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006 手に入れた幸せ
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彼女が出来た。
勿論、いじめにあっていたあの子だ。
あの時は怒涛の展開に驚いたが、この件をきっかけに、俺はタブレットの効果を疑うことをやめた。例えそれが、寿命1か月分の代償だとしても、そんなことがどうでもよく思えるぐらい幸せだった。
あれからすぐに告白されて、俺たちは付き合うようになった。
彼女をいじめるやつはもういない。それどころか、あの日を境に彼女も俺も、クラス内でのカースト上位者になってしまった。
存在感のなかった俺が、いつの間にかクラス委員にまでなってしまった。
恐るべし、タブレットの効果。
俺が想像していたより、その効果は絶大だった。願ってなかったことまでもが付随してきた。どうもこのタブレットは、その願いを叶える為に、極めて合理的な作用をもたらしてくれるようだった。
それでもまあ、あの三文芝居はどうだったんだと思うが。
とにかく俺は、こうして魂1か月分と引き換えに、最高の高校生活を手に入れた。
それからの俺は、何かことあるたびに、タブレットで検索するようになった。
寿命が縮まるのは嫌だ。それは変わらない。
でもそれ以上に、得られるものが多いことを知ってしまった。
それにあのお姉さんが言っていたように、願いの成就には代償が必要なんだ。それがたまたま「魂」というだけのことなんだ。
そして契約するしないは、代償に見合ってるかどうかで俺が判断すればいいのだ。
一度使ってしまうと、次に使う時のハードルがずっと下がっている気がした。それに何より、その絶大な効果に俺は魅了されていった。
検索して、僅かな寿命でいけるものなら契約した。
彼女へのプレゼント。これをあげたら彼女、きっと喜んでくれる筈だ。
バイトして買ってもいいのだが、今すぐ贈ってあげたい。「時は金なり」だ。
彼女の笑顔の代価が、寿命2日分。うん、安い、決まり!
次の試験、上位に入りたい。頭のいい彼氏がいれば、彼女も嬉しい筈だ。寿命10日分、安い安い!
体育祭、リレーのアンカーで1位に。寿命5日。たった5日でクラスのヒーローになれる。全然いいよ、契約契約!
こうして俺の高校生活は、最高に輝いていった。
「タブレット様々だよな」
久しぶりに実家のある駅に着いた俺は、雲一つない青空を見上げて笑った。
あれから10年。
一流大学を卒業した俺はすぐに起業して、大成功を収めた。
雑誌の表紙になったこともある。「今一番輝いている若手実業家」そんなコピーを見て、少し気恥ずかしくもなったが。
あの時の彼女とも、大学卒業と同時に結婚し、今では子供二人にも恵まれ、正に絵に描いたような幸せな日々を送っている。
俺がこうして幸せなのも、あの日悪魔のお姉さんと出会ったからだ。
あの時から、俺の人生は薔薇色になった。
困った時、トラブルに見舞われた時にでも、俺は常に悠然と構えることが出来た。
俺にはタブレットがあるのだから。
しかし人生に油断は禁物だ。いつ、どんな落とし穴にはまるか分からない。
そう思い俺は今日、ここ、悪魔のお姉さんと出会った喫茶店に赴いたのだった。
ここで初めてタブレットの存在を知った。力を知った。
あの時食べた料理の味は、今でもよく覚えている。
勿論今なら、あの料理より豪勢なものを食べることが出来る。
でもあえて、今日この日。
あの料理をもう一度口にして、初心に帰ろうと思ったのだ。
当然代金を支払えるのだが、今日は原点回帰という意味でも、このタブレットを使わせてもらおうと思っていた。
タブレットを出し、入力する。
「あの日に食べた料理」
しかしなぜか、画面が動かなかった。
「あれ? なんだ、バグったのか?」
そんなことを思っていると、画面が動き出した。
「……ん?」
画面が消え、文字が浮かんできた。
「残高が不足しています」
勿論、いじめにあっていたあの子だ。
あの時は怒涛の展開に驚いたが、この件をきっかけに、俺はタブレットの効果を疑うことをやめた。例えそれが、寿命1か月分の代償だとしても、そんなことがどうでもよく思えるぐらい幸せだった。
あれからすぐに告白されて、俺たちは付き合うようになった。
彼女をいじめるやつはもういない。それどころか、あの日を境に彼女も俺も、クラス内でのカースト上位者になってしまった。
存在感のなかった俺が、いつの間にかクラス委員にまでなってしまった。
恐るべし、タブレットの効果。
俺が想像していたより、その効果は絶大だった。願ってなかったことまでもが付随してきた。どうもこのタブレットは、その願いを叶える為に、極めて合理的な作用をもたらしてくれるようだった。
それでもまあ、あの三文芝居はどうだったんだと思うが。
とにかく俺は、こうして魂1か月分と引き換えに、最高の高校生活を手に入れた。
それからの俺は、何かことあるたびに、タブレットで検索するようになった。
寿命が縮まるのは嫌だ。それは変わらない。
でもそれ以上に、得られるものが多いことを知ってしまった。
それにあのお姉さんが言っていたように、願いの成就には代償が必要なんだ。それがたまたま「魂」というだけのことなんだ。
そして契約するしないは、代償に見合ってるかどうかで俺が判断すればいいのだ。
一度使ってしまうと、次に使う時のハードルがずっと下がっている気がした。それに何より、その絶大な効果に俺は魅了されていった。
検索して、僅かな寿命でいけるものなら契約した。
彼女へのプレゼント。これをあげたら彼女、きっと喜んでくれる筈だ。
バイトして買ってもいいのだが、今すぐ贈ってあげたい。「時は金なり」だ。
彼女の笑顔の代価が、寿命2日分。うん、安い、決まり!
次の試験、上位に入りたい。頭のいい彼氏がいれば、彼女も嬉しい筈だ。寿命10日分、安い安い!
体育祭、リレーのアンカーで1位に。寿命5日。たった5日でクラスのヒーローになれる。全然いいよ、契約契約!
こうして俺の高校生活は、最高に輝いていった。
「タブレット様々だよな」
久しぶりに実家のある駅に着いた俺は、雲一つない青空を見上げて笑った。
あれから10年。
一流大学を卒業した俺はすぐに起業して、大成功を収めた。
雑誌の表紙になったこともある。「今一番輝いている若手実業家」そんなコピーを見て、少し気恥ずかしくもなったが。
あの時の彼女とも、大学卒業と同時に結婚し、今では子供二人にも恵まれ、正に絵に描いたような幸せな日々を送っている。
俺がこうして幸せなのも、あの日悪魔のお姉さんと出会ったからだ。
あの時から、俺の人生は薔薇色になった。
困った時、トラブルに見舞われた時にでも、俺は常に悠然と構えることが出来た。
俺にはタブレットがあるのだから。
しかし人生に油断は禁物だ。いつ、どんな落とし穴にはまるか分からない。
そう思い俺は今日、ここ、悪魔のお姉さんと出会った喫茶店に赴いたのだった。
ここで初めてタブレットの存在を知った。力を知った。
あの時食べた料理の味は、今でもよく覚えている。
勿論今なら、あの料理より豪勢なものを食べることが出来る。
でもあえて、今日この日。
あの料理をもう一度口にして、初心に帰ろうと思ったのだ。
当然代金を支払えるのだが、今日は原点回帰という意味でも、このタブレットを使わせてもらおうと思っていた。
タブレットを出し、入力する。
「あの日に食べた料理」
しかしなぜか、画面が動かなかった。
「あれ? なんだ、バグったのか?」
そんなことを思っていると、画面が動き出した。
「……ん?」
画面が消え、文字が浮かんできた。
「残高が不足しています」
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