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1. 地下のまどろみ
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「はーい! 夢の無い話はやめよー!」
沙希がやけくそのように言った。
「そもそも私らがアイドルとしてもっと売れれば辞めさせられることもないだろうし、この情報資料室の人員も増やしてくれるでしょ。そうすりゃちょっとは楽も出来る! それを目指してがんばろー!」
「あんたが言い出したんでしょ」
「あまりがんばる気になれない言い方ですね……」
「どうせ夢ならもっと大きいこと言やあいいのにね」
沙希の言に鼓舞された人間はいないようだ。
「小さなことからコツコツとだよ! あんまりデカいこと言って盛り上がっても後から空しくなるだろ?!」
「オアーッ!」
一人PCに向かっていた尾鷹葉子が、突如奇声を発した。
「な、なんだ?」
「どしたの?」
「ちょっと! そんなどうでもいい話止めてこれ見なよ!」
ちょいちょい、と軽やかに振られる掌に引かれSNOWのメンバーは葉子の机に集まってきた。
「どうでもいいってあんた……」
ぼやきつつ、沙希も軽く眉間に皺を寄せながらモニターを覗き込み、
「おうっ!」
と、勝るとも劣らぬ奇声を上げた。
「夕山真希……『L⇆Right!』の方ですね」
「私たち会ったことあるかな?」
「直接話したりしたことはない……はず」
「現場で見かけたことはあるよ」
途端に皆の顔つきが変わってくる。仕事モードのテンションだ。
……いや、今までやっていたことも仕事なのだが。
「えーっと……『千代エージェンシー所属の女性アイドルユニット・L⇆Right!(ライト!)の夕山真希さんが所属事務所のビルから転落、倒れているのが発見され……死亡が確認』って、えええ! 嘘?!」
遅れてやってきた岡真銀が仰天している。
「どったの岡ちゃん?」
「知り合い?」
過剰な反応を訝られたが、真銀は〝いえ〟と首を振った。
「好きだったので……。ただのファンです。可愛いですよね、彼女たち。華があって」
真銀の言葉にどことなく違和感を覚えた室長、六ツ院雪枝は少し記憶を探ってみて、その正体がわかった。
「ああ、あの双子でそっくりの……。たしか彼女たち、大き目のプロモーションがかかってましたよね。これからだったのに」
既に死亡しているので〝だった〟と過去形なのは道理なのだが〝可愛い〟から後が、彼女らの現在を示しているようで気になったのである。
「そうそう。四季・真希の双子ユニット」
なりのダメ押しの確認で、みなお互いの顔を見合わせ頷きあった。
「死因はなんなの?」
「だから転落死だよ」
そうじゃないって、と伊予は手首を振った。
「今時のああいう高いとこって、窓開きにくくなってるじゃん。誤って転落死、ってそうそうないんじゃない?」
「窓拭きでもしてたんじゃなければねぇ」
葉子は今の軽口に対する周囲の評価が、あまり芳しくないことを素早く察し、
「まあ事故って可能性もなくはないと思うけど……あとは自分で飛び降りたか誰かに落とされたか……」
と、わざとらしく続けた。
沙希がやけくそのように言った。
「そもそも私らがアイドルとしてもっと売れれば辞めさせられることもないだろうし、この情報資料室の人員も増やしてくれるでしょ。そうすりゃちょっとは楽も出来る! それを目指してがんばろー!」
「あんたが言い出したんでしょ」
「あまりがんばる気になれない言い方ですね……」
「どうせ夢ならもっと大きいこと言やあいいのにね」
沙希の言に鼓舞された人間はいないようだ。
「小さなことからコツコツとだよ! あんまりデカいこと言って盛り上がっても後から空しくなるだろ?!」
「オアーッ!」
一人PCに向かっていた尾鷹葉子が、突如奇声を発した。
「な、なんだ?」
「どしたの?」
「ちょっと! そんなどうでもいい話止めてこれ見なよ!」
ちょいちょい、と軽やかに振られる掌に引かれSNOWのメンバーは葉子の机に集まってきた。
「どうでもいいってあんた……」
ぼやきつつ、沙希も軽く眉間に皺を寄せながらモニターを覗き込み、
「おうっ!」
と、勝るとも劣らぬ奇声を上げた。
「夕山真希……『L⇆Right!』の方ですね」
「私たち会ったことあるかな?」
「直接話したりしたことはない……はず」
「現場で見かけたことはあるよ」
途端に皆の顔つきが変わってくる。仕事モードのテンションだ。
……いや、今までやっていたことも仕事なのだが。
「えーっと……『千代エージェンシー所属の女性アイドルユニット・L⇆Right!(ライト!)の夕山真希さんが所属事務所のビルから転落、倒れているのが発見され……死亡が確認』って、えええ! 嘘?!」
遅れてやってきた岡真銀が仰天している。
「どったの岡ちゃん?」
「知り合い?」
過剰な反応を訝られたが、真銀は〝いえ〟と首を振った。
「好きだったので……。ただのファンです。可愛いですよね、彼女たち。華があって」
真銀の言葉にどことなく違和感を覚えた室長、六ツ院雪枝は少し記憶を探ってみて、その正体がわかった。
「ああ、あの双子でそっくりの……。たしか彼女たち、大き目のプロモーションがかかってましたよね。これからだったのに」
既に死亡しているので〝だった〟と過去形なのは道理なのだが〝可愛い〟から後が、彼女らの現在を示しているようで気になったのである。
「そうそう。四季・真希の双子ユニット」
なりのダメ押しの確認で、みなお互いの顔を見合わせ頷きあった。
「死因はなんなの?」
「だから転落死だよ」
そうじゃないって、と伊予は手首を振った。
「今時のああいう高いとこって、窓開きにくくなってるじゃん。誤って転落死、ってそうそうないんじゃない?」
「窓拭きでもしてたんじゃなければねぇ」
葉子は今の軽口に対する周囲の評価が、あまり芳しくないことを素早く察し、
「まあ事故って可能性もなくはないと思うけど……あとは自分で飛び降りたか誰かに落とされたか……」
と、わざとらしく続けた。
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