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1 この出会いの偶然と必然
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「お前ら金なんか持ってないだろ。期待してないよ」
「いやいや。そこは期待してもらってかまわないよ」
小人はソラ豆ほどの顔に、満面の笑みを浮かべる。
「俺達、人間の家ん中調べたりすんの得意だからさ。仲間探しする以外の時は、俺達を好きに使って、色々お前の知りたい情報とか集めろよ。上手くすりゃあ金も儲かると思うよ。……その、副業っていうの?」
為綱はしばらく考えていたが、
「要するに、俺に仕事辞めてもらいたいの?」
と、単刀直入に訊ねた。
「いや! いやいやいや! そんなことは。なあ?」
先頭の小人が、うしろを向いて同意を求める。
「そうですとも! ただ少しだけ、こっちに注力してくれる割合を増やしていただけたらという話で……」
「ああ、そうだ!」
わざとらしく、先頭の小人が話しを打ち切った。
「おためし期間でさあ、なんか知りたいこととか、持ってきて欲しいもんとかない? 何でもやってやるよ」
おお、それは名案! こっちもわざとらしく年老いた小人が相槌を打つ。
「持ってきて、ってお前……。別に何もないけど」
為綱は顔を顰めて答えた。
「そう? じゃあそういう機会があったらまた」
早口で一気に言うと、先頭の小人は窓に向かって駆け始めた。後の二人もそれに続く。
「俺、名前は紫微っていうんだ。よろしくな」
窓枠で振り返って、先頭の小人が声を張り上げた。
「わしは輔星です」
老いた小人も頭を下げながら名乗る。
「そいつは、輿鬼ね」
最後に残った小人を、指差しながら紫微が言った。
紫微と輔星が夜に消えていった後、最後の一人が窓枠の上で振り返る。こいつ“よき”って名前だっけ? と為綱が考えていると、小人は目深に被っている帽子をちょっと上げて、こっちを見た。
三人の中で帽子を被っているのは、この輿鬼だけである。顔はよくわからないが、あの輔星という小人よりは若そうだ。
「ちょっと安心したよ。あんた、バカじゃないみたいだね」
少し笑ったような気がした。その後、『鈍そうだけど』と余計なことを付け足して、輿鬼も屋外に去っていく。為綱は身体を起こし、窓を開けてみた。夜風が心地良いが、小人達は姿形も見えない。
しばらくそうしていたが、やがて夢でも見たのかもしれない、と自分を納得させ寝床に入った。
「いやいや。そこは期待してもらってかまわないよ」
小人はソラ豆ほどの顔に、満面の笑みを浮かべる。
「俺達、人間の家ん中調べたりすんの得意だからさ。仲間探しする以外の時は、俺達を好きに使って、色々お前の知りたい情報とか集めろよ。上手くすりゃあ金も儲かると思うよ。……その、副業っていうの?」
為綱はしばらく考えていたが、
「要するに、俺に仕事辞めてもらいたいの?」
と、単刀直入に訊ねた。
「いや! いやいやいや! そんなことは。なあ?」
先頭の小人が、うしろを向いて同意を求める。
「そうですとも! ただ少しだけ、こっちに注力してくれる割合を増やしていただけたらという話で……」
「ああ、そうだ!」
わざとらしく、先頭の小人が話しを打ち切った。
「おためし期間でさあ、なんか知りたいこととか、持ってきて欲しいもんとかない? 何でもやってやるよ」
おお、それは名案! こっちもわざとらしく年老いた小人が相槌を打つ。
「持ってきて、ってお前……。別に何もないけど」
為綱は顔を顰めて答えた。
「そう? じゃあそういう機会があったらまた」
早口で一気に言うと、先頭の小人は窓に向かって駆け始めた。後の二人もそれに続く。
「俺、名前は紫微っていうんだ。よろしくな」
窓枠で振り返って、先頭の小人が声を張り上げた。
「わしは輔星です」
老いた小人も頭を下げながら名乗る。
「そいつは、輿鬼ね」
最後に残った小人を、指差しながら紫微が言った。
紫微と輔星が夜に消えていった後、最後の一人が窓枠の上で振り返る。こいつ“よき”って名前だっけ? と為綱が考えていると、小人は目深に被っている帽子をちょっと上げて、こっちを見た。
三人の中で帽子を被っているのは、この輿鬼だけである。顔はよくわからないが、あの輔星という小人よりは若そうだ。
「ちょっと安心したよ。あんた、バカじゃないみたいだね」
少し笑ったような気がした。その後、『鈍そうだけど』と余計なことを付け足して、輿鬼も屋外に去っていく。為綱は身体を起こし、窓を開けてみた。夜風が心地良いが、小人達は姿形も見えない。
しばらくそうしていたが、やがて夢でも見たのかもしれない、と自分を納得させ寝床に入った。
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