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1 この出会いの偶然と必然

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須軽為綱は畳の上で横になり、ボーッとつけっぱなしにしたTVを見ていた。強いて見たい番組というわけでもなく、ただ自分の頭を空っぽにするために利用している、というのが実情に近い。

そっちの方がなんとなく疲れがとれる気がするのだ。

なので、自然流しておく番組は、あまり頭を使わずにすむバラエティのようなものが多くなる。

……そろそろ、まぶたを開けているのが億劫になってきた。意識がとびかけている。TVの電源を消し、床に着こうとしていると、コツコツと何か硬いもの同士がぶつかるような音がどこからか聞こえてきた。為綱は身を起こし、周囲を見渡してみる。

「窓か」

ここは2階なので、不審者ではないだろう。……苦労して男の部屋など見ても面白くはないはずだ。そう思い、為綱は無防備にカーテンを開けた。

何の姿も見えないので、カーテンを閉めようとしたら下の方で音がする。きれいな小鳥が、外からクチバシでコツコツ窓を叩いているのだ。

「カワセミか」

小鳥は、鮮やかな翡翠色の羽毛を纏っている。為綱は、別段鳥の種類に詳しいわけではなかったが、カワセミはわかった。以前川岸で見かけてから気に入っていたのだ。

カーテンを閉めようとして、ふと思い止まった。

「入るか?」

為綱は、そっと戸を引いて窓に隙間を作ってやる。まだ肌寒い季節なので入りたいのかと思い、つい仏心を出してしまったのだ。朝には外に出してやるつもりであった。

「よっとっ!」

妙な声が聞こえた、と思ったらカワセミがひょっこりジャンプして  畳の上に降り立つ。

「いやあ、努力が実りましたな」
「苦節五日目だ。気付いてくれてよかったよマジで」

  最初の一匹に続いて、次々と小鳥が入ってきた。

「ん?」
  周囲を見てみたが部屋内のこと、もちろん誰もいない。TVも消している。

「こっちこっち。ほら」

先頭のカワセミがバサッ、と音を立てて自分の皮を脱ぎ棄てた。

「ほいっ」

  そこには、体長十センチ弱の小さな人間が両手を広げて立っている。

「はじめまして。これからお世話になります」
「どうも」

  うしろの二匹も次々に外側のカワセミを脱いだ。

「……なあ、その」

しばしの沈黙の後、為綱は顔を顰めて話し始めた。

「お前ら着てるの、それ貫頭衣ってやつ?」
「あ、ああ」

小人達三人は、言われて自分達の衣服を確認する。

「うん。そんなん」

初めに鳥の皮を脱いだ小人が、代表で答えた。素材はよくわからないが、平べったい物を張り合わせて簡単な衣服のカタチにしている。肩から胸にかけて妙な模様が描いてあった。袖はない。

「初対面で、人間に服のこと聞かれるとは思わなかったな」
「あんまり驚いてない」
「肝が据わっておるというのか何というのか……ある意味頼もしいとも言えますな」

  小人達はボソボソ話し合っている。

「いや、気になっただけ。びっくりはしてるよ」

「ほほう、大君おおきみは眼だけでなく耳も良いようで」

  小人の中で、一番歳を取って見える者が声を上げた。皮肉のようにも聞こえるが、どうやら本気で感心しているようだ。どういう意味かはよくわからない。

「つまり俺達って、普通の人間には見えないんだよ」

「俺見えるけど」

「そう!  それがお前を選んだ理由!」

  怪訝な様子の為綱に、先頭の小人がビシッと指を向けながら言った。
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