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2 二つの死体

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「芸人っつったら、お前ん家の昔の商売となんかつながりがあるんじゃないか?  大道芸人はテキヤの兄弟みたいなもんだろ?」

  今度は守が考え込む番だ。

「……いえ、テキヤは爺ちゃんの代で終わりです。父さんは子供の頃手伝ってたそうですけど、僕が物ごころついた時はもう、ウチは通販の会社やってました。僕も二、三回商売バイに出たことはありますけど、父さんの昔の知り合いの店でアルバイトしただけですよ」

「何がバイだよ、いっぱしの言葉使うな」

「とにかくもう、ウチはそういう関係の人とはキレてますから」

顔を顰めている吾川に、守は多少冷淡に聞こえる言い方をした。

「でもお前、マサは出入りしてるだろうが」

「安東さんはウチの会社の役員ですよ!」

吾川の言っているのは、安東あんどう将一まさかずという男で守の家の通販会社の社員である。元々テキヤをやっていた男で、古谷家とは縁が深く守の祖父と父親が会社を立ち上げる時に協力したという話だった。そのままズルズルと社員になってしまったらしい。

「あいつはカタギには見えんがなあ」

「まあ、確かに安東さんは、僕が知ってる中では一番父さんと付き合いが長い人ですよ」

「ねえほら、あの神農さんの像。まだ床の間に置いてあるじゃない?  完全にテキヤと切れてるってわけでもないんじゃないの?」

眞砂がほがらかな様子で言う。つい先刻見たような言い方だった。

「あれはまあ、守り神みたいなものですから」

「おお、そうだよお前。あの何とかいうちっちゃい神様の掛け軸も」

「捨てるのもなんだし、置いといただけです。……今後はどうなるかわかりませんが」

だんだん不機嫌になっていく守の様子を見て、面倒になったらしく吾川は〝まあ、なんかわかったら教えてやるよ〟と言い残して、さっさとどこかへ行ってしまった。

「そんなにムクれないでよ。アーさん、あれでも君のこと心配してるんだよ」
二人きりになった後、眞砂がこそっと守に耳打ちする。はあ、と守は気の無い返事をしたが、これではあんまり愛想がないかと思い、疲れてるんです、と付け足した。

そもそも現在守が不機嫌になっているのは、吾川ではなくどちらかというと眞砂のせいなのだが、眞砂の悪意のない顔を見ていると、そんなことなどどうでも良く思えてくる。

疲れている、というのは嘘ではなく自室に戻ってベッドに倒れ込んでいると、いつの間にか眠っていた。
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