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4 たがいのなかに

4-009

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随分と年季の入った部屋だが、畳敷きではない。黒光りする木製の壁や床が、室内を形作っていた。作り付けの頑丈そうな棚が、ガレージ側の逆の壁にあって天井まで届いている。

見るからに無骨なそれは、この部屋の中で異彩を放っていた。元は飾り棚のようだが、今は上から下までびっしり釣り具で埋まっている。

「これ?」

囁くような声で、須軽が小人達に訊ねると紫微が、うん、そうそう、と返事をした。んー、と聞いている側が戸惑うような唸り声を上げながら、須軽は棚をガタガタ揺らし始める。

「あ、失礼」

棚のリールが一つ、ゴトン、と鈍い音を立てて床に落ちた。

「何やってるんです?」

「もうちょっと、もうちょっと待ってください……。おっ!」

須軽が声を上げると、棚が横滑りしてガタッと大きな音を立てる。

「やめてくださいよ!」

守はうわずった声を上げ、一歩前に出た。その瞬間、横滑りしていた棚が、悲鳴をあげるようにきしりながら前に動き始める。守は唖然とした様子でそれを見つめる。

「動き始めると結構軽いですね、これ」

何でもないように言って、須軽は棚を出し切った。ここ?  とまた小声で小人達に訊ね、棚のあった部分の床板の継ぎ目に胸ポケットから出した小さいマイナスドライバーを差し込む。テコの要領で、ドライバーを押し下げると難なく床板が持ち上がった。二、三枚、板を上げると小さい取っ手のついた石の蓋が表出する。

「よいしょっ、と」

口をついて出る掛け声とともに、須軽は一気に蓋を持ち上げた。ぽっかりと暗闇が口を開ける。蓋は四枚あり、適宜床板を外しながら全て持ち上げると結構な大きさの穴が現れた。

どうやらこれは、地下への入り口であるようだ。守は横から、恐る恐る覗き込んで見る。

生まれてからずっとこの家で暮らしてきたが、今の今までこんなものがあるのを知らなかった。梯子ではなく、階段で地下のどこかに通じているらしい。

段には最近のものらしい、靴跡がついている。
「じゃあ、行ってみます?」  

須軽が気安く話しかけたが、守の気持ちはそれどころではなかった。

「ちょっと待ってくださいよ!」

大声を出したので、小人達が身体をビクッと震わせる。
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