夏花

八花月

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17.峠の道

002

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 今度こそ幽霊を撮影する、と言ってまた峠の古墳まで勇んで進んでいるのだ。

「じゃああれなんだったのかな? ふわふわ飛んでたし、なんか鬼火みたいなのも出してたけど」

「さあ……妖怪とか?」

 峻は、踊り場の鏡に姿が映っていなかったところから、なんとなく正体を推察していたが黙っていた。深い意味はなく、確信もないしどうでもよかったのである。

「あ、お姉さん、座敷童みたいなもの、とか言ってたよね? そういう感じの妖怪かなあ」

「うーん……どうだろな」
 
「まあいっか! どうせ幽霊ではないんだし。今度は絶対幽霊撮るぞ~!」 

 前回、黒衣の女は幽霊を呼びだしている、と峻が言ったため、帰るまでにどうしても幽霊を録画したい冬絹は、強硬にまたかささぎ峠に行きたい、と主張したのだ。今度は古墳の近くで夜を明かしたいらしい。

 峻は止めたが聞く耳を持っていなかった。

 まあ、あの女が何をしていたのか知らないが、再び鉢合わせることはなかろう、と峻もタカを括っていたのである。

「なあ……どうしても幽霊じゃなきゃダメなの? お化けでもよくない?」

「うう~ん。お化けや妖怪はUMAとかの括りでしょ? 嫌いじゃないけど、僕はそういうのより、やっぱり幽霊だな~。死んだ人がもう一回現世に出てくるっていうのにロマンを感じるよ~」

「ああそう。死んだのがもう一回出てくるのがいいわけね」

 峻自体は見慣れているので、格別幽霊を見たいとは思わないが、なんとなく冬絹の趣向は理解した。

『そうか。幽霊居ても冬絹には見えないかもしれないのか』

 峻はハタと重要なことに気付く。

『霊としての力が強かったりすると、霊感無くても見えたりすんのかな……よくわかんねえ。まあ、俺だけ見えるやつだったら、居ても黙ってよ』

 峻が密かに方針を決めていると、木立を縫う強い風が二人の周囲を吹き抜けていった。 遥か上空からも空気を裂く唸り声が聞こえ、激しい気流の存在を感じさせる。

「おお~! 魔の風だよこれは~! きてるね~!」
「不吉なこというなよお前……」

 峻はうんざりした調子で冬絹をたしなめた。
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