直観神理の信者にならなきゃいけませんでしたからね。お金持ちの人が多かったんで、献金や寄進もそれなりに増えたわけです」
と、未夜は率直に答える。
「人間力養成講座、とかさっきの紙に書いてましたけど、どんな講座なんです? そんなに魅力がある集まりなんですか?」
須軽が胡散臭そうな調子で訊ねた。どうもLCCがそんなに人気がある、という点にピンとこないらしい。ですですぅ、と未夜は眉根に皺を寄せて同意を示す。
「なんかLCCってミョーにガードが固くってですねぇ。あたし、あの講座覗けたことないんですよぉ。あの日以来余計警戒がキツくなって、やってる建物自体入れなくなっちゃったし」
未夜は、イライラした様子でため息をついた。
「講座で使うレジュメみたいのは、ミカドのおじさんが持ってきてくれたんですけどねえ。ニューエイジ系の思想や色んな自己啓発をチャンポンにしたような内容で。そこまで関心を惹くようなものとも思えないんですが……見ます?」
未夜は、手提げの中を探ろうとしたが二人共に断られた。
「もうちょっと興味持ちましょうよぉ」
「このLCCってのを調べるために、公調からあなた達が派遣されたわけですか?」
須軽の質問に、アルバイトですから、と念を押した後で、未夜は喋り始める。
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