上 下
42 / 124
5 磁場

5-005

しおりを挟む
「ま、ま、落ち着いてください」
ニコニコしながら、未夜は両掌を前に出してこちらに向ける。

「まず、私の持っている情報は、全てお兄さんがたにお渡しします。決してお二人にとって損にはならないですよ」

「見返りは何なんです?  こちらの持っている情報をあなたにお渡しすればいいんですか?」

須軽が問うと〝いえ、それにはおよびません〟と未夜は軽く首を振って答えた。

「お兄さんがたの持っている情報で、あたしが欲しいものって特に無いんです。あ、気を悪くしないでくださいね。でも事実なので」

「じゃあ、あなたは俺達に見返りは求めず、ただ情報を提供してくれるんですか?」

こっちとしてはありがたいですが、と、須軽は言葉の最後を締めくくった。

「それは協力関係とは言いませんよぉ」

ンフフフフ、と未夜は喉が鳴っているような、変な笑い声を出す。

「お兄さんがたにはやっていただきたいことがあるんです。危険なこととかじゃないですから、  その点は安心してください。簡単なお仕事です」

求人の広告のようなことを言う。

「俺達があなたの話を聞いた後、協力するって確信があるんですか?」
「あります」
  未夜は即答した。

「なるほど……。じゃあ聞かせてもらいましょう。かまいませんか?」

須軽が同意を求めてきたので、守は勿論、と首肯する。

「ハイハイ。では、お話を始めましょうかね。っても、これはどこから喋ればいいのか……。ちょっと、事情が複雑なんですよねー」

そですね、じゃあ、この辺りからいきましょうかね、などと呟きながら、手提げから一枚のカラーチラシを取り出した。

「これ、ご存じです?」

二人は、差し出されたチラシを覗きこんだ。

『T.M.M      第一回公開スクーリング&入学説明会  ―自己実現の心理学―』

チラシの上の方には、大きくこのような見出しがついている。下の方には、説明会を行う場所や時間の案内、二、三行の簡単な惹句があった。

「わりと良い紙ですね」
須軽が横から手を出し、人差し指と親指でチラシを挟んで擦りながら言った。
「学校みたいなのですよね?  あちこちでこれの広告見ますよ。社会人向けの講座でしょう?」

須軽の言葉を聞いて、守にも思い当たるところがあった。最近、テレビやラジオのCM、新聞やインターネットの広告で、やたらこの『T.M.M』を見る気がする。

「どうでもいいことですけど、『T.M.M』は『タスク・メンタル  メソッド』の略称です。じゃ、これはどうです?」

未夜は、新たに一枚のチラシを取り出し二人の前に提示した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

あなたの子ですが、内緒で育てます

椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」  突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。  夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。  私は強くなることを決意する。 「この子は私が育てます!」  お腹にいる子供は王の子。  王の子だけが不思議な力を持つ。  私は育った子供を連れて王宮へ戻る。  ――そして、私を追い出したことを後悔してください。 ※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ ※他サイト様でも掲載しております。 ※hotランキング1位&エールありがとうございます!

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

処理中です...