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008 ぷっつん少女直美
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――なんちゅうええ女や!
憂いを帯びた大きな瞳は、それだけで男を虜にするに十分だった。
「な、なぁ藤原君、あの哀しそうなまなざし……なんか吸い込まれそうにならへん……」
「お、おぉ……」
二人の視線は直美の体型へと移った。
スポーツジムのインストラクターをしている、無駄のない均整のとれた体は美しく、それでいて服の上からでも分かる豊満な胸が、女性としての妖艶さを醸し出していた。
黒髪ショートカットの彼女に、坂口がいなければその場で襲い掛かりたくなる様な衝動を二人は覚えた。
「直美ちゃん、久しぶりやないかえ」
そう言って健太郎が、直美の太腿を頬ずりしながらさすりだした。
その時だった。藤原と本田は我が目を疑った。
「な……こ、この変態親父っ……!」
言うか言わないか、直美の憂いを帯びた大きな瞳がつりあがり、素早くすっとしゃがみ込むと、膝蹴りで健太郎の顎を破壊した。
そして吹っ飛んだ健太郎の上に馬乗りになると、パンチの連打をボディに叩き込み、最後に立ち上がったかと思うと、全体重を乗せてエルボーをみぞおちに叩き込んだ。
「ぐえっ……」
この様を見ていた藤原と本田が、抱き合いながら言った。
「お……恐ろしい娘やなぁ藤原君……」
「お、おぉっ……み、見かけとはえらい違いや」
健太郎が体をピクピク痙攣させながら起き上がった。
口からは血が流れている。
「相変わらずのプッツンやなぁ、直美ちゃん」
血を拭い、そう言って健太郎が笑った。
「何言うてるんよ、この豚」
「どや、ええ子やろ。この子入れると入れへんでは戦力が全然ちゃうで」
健太郎の笑みに藤原と本田は、なんとまぁたくましいお二人で、そう思った。
「ちょっと、戦力って何の事なん?私も仲間に入れてよ、何の話してたんよ」
直美があぐらをかいてそう言う。
「仲間外れになんかするかいな……ええか、直美ちゃん、よぉ聞きや。実はな……」
健太郎が事のなりゆきを話し出す。見る見る内に直美の瞳が輝いていった。
「やるやる!私絶対に行く!」
直美は大はしゃぎだった。
「ねえねえ、相手はモンスターなんやから本気だしてもええんでしょ。私いっぺんでええからやってみたかってん、ほんまもんのバトル。それも手加減せんでええやなんて、最高の話やんか。なあ健太郎、絶対私も連れてってよ」
「当たり前やないか。直美ちゃん一人おったら男五・六人分の働きはしてくれるさかいにな」
「メリケンサックにプロテクター、拳あり蹴りあり、最高の肉弾戦やんか。こんな経験、したくても普通出来ひんよ。それに銃もあるやなんて、楽しみやなぁ」
藤原と本田は真っ青な顔をしていた。
健太郎は陽気に直美の反応を喜んでいる。
坂口は……これでしばらく俺はどつかれんで済むな……こいつ鬱憤たまったらすぐ俺に攻撃してくるからな……と、安堵の表情を浮かべていた。
「こんだけ持ってきました」
健太郎が大きなバッグを部屋に持ってきた。
「さあ早い者勝ちやで。好きなん選びや」
五人で銃器の物色が始まった。
まるで遠足前の子供のように、陽気に騒ぎながら銃を手に取る。
既に迷彩服はみんな着ていた。
五人とも、すっかりその気になっている。
「俺はやっぱしガバやのぉ」
健太郎が、パンケーキタイプのホルスターにコルト・ガバメントを差し込む。
「藤原はやっぱりベレッタか」
「あぁ、これが一番手にしっくり来るんや」
「お前は外人並みに手がでかいからのぉ。俺が持ったら、その丸まったグリップを握りきれん」
「逆に俺は、ガバやったら手がすくんや」
「よっしゃ、僕はグロックや」
坂口が言った。
「前グアムに行った時に色んな銃撃ちまくったんやけどな、これが一番撃ちやすかったんや。反動も少ないし連射もしやすかったしな、日本人にはグロックやで。まぁ見かけはごっつう安物くさいんやけどな」
「私はSIGね。自衛隊が使ってたぐらいやから使い勝手もいいと思うし。マガジンチェンジもそう手間取らへんと思うし」
わいわいと騒いでいる中で、本田が一人うつむいたままうなだれていた。
「どないしてん本田、何落ち込んでんねん」
「だって……そんなん言うたかて、みんな僕の大事な銃持っていって……残ったんこれやで」
と、本田がトカレフを見せた。
その瞬間、部屋中が笑いに包まれた。
「わ、笑わんかってもええやんか……」
「泣くな泣くな。お前には一番似合とる。後は、と……そうや、鉈は足に縛り付けて、ほんでショットガンも責任を持って使わせてもらう」
「ほんで……いつ殴りこみかけるんや、山本君」
坂口が真剣な表情で言った。
「明日の朝一番には出ます」
「そか……ほんだら今日は早よ寝よ。明日五時起床や」
「はい、ええな藤原、本田。気合入れて寝ろや。目ぇ覚めたら殴り込みやさかいな」
「おぅ」
「……うん」
「よっと」
坂口が布団をその場に放り込んだ。
「適当に使い」
「何から何まですんません」
「ええよええよ、気にせんと使い」
「すんません」
健太郎と藤原が寝転んだ。
「明日やぞ藤原。これで俺らも戦争を知っとる世代の仲間入りや」
「すまんな、健」
「気にすんな……そやけどこれだけは約束しとこや。絶対生きて帰ってくるで」
「おおっ……!」
二人が固く手を握り合う。
「……と、坂口さん、何してはりますん?」
坂口は机に向かい、何やらしていた。
「ん……ああ、原稿が途中やから仕上げとかなあかんねん。明日が締め切りやからな。それと、もっぺん神話のおさらいもしときたいしな。気にせんと寝とき」
「すんません……ん?本田、お前は何しとんねん」
「え?う、うん。もっぺん銃のチェックしとこうと思って……いざ実戦で動かんかったらあかんし……みんなの分もしとくね」
「そうかそうか、ええ心がけや。藤原、俺らは早よ寝よ。みんなの気持ち、ありがたく受け取ろやないか」
「……そやな」
藤原の横に仰向けに寝転んだ直美が、目を伏せて静かに言った。
「健太郎、何かしてきたら明日のお日さん、拝めんようにしたるからな。ちょっとでも触ってみい、地獄見せたるからな」
「おりゃっ……!」
健太郎が藤原を飛び越し、直美の横に転がった。
「心配せんでええって直美ちゃん。俺はただ、ちょっとだけこの初々しい太腿を撫でるだけで……」
「それがあかんっちゅうとるんやっ!」
直美の肘がみぞおちに入った。
「おげっ……!」
健太郎の意識が途絶えた。
憂いを帯びた大きな瞳は、それだけで男を虜にするに十分だった。
「な、なぁ藤原君、あの哀しそうなまなざし……なんか吸い込まれそうにならへん……」
「お、おぉ……」
二人の視線は直美の体型へと移った。
スポーツジムのインストラクターをしている、無駄のない均整のとれた体は美しく、それでいて服の上からでも分かる豊満な胸が、女性としての妖艶さを醸し出していた。
黒髪ショートカットの彼女に、坂口がいなければその場で襲い掛かりたくなる様な衝動を二人は覚えた。
「直美ちゃん、久しぶりやないかえ」
そう言って健太郎が、直美の太腿を頬ずりしながらさすりだした。
その時だった。藤原と本田は我が目を疑った。
「な……こ、この変態親父っ……!」
言うか言わないか、直美の憂いを帯びた大きな瞳がつりあがり、素早くすっとしゃがみ込むと、膝蹴りで健太郎の顎を破壊した。
そして吹っ飛んだ健太郎の上に馬乗りになると、パンチの連打をボディに叩き込み、最後に立ち上がったかと思うと、全体重を乗せてエルボーをみぞおちに叩き込んだ。
「ぐえっ……」
この様を見ていた藤原と本田が、抱き合いながら言った。
「お……恐ろしい娘やなぁ藤原君……」
「お、おぉっ……み、見かけとはえらい違いや」
健太郎が体をピクピク痙攣させながら起き上がった。
口からは血が流れている。
「相変わらずのプッツンやなぁ、直美ちゃん」
血を拭い、そう言って健太郎が笑った。
「何言うてるんよ、この豚」
「どや、ええ子やろ。この子入れると入れへんでは戦力が全然ちゃうで」
健太郎の笑みに藤原と本田は、なんとまぁたくましいお二人で、そう思った。
「ちょっと、戦力って何の事なん?私も仲間に入れてよ、何の話してたんよ」
直美があぐらをかいてそう言う。
「仲間外れになんかするかいな……ええか、直美ちゃん、よぉ聞きや。実はな……」
健太郎が事のなりゆきを話し出す。見る見る内に直美の瞳が輝いていった。
「やるやる!私絶対に行く!」
直美は大はしゃぎだった。
「ねえねえ、相手はモンスターなんやから本気だしてもええんでしょ。私いっぺんでええからやってみたかってん、ほんまもんのバトル。それも手加減せんでええやなんて、最高の話やんか。なあ健太郎、絶対私も連れてってよ」
「当たり前やないか。直美ちゃん一人おったら男五・六人分の働きはしてくれるさかいにな」
「メリケンサックにプロテクター、拳あり蹴りあり、最高の肉弾戦やんか。こんな経験、したくても普通出来ひんよ。それに銃もあるやなんて、楽しみやなぁ」
藤原と本田は真っ青な顔をしていた。
健太郎は陽気に直美の反応を喜んでいる。
坂口は……これでしばらく俺はどつかれんで済むな……こいつ鬱憤たまったらすぐ俺に攻撃してくるからな……と、安堵の表情を浮かべていた。
「こんだけ持ってきました」
健太郎が大きなバッグを部屋に持ってきた。
「さあ早い者勝ちやで。好きなん選びや」
五人で銃器の物色が始まった。
まるで遠足前の子供のように、陽気に騒ぎながら銃を手に取る。
既に迷彩服はみんな着ていた。
五人とも、すっかりその気になっている。
「俺はやっぱしガバやのぉ」
健太郎が、パンケーキタイプのホルスターにコルト・ガバメントを差し込む。
「藤原はやっぱりベレッタか」
「あぁ、これが一番手にしっくり来るんや」
「お前は外人並みに手がでかいからのぉ。俺が持ったら、その丸まったグリップを握りきれん」
「逆に俺は、ガバやったら手がすくんや」
「よっしゃ、僕はグロックや」
坂口が言った。
「前グアムに行った時に色んな銃撃ちまくったんやけどな、これが一番撃ちやすかったんや。反動も少ないし連射もしやすかったしな、日本人にはグロックやで。まぁ見かけはごっつう安物くさいんやけどな」
「私はSIGね。自衛隊が使ってたぐらいやから使い勝手もいいと思うし。マガジンチェンジもそう手間取らへんと思うし」
わいわいと騒いでいる中で、本田が一人うつむいたままうなだれていた。
「どないしてん本田、何落ち込んでんねん」
「だって……そんなん言うたかて、みんな僕の大事な銃持っていって……残ったんこれやで」
と、本田がトカレフを見せた。
その瞬間、部屋中が笑いに包まれた。
「わ、笑わんかってもええやんか……」
「泣くな泣くな。お前には一番似合とる。後は、と……そうや、鉈は足に縛り付けて、ほんでショットガンも責任を持って使わせてもらう」
「ほんで……いつ殴りこみかけるんや、山本君」
坂口が真剣な表情で言った。
「明日の朝一番には出ます」
「そか……ほんだら今日は早よ寝よ。明日五時起床や」
「はい、ええな藤原、本田。気合入れて寝ろや。目ぇ覚めたら殴り込みやさかいな」
「おぅ」
「……うん」
「よっと」
坂口が布団をその場に放り込んだ。
「適当に使い」
「何から何まですんません」
「ええよええよ、気にせんと使い」
「すんません」
健太郎と藤原が寝転んだ。
「明日やぞ藤原。これで俺らも戦争を知っとる世代の仲間入りや」
「すまんな、健」
「気にすんな……そやけどこれだけは約束しとこや。絶対生きて帰ってくるで」
「おおっ……!」
二人が固く手を握り合う。
「……と、坂口さん、何してはりますん?」
坂口は机に向かい、何やらしていた。
「ん……ああ、原稿が途中やから仕上げとかなあかんねん。明日が締め切りやからな。それと、もっぺん神話のおさらいもしときたいしな。気にせんと寝とき」
「すんません……ん?本田、お前は何しとんねん」
「え?う、うん。もっぺん銃のチェックしとこうと思って……いざ実戦で動かんかったらあかんし……みんなの分もしとくね」
「そうかそうか、ええ心がけや。藤原、俺らは早よ寝よ。みんなの気持ち、ありがたく受け取ろやないか」
「……そやな」
藤原の横に仰向けに寝転んだ直美が、目を伏せて静かに言った。
「健太郎、何かしてきたら明日のお日さん、拝めんようにしたるからな。ちょっとでも触ってみい、地獄見せたるからな」
「おりゃっ……!」
健太郎が藤原を飛び越し、直美の横に転がった。
「心配せんでええって直美ちゃん。俺はただ、ちょっとだけこの初々しい太腿を撫でるだけで……」
「それがあかんっちゅうとるんやっ!」
直美の肘がみぞおちに入った。
「おげっ……!」
健太郎の意識が途絶えた。
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