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3 問いと答え

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「まあまあ、落ち着いてくださいよ吾川さん。要するに見つかった二つの遺体が同じ場所で、 同時に死んだらしいというところが、最大の疑問点なわけじゃありませんか」

死亡推定時刻も、二人ともほぼ同時刻と推測されるものだったのだ。

「それなら、たとえば私が二つの遺体に心筋梗塞なり肺塞栓なりの所見を述べたとして、それにしたっておかしいでしょ?」

確かにそれはそうです、と不承不承吾川は、向うの言うことを認めた。

「二つの遺体が見つかった状況から、吾川さんが何者かの意志が介在しているのではないか、と疑うお気持ちはわかりますよ。しかし、だからといって私どもが、事実を曲げてそれに迎合するような結果を出すわけにもいかんのです」

「いや、何も私は殺しだって断定してるわけじゃないんですよ。事故の可能性も捨てきれませんし……。ただ、原因不明はあんまりだって言ってるんです」

吾川の言を受けて、教授はふーむ、と唸りしばらく沈黙した。

「しかし吾川さん。こう言ってはなんですが、お仕事がら死因不明の死体みたいなものに遭遇することも全くないわけではないでしょう?」

「二つ並んでるってのは、そうはありませんね……。先生のお考えを聞かせてください。こういう状況って有り得るんですか?」

「実際に起こっている以上、ないとは言えませんよ」

にべもなく言ったあと、教授は再び少し沈黙を挟んだ。

「一つ言えるのはですね、吾川さん。私の経験からすると、人間という生き物は徐々に、なだらかに進行していく刺激にはなかなか強いのですが、突発的な刺激には比較的脆いんです」

「なんですって?」

急にざっくばらんな調子になった相手に、吾川は面喰らった。あ、いえ、科学的に証明されてる定説ってわけでもなんでもなく、ただの私の感想ですけどね、と教授は付け足す。

「私も解剖なんかしておりますとね、身体中もう、疾患だらけでですね、ここまで悪くなっててよくも今まで、生きていられたもんだ、って感心することもあるし、一方で何かのはずみで、パッタリ死んじゃったような遺体を視ておりますと、人間というものまあ、こんなに簡単に死んじゃうものなのかな、と思うこともあるわけですよ」

「あ、ああ、風呂で湯船に浸かった瞬間に温度差で死んだとか、バクチの最中に興奮して死んだとかありますね」
  吾川は、段々相手の言わんとすることがわかってきた。

「え?  すると先生、今回の事件、二人同時にそれが起こったっていうんですか?」
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