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第一部 二章
14奪う者、奪われる者(挿絵あり)
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放たれた一本の矢が、丸印のついた木の幹に刺さる。中心につれて小さくなるそれはどうやら何かの的代わりらしい。ヒュン、と風を切り、外側の印付近に当たる矢にリーゼロッテはピクリと片眉を痙攣させる。
「はあ……」
参ったな、と肩を落とした。印のついた木まで歩いていき、刺さっている矢を見つめる。十三本中、外し五本、外側六本、中間二本、真ん中ゼロ。かれこれ五回ほどこれを繰り返しているが、ど真ん中を貫けたのは一本もない。突き刺さった矢を三本程引き抜き、幹に頭を寄りかからせた。
前の自分ならもっと命中率があったのに。怪我のせいとはいえショックが大きかった。強力な火薬筒矢が手に入っても、これでは宝の持ち腐れである。使えこなせたらもっと……あの、バジリスク戦でマシに戦えたはずだ。そしたらルシールさんも、と眉間に力を入れて、木を殴り付ける。
「ふぅー……だめだ。だめだだめだ」
腹を立てる暇があるなら手を動かせ。少しでも前の感覚を戻すんだ。木の幹に手を付き、再び深く息をついてから、残りの矢を引き抜いていく。
ふと、右の視界からがさりと茂みの揺れる音がした。咄嗟に向いてみると、失った右目の死角外から何かが飛び出てくる。
「なっ……」
矢を抜こうと力んでいたせいで離れるのが遅れた。まずいと身構えると、真横から現れたクリフが突進して影を突き飛ばす。
「クリフ……!」
それを見送ってからハッとし、剣鉈を引き抜いて影を確認した。地面に倒れ、じたばたしながら起き上がるのは走鳥類のクルックーだ。二本足で背が高く、丸い体は茶色の羽毛に覆われている。別種にいる人喰い妖鳥と呼ばれるテイルクルックーならまだしも、普通のクルックーは温厚な性格のはずなのに。そこに違和感があって、威嚇するクリフを宥めながらじっと周囲を見回した。
「あ……」
弓の練習に使っていた木の影に、何かが見えた。真っ青でツルツルした楕円状の卵。ひと目でクルックーの巣だと気づき「そっか。卵があったんだね」と剣鉈を下した。恐らく、卵を守ろうとして襲いかかってきたのだろう。
「ごめん。気づかなかったんだ。貴方の卵には何もしないから」
剣鉈をしまい、木の幹に刺さった最後の矢を素早く引き抜いた。じっと目を逸らさず後退し、ある程度距離を置いてから「クリフ、行こう」と手綱を引く。離れていくリーゼロッテとクリフにクルックーは何もせず、自身の巣に戻っていった。
「ふう。急に襲ってくるからびっくりしちゃった……ちゃんと場所は考えないとね」
森には沢山の住民がいる。その一匹一匹には必ず守るべき家族がいるのだ。ちゃんとそれを理解した上で敬意ある行動を取らなくてはならない。どれだけ綺麗事を並べても、生きるというのは他者を食らうことだ。この世は食うか食われるか。命を奪う者、奪われる者の二種類しかいない。
毎回森の住民の「生きたい」意志を尊重できるわけじゃない為、狩った後にする儀式はせめてもの贖罪だ。それと、感謝。どれだけ力を身につけても、我が物顔で森を独占するな。そう、父からの教えを思い出す。
「さっきは助けてくれてありがとう、クリフ」
また怪我するところだったと笑い、歩きながらクリフの首辺りを軽く叩いた。しっぽを勢いよく振り、擦り寄ってくるクリフに「いい子だね」と頬を撫でる。
「……あ。ということはもしかして、キャンプにアレク、残してきたまま?」
当然とばかりにぶるりと鳴くクリフに「本当、アレクには厳しいね」と鼻で息をつく。あの施設のことで、少しは仲良くなったと思っていたのに。まあ、彼は狼でもあるし、大抵の動物は寄り付かないはずだ。そう思いつつ心配になり「早く戻ってあげようか」と早足でキャンプに向かう。
「あっ」
道中でばったりと鉢合わせた黒髪に、驚きの声を揃える。目の前からやってきた青年はこちらを見るなり「おい!」と怒鳴りながらズカズカと距離を詰め寄った。
「お前どこに行ってたんだよ! 俺を置いて!」
「ご、ごめん。ぐっすり寝てるからちょっと弓の練習に……クリフが待っててくれるはずだったんだけど」
何故かついて来ちゃってと、苦笑いで返した。隣にいるクリフは知らん顔を決め込むかのように首を高くしてそっぽを向いている。
「あ、アレクはなんでこんなところに?」
「起きたら誰もいねえから匂いを辿ったんだよ!! てっきり置いてかれたのかと……」
はあ、と心底安心するかのように長く息をついて脱力するアレクに「そんなことするわけないでしょ」とリーゼロッテが呆れる。
「うるせえ! こっちは本気で焦ったんだよ!」
その場で蹲り、涙目で見上げるアレクを見て、罪悪感より笑いが込み上げてしまう。ふっ、と少し吹き出して「ごめんね」と謝るリーゼロッテに「笑ってんな!」とアレクが声を張り上げた。
「だって、あまりにも必死なんだもん」
睨みつけられ、笑いを落ち着かせるように一呼吸入れてから「ほら、クリフも謝って」とリーゼロッテが背中を撫でる。高圧的に首を高く持ち上げた状態で見下ろしながら、クリフは嫌そうに頭を下げた。と見せかけて、ごちん、とアレクの頭に頭突きする。
「こいつ~!!」
この駄馬が! と頭を抑えてアレクが凄むと、その言葉に勘で嫌なことを言われたと察知し、クリフも乗り出すようにして睨んだ。
「あはは、本当に仲がいいね」
睨み合う二人にリーゼロッテが笑ってみせる。直後「どこがだよ!」とアレクの声に重なってクリフがこちらを見て呻いた。
「だってクリフがこんなに突っかかる人、初めて見たもん」
「……それは単に嫌っているからだろ」
俺も気に食わねえ、と親指で指して呟くアレクの手にクリフはガブリと噛み付いた。大口を開いて痛がりながら「この野郎!」とアレクがクリフの顔を引っ張って暴れる。
「ほらほら。クリフ、やめなよ」
ね? とリーゼロッテが優しく言ってみせると、クリフはこれまでのことが嘘だったように大人しくなり、吐き出すようにアレクの手を離した。
「こんの……リーゼには猫かぶりやがって……! いや、馬被り……? ともかく! いつかまじでボコボコにしてやるからな……!」
顔を突き出して睨むアレクに「アレク」とリーゼロッテが笑顔で振り返る。
「クリフにそんなことしたら、殺すよ」
こてん、と小首を傾げて言われた言葉にアレクはさあっと青ざめて固まった。まあ、冗談だけどと後から付け足され、一気に肩を脱力させる。
「クリフも! アレクのこと虐めちゃだめだよ。次はご飯抜きだからね」
ブルッ、首を振って前を向くクリフに「じゃあ、仲直り」とリーゼロッテがクリフとアレクの背中を押した。殺す、という脅しに対して、クリフの飯抜きという扱いの差にアレクは少々不満げに眉を顰める。
「ほら。こんなくだらない喧嘩でいちいちいちいち時間取ってられないの。喧嘩するのはいいけどいつまでも足引っ張るようなことしないでくれる?」
早くしなよ、とリーゼロッテが口角に対して全く笑いのない灰目で見つめる。実はちょっとイラついていたのだろうか。こいつ、たまに毒吐くよなとアレクが密かに思いながらクリフと向き合う。そうしてから目を合わせずに互いの手と前足を合わせて振った。
よし! 解決! と背中をバンバン叩き、リーゼロッテは前を歩く。お互い大変だな、とアレクとクリフは目を合わせてから後を追った。
◆
「そういえば、アレク。私の事リーゼって呼ぶようになったよね」
森を抜け、曇り空の平野を歩いている際にふと、リーゼロッテが呟いた。今更だなと呟いてみれば「前はちゃんと名前で呼んでいたでしょ」と返される。
「まあな。そっちの方が呼びやすいし……必死だったんだよ」
最近は特に死にかけるような出来事が多かった。ちゃんと「リーゼ」と呼ぶようになったのはきっとあの悪魔収容施設の時だろう。助け出してからの一連を思い出し、アレクは「あっ」と足を止める。あの時は必死で流していたが、こいつと―――
「必死かあ。そういえば、バジリスクの時、私とニナ守ってくれたよね」
あれだけ噛み付くのはどうとか言っていたのに、とリーゼロッテは脳内にアレクとは全く別の記憶を流す。ニナと一緒に襲われそうになった時、後ろにいたアレクが狼に変身してバジリスクに立ち向かったのだ。あの行動のおかげでバジリスクの癖を見破れたのである。唇を抑えて止まっていたアレクの方を振り返り「ありがとう」と立ち止まった。
「あの時のアレク、かっこよかったよ」
顔全体が赤くなるのを感じ、アレクは口を腕で隠しながら目を逸らした。明らかに狼狽し「お、おう。当然だ」と誤魔化すようにすましてみせる。ドッドッドと鼓動が落ち着きなく、体が熱い。その様子を白けた目でクリフが見つめた。
「でも、調子に乗っちゃだめだから……ってなんか、顔赤くない? もしかしてまだ熱ある?」
「い、いや。ない! 全然ない!」
訝しげにアレクの方を見つめて距離を詰めるリーゼロッテにふらつきながら後退する。どれ、と言った様子で手を伸ばし、リーゼロッテが自分のと比べながらアレクの額に手を置いた。
「んー、やっぱ熱いよ? 無理しなくても……」
「いや! 大丈夫だって!!」
顔が近いと肩を強く押し出され、リーゼロッテが「心配してるのに」と不機嫌に眉を顰蹙させる。このガキは、と一周まわって腹立たしくなりながら「そ、それより、これからどうするんだ?」と話題を変えた。
「悪魔がどうなるかは前ので思い知っただろ? また同じようなことをして悪魔を追うか?」
記憶の欠片に触れるようなことを言ってもリーゼロッテはただ考えるばかりだ。覚えていないようで良かった、とアレクが安堵の息を吐く。それについてなんだけど、と口を開き、リーゼロッテは真剣な表情でアレクを見上げた。その際に、アレクの斜め背後に立ち上った赤煙が視界に入り、首を傾げる。
「赤だ」
「は? なに? 俺、まだ赤いのか?」
「違くて。あれ、緊急信号だよ。アカヤケノキで作ったやつ。焼くと赤い煙が出るから、常備して怪我した時とかにああやって周囲に助けを求めるの。こういう時は助けに行かないとだって父さんが」
急いで向かう為にクリフに跨る。無理やり手を引かれ、モヤモヤしたままアレクも乗り込んだ。
「急ごう。怪我してるのかも」
となると近くに大型の化け物がいるのかもしれない。念の為、いつでも戦えるよう心構えしなくてはと走らせた。
「ひでぇ臭い」
「アカヤケノキは大量の微生物と共存して育つ。だからこの臭いも赤い煙も、その生物のせいなんだよ」
おかげで近くに動物が寄ってこなくなると、クリフを走らせながら説明した。ポツポツと雨が降ってくる。早く見つけないと煙が消えてしまうと赤頭巾を被り、水を飛び散らせながら急斜面を滑り降りた。
「はあ……どこだ……」
目元にまで垂れてくる水滴を拭い、煙の元を探す。クリフも苦手なのか少し呻いているのを「ごめんね」と撫でて落ち着かせた。
「見つけた!」
大きな木が切り倒され、開けている場所へと辿り着く。どうやら開墾しようとして放置されているようで、所々に建物を組み立てようとしたあとや、ランプなどの人工物があった。その中に、アカヤケノキが煙を出して落ちているのを発見する。けれども近くに人がいる様子がない。
「何処に……」
クリフに乗りながら辺りを見回している時だった。カチリ、何かを踏みつける音がし、途端に強烈な光が視界を覆う。咄嗟にクリフが前足を上げ、それと同時に爆発し、背中に乗っていた二人は地面に叩きつけられた。泥の中を転げ、なんとか止まる。
「うう……」
赤頭巾が取れ、濡れてぐちゃぐちゃになった髪のまま激しく咳き込んだ。うつ伏せになりながらゆっくりと顔を上げる。そうして、目に映った光景にリーゼロッテは息を乱した。
「えっ……」
自分の手の甲に飛び散る赤黒い肉片。それは辺りにも散在し、辿るようにして目線を上げていくと、その中央に見慣れた栗毛が転がっているのを見つけた。
「ク、リフ……?」
何かの間違いだ、脳は瞬時にそう訴えた。下半身は破裂したような状態で内臓と骨がむき出しになり、いつか見た大熊の死体を彷彿させた。信じたくないと首を振り「クリフ!」と叫んでその体に近寄る。泣き叫ぶリーゼロッテの背後では、同じようにアレクが目を見開いたまま絶句していた。あの時クリフが前足を上げて振り落としていなかったら、自分たちもクリフのような姿になっていただろう。
「う、うそ……嘘だ……クリフ! クリフ!」
倒れたクリフにしがみつき、何度も揺さぶって声をかける。ぐったりとしたクリフは既に呻くこともままならなくなっていた。何が起きたのか全然理解出来ていない。雨の音が煩く耳の奥に張り付く。
ヒュン、遠くから無慈悲に火薬筒の矢が撃ち込まれる。まさかあのアカヤケノキは罠だったのか? 突然のことに未だ頭が追いついていないものの、その音にハッとし、反射的にアレクは矢から守るようにリーゼロッテを押し倒して地面に伏せた。
ドォン! 爆発に近い音が空気を揺らし、地面を震わせる。泥となった土の破片が降り注ぎ、呻いた。自分たちを狙ってくる奴らと言ったらギルドハンターぐらいしか思いつかない。何が起こったんだ? 混乱している最中、クリフの黒い目と目が合う。
「ヒヒン……」
かつてないほど力のない声だった。その黒い目に自分の姿を映し、アレクは全てを悟る。瞬時に狼に変身し、クリフにしがみついてぶつぶつと呟くリーゼロッテを軽く咥えると、半ば引きずるようにしてその場から駆け出した。やだ! クリフ! と暴れるリーゼロッテに構わず走り、開墾地の出口を目指す。
「ちっ! 逃がすかよ!」
その声と共に飛び出し、こちらに向けてクロスボウを構える人物にリーゼロッテは更に瞼を押し上げた。何度も見たその顔。何度も恨んだその顔。何度も殺したいと願ったあの顔。
「グレッェェグゥゥゥ!!」
その怒号はグレッグが放った矢の爆破音によってかき消された。
◆
「あーあ。逃げられちゃったね」
逃げていく二人を悔しそうに見つめるグレッグに声が投げかけられる。振り向き、不機嫌そうに「狼に化ける人間がいるなんて聞いてねえ」とグレッグは返した。
「馬を排除すればこっちのものだと思ってたのに。あんた、知ってたんだろ」
「いや、全く」
「嘘つけ! 人が狼に化けるなんて能力、絶対あんたの血縁者か何かだろ!」
見上げる程の切り株の上で横になる黒髪に怒号を浴びせた。黒髪はふわあと欠伸をしてから「知らないって言ってるじゃないか。責任転嫁なんて見苦しいね」と飛び降り、身軽に着地する。
スラリと伸びた長身は百八十ほどもあり、漆黒を思わせる前髪の間からは月のような金色の双眸が見えた。見た目からして二十代の若者のように思える。
「全く、女王もあの紅血の騎士くんも酷い人だよ。わざわざこんな面倒なこと僕に任せてさ。悪魔狩りだの、兵の強化だの勝手にやってくれればいいのに。僕、一応、魔族なんだけど?」
フラフラと左右に揺れながら、クリフの死体の前でピタリと足を止める。そうしてから徐々に自身の影を伸ばしていき、大きな獣の姿に変えた。毛深いそれは爪を生やし、牙を生やし、少し顔を上げて首を振る。そうしてからニンマリと狼の顔で笑ってみせ、地面に転がっている馬の死体を貪り食った。
ブチブチと肉の繊維を引き伸ばし、噛みちぎる様子を背後から見ていたグレッグは思わず顔を歪める。雨で泥まみれになっているというのに食べるなんて、食い意地があるにも程がある。こいつが魔族の月狼―――ジークフリート・ルーナノクスなのか。
「ふう~久々の飯だ……やっぱ、馬はあんま美味くないね。肉が固い」
「久々というか、あんた来る途中でも食べていたじゃねえか。岩みたいなクマをよ。そんな泥まみれの死体を食べるなんてどうかしてる」
「それは人間の感覚だろ? 泥まみれになろうが腐っていようが、食事は食事なんだよ。まあ、やっぱり、食べるなら人型だね。魔力持ってるし」
ペロリと口周りについた血を舐めとる月狼に、グレッグは慌てて「お、俺は美味しくないぞ」と手を前に出して後退した。
「ああ、大丈夫。人間の男は不味くて食えたものじゃない。食べるなら女が一番だ」
「そ、そうだな……」
ははっ、と乾いた笑いで返す。想像したよりも見た目と中身が青年のような奴だ。全くヒヤヒヤさせやがって。こんなふざけたやつにペコペコしている自分がバカみたいだ。骨を噛み砕く音を聞きながら、夢中で食べている月狼をじっと見つめる。
魔族といえば一体分で魔物数十体に相当する討伐金が得られるはずだ。今持っている武器は最新型のクロスボウに火薬筒の矢。対して今のやつは隙だらけ。これは、いけるのではないかと手が震える。無駄だよ、と背中を向けたまま月狼が返した。
「その武器じゃ僕は殺せない。試してみる?」
構わないよと、首を傾げて笑ってみせる。血の混じった唾液が口から垂れてて不気味だ。グレッグは構えたまま「あ……」と声を失う。隙だらけのはずなのに、この足が竦むような感覚はなんなんだ。やらないの? と待っていた月狼が前に歩き出す。
「なんだ。元、名のあるギルドハンターだって聞いてたから期待してたのに」
そう言って人間の姿に戻りながらふらふらと歩く。臆病な奴、横切ると同時に呟き、足腰が震えていたグレッグはその場で尻をついた。こいつには勝てない。早鐘のように自身の胸を打つ鼓動を感じながら、グレッグは思った。
「さあて。あの二人を追うか」
やる気なさそうに間延びした言葉を放ち、月狼は頭の後ろで腕を組んでふらふらと歩いた。
「はあ……」
参ったな、と肩を落とした。印のついた木まで歩いていき、刺さっている矢を見つめる。十三本中、外し五本、外側六本、中間二本、真ん中ゼロ。かれこれ五回ほどこれを繰り返しているが、ど真ん中を貫けたのは一本もない。突き刺さった矢を三本程引き抜き、幹に頭を寄りかからせた。
前の自分ならもっと命中率があったのに。怪我のせいとはいえショックが大きかった。強力な火薬筒矢が手に入っても、これでは宝の持ち腐れである。使えこなせたらもっと……あの、バジリスク戦でマシに戦えたはずだ。そしたらルシールさんも、と眉間に力を入れて、木を殴り付ける。
「ふぅー……だめだ。だめだだめだ」
腹を立てる暇があるなら手を動かせ。少しでも前の感覚を戻すんだ。木の幹に手を付き、再び深く息をついてから、残りの矢を引き抜いていく。
ふと、右の視界からがさりと茂みの揺れる音がした。咄嗟に向いてみると、失った右目の死角外から何かが飛び出てくる。
「なっ……」
矢を抜こうと力んでいたせいで離れるのが遅れた。まずいと身構えると、真横から現れたクリフが突進して影を突き飛ばす。
「クリフ……!」
それを見送ってからハッとし、剣鉈を引き抜いて影を確認した。地面に倒れ、じたばたしながら起き上がるのは走鳥類のクルックーだ。二本足で背が高く、丸い体は茶色の羽毛に覆われている。別種にいる人喰い妖鳥と呼ばれるテイルクルックーならまだしも、普通のクルックーは温厚な性格のはずなのに。そこに違和感があって、威嚇するクリフを宥めながらじっと周囲を見回した。
「あ……」
弓の練習に使っていた木の影に、何かが見えた。真っ青でツルツルした楕円状の卵。ひと目でクルックーの巣だと気づき「そっか。卵があったんだね」と剣鉈を下した。恐らく、卵を守ろうとして襲いかかってきたのだろう。
「ごめん。気づかなかったんだ。貴方の卵には何もしないから」
剣鉈をしまい、木の幹に刺さった最後の矢を素早く引き抜いた。じっと目を逸らさず後退し、ある程度距離を置いてから「クリフ、行こう」と手綱を引く。離れていくリーゼロッテとクリフにクルックーは何もせず、自身の巣に戻っていった。
「ふう。急に襲ってくるからびっくりしちゃった……ちゃんと場所は考えないとね」
森には沢山の住民がいる。その一匹一匹には必ず守るべき家族がいるのだ。ちゃんとそれを理解した上で敬意ある行動を取らなくてはならない。どれだけ綺麗事を並べても、生きるというのは他者を食らうことだ。この世は食うか食われるか。命を奪う者、奪われる者の二種類しかいない。
毎回森の住民の「生きたい」意志を尊重できるわけじゃない為、狩った後にする儀式はせめてもの贖罪だ。それと、感謝。どれだけ力を身につけても、我が物顔で森を独占するな。そう、父からの教えを思い出す。
「さっきは助けてくれてありがとう、クリフ」
また怪我するところだったと笑い、歩きながらクリフの首辺りを軽く叩いた。しっぽを勢いよく振り、擦り寄ってくるクリフに「いい子だね」と頬を撫でる。
「……あ。ということはもしかして、キャンプにアレク、残してきたまま?」
当然とばかりにぶるりと鳴くクリフに「本当、アレクには厳しいね」と鼻で息をつく。あの施設のことで、少しは仲良くなったと思っていたのに。まあ、彼は狼でもあるし、大抵の動物は寄り付かないはずだ。そう思いつつ心配になり「早く戻ってあげようか」と早足でキャンプに向かう。
「あっ」
道中でばったりと鉢合わせた黒髪に、驚きの声を揃える。目の前からやってきた青年はこちらを見るなり「おい!」と怒鳴りながらズカズカと距離を詰め寄った。
「お前どこに行ってたんだよ! 俺を置いて!」
「ご、ごめん。ぐっすり寝てるからちょっと弓の練習に……クリフが待っててくれるはずだったんだけど」
何故かついて来ちゃってと、苦笑いで返した。隣にいるクリフは知らん顔を決め込むかのように首を高くしてそっぽを向いている。
「あ、アレクはなんでこんなところに?」
「起きたら誰もいねえから匂いを辿ったんだよ!! てっきり置いてかれたのかと……」
はあ、と心底安心するかのように長く息をついて脱力するアレクに「そんなことするわけないでしょ」とリーゼロッテが呆れる。
「うるせえ! こっちは本気で焦ったんだよ!」
その場で蹲り、涙目で見上げるアレクを見て、罪悪感より笑いが込み上げてしまう。ふっ、と少し吹き出して「ごめんね」と謝るリーゼロッテに「笑ってんな!」とアレクが声を張り上げた。
「だって、あまりにも必死なんだもん」
睨みつけられ、笑いを落ち着かせるように一呼吸入れてから「ほら、クリフも謝って」とリーゼロッテが背中を撫でる。高圧的に首を高く持ち上げた状態で見下ろしながら、クリフは嫌そうに頭を下げた。と見せかけて、ごちん、とアレクの頭に頭突きする。
「こいつ~!!」
この駄馬が! と頭を抑えてアレクが凄むと、その言葉に勘で嫌なことを言われたと察知し、クリフも乗り出すようにして睨んだ。
「あはは、本当に仲がいいね」
睨み合う二人にリーゼロッテが笑ってみせる。直後「どこがだよ!」とアレクの声に重なってクリフがこちらを見て呻いた。
「だってクリフがこんなに突っかかる人、初めて見たもん」
「……それは単に嫌っているからだろ」
俺も気に食わねえ、と親指で指して呟くアレクの手にクリフはガブリと噛み付いた。大口を開いて痛がりながら「この野郎!」とアレクがクリフの顔を引っ張って暴れる。
「ほらほら。クリフ、やめなよ」
ね? とリーゼロッテが優しく言ってみせると、クリフはこれまでのことが嘘だったように大人しくなり、吐き出すようにアレクの手を離した。
「こんの……リーゼには猫かぶりやがって……! いや、馬被り……? ともかく! いつかまじでボコボコにしてやるからな……!」
顔を突き出して睨むアレクに「アレク」とリーゼロッテが笑顔で振り返る。
「クリフにそんなことしたら、殺すよ」
こてん、と小首を傾げて言われた言葉にアレクはさあっと青ざめて固まった。まあ、冗談だけどと後から付け足され、一気に肩を脱力させる。
「クリフも! アレクのこと虐めちゃだめだよ。次はご飯抜きだからね」
ブルッ、首を振って前を向くクリフに「じゃあ、仲直り」とリーゼロッテがクリフとアレクの背中を押した。殺す、という脅しに対して、クリフの飯抜きという扱いの差にアレクは少々不満げに眉を顰める。
「ほら。こんなくだらない喧嘩でいちいちいちいち時間取ってられないの。喧嘩するのはいいけどいつまでも足引っ張るようなことしないでくれる?」
早くしなよ、とリーゼロッテが口角に対して全く笑いのない灰目で見つめる。実はちょっとイラついていたのだろうか。こいつ、たまに毒吐くよなとアレクが密かに思いながらクリフと向き合う。そうしてから目を合わせずに互いの手と前足を合わせて振った。
よし! 解決! と背中をバンバン叩き、リーゼロッテは前を歩く。お互い大変だな、とアレクとクリフは目を合わせてから後を追った。
◆
「そういえば、アレク。私の事リーゼって呼ぶようになったよね」
森を抜け、曇り空の平野を歩いている際にふと、リーゼロッテが呟いた。今更だなと呟いてみれば「前はちゃんと名前で呼んでいたでしょ」と返される。
「まあな。そっちの方が呼びやすいし……必死だったんだよ」
最近は特に死にかけるような出来事が多かった。ちゃんと「リーゼ」と呼ぶようになったのはきっとあの悪魔収容施設の時だろう。助け出してからの一連を思い出し、アレクは「あっ」と足を止める。あの時は必死で流していたが、こいつと―――
「必死かあ。そういえば、バジリスクの時、私とニナ守ってくれたよね」
あれだけ噛み付くのはどうとか言っていたのに、とリーゼロッテは脳内にアレクとは全く別の記憶を流す。ニナと一緒に襲われそうになった時、後ろにいたアレクが狼に変身してバジリスクに立ち向かったのだ。あの行動のおかげでバジリスクの癖を見破れたのである。唇を抑えて止まっていたアレクの方を振り返り「ありがとう」と立ち止まった。
「あの時のアレク、かっこよかったよ」
顔全体が赤くなるのを感じ、アレクは口を腕で隠しながら目を逸らした。明らかに狼狽し「お、おう。当然だ」と誤魔化すようにすましてみせる。ドッドッドと鼓動が落ち着きなく、体が熱い。その様子を白けた目でクリフが見つめた。
「でも、調子に乗っちゃだめだから……ってなんか、顔赤くない? もしかしてまだ熱ある?」
「い、いや。ない! 全然ない!」
訝しげにアレクの方を見つめて距離を詰めるリーゼロッテにふらつきながら後退する。どれ、と言った様子で手を伸ばし、リーゼロッテが自分のと比べながらアレクの額に手を置いた。
「んー、やっぱ熱いよ? 無理しなくても……」
「いや! 大丈夫だって!!」
顔が近いと肩を強く押し出され、リーゼロッテが「心配してるのに」と不機嫌に眉を顰蹙させる。このガキは、と一周まわって腹立たしくなりながら「そ、それより、これからどうするんだ?」と話題を変えた。
「悪魔がどうなるかは前ので思い知っただろ? また同じようなことをして悪魔を追うか?」
記憶の欠片に触れるようなことを言ってもリーゼロッテはただ考えるばかりだ。覚えていないようで良かった、とアレクが安堵の息を吐く。それについてなんだけど、と口を開き、リーゼロッテは真剣な表情でアレクを見上げた。その際に、アレクの斜め背後に立ち上った赤煙が視界に入り、首を傾げる。
「赤だ」
「は? なに? 俺、まだ赤いのか?」
「違くて。あれ、緊急信号だよ。アカヤケノキで作ったやつ。焼くと赤い煙が出るから、常備して怪我した時とかにああやって周囲に助けを求めるの。こういう時は助けに行かないとだって父さんが」
急いで向かう為にクリフに跨る。無理やり手を引かれ、モヤモヤしたままアレクも乗り込んだ。
「急ごう。怪我してるのかも」
となると近くに大型の化け物がいるのかもしれない。念の為、いつでも戦えるよう心構えしなくてはと走らせた。
「ひでぇ臭い」
「アカヤケノキは大量の微生物と共存して育つ。だからこの臭いも赤い煙も、その生物のせいなんだよ」
おかげで近くに動物が寄ってこなくなると、クリフを走らせながら説明した。ポツポツと雨が降ってくる。早く見つけないと煙が消えてしまうと赤頭巾を被り、水を飛び散らせながら急斜面を滑り降りた。
「はあ……どこだ……」
目元にまで垂れてくる水滴を拭い、煙の元を探す。クリフも苦手なのか少し呻いているのを「ごめんね」と撫でて落ち着かせた。
「見つけた!」
大きな木が切り倒され、開けている場所へと辿り着く。どうやら開墾しようとして放置されているようで、所々に建物を組み立てようとしたあとや、ランプなどの人工物があった。その中に、アカヤケノキが煙を出して落ちているのを発見する。けれども近くに人がいる様子がない。
「何処に……」
クリフに乗りながら辺りを見回している時だった。カチリ、何かを踏みつける音がし、途端に強烈な光が視界を覆う。咄嗟にクリフが前足を上げ、それと同時に爆発し、背中に乗っていた二人は地面に叩きつけられた。泥の中を転げ、なんとか止まる。
「うう……」
赤頭巾が取れ、濡れてぐちゃぐちゃになった髪のまま激しく咳き込んだ。うつ伏せになりながらゆっくりと顔を上げる。そうして、目に映った光景にリーゼロッテは息を乱した。
「えっ……」
自分の手の甲に飛び散る赤黒い肉片。それは辺りにも散在し、辿るようにして目線を上げていくと、その中央に見慣れた栗毛が転がっているのを見つけた。
「ク、リフ……?」
何かの間違いだ、脳は瞬時にそう訴えた。下半身は破裂したような状態で内臓と骨がむき出しになり、いつか見た大熊の死体を彷彿させた。信じたくないと首を振り「クリフ!」と叫んでその体に近寄る。泣き叫ぶリーゼロッテの背後では、同じようにアレクが目を見開いたまま絶句していた。あの時クリフが前足を上げて振り落としていなかったら、自分たちもクリフのような姿になっていただろう。
「う、うそ……嘘だ……クリフ! クリフ!」
倒れたクリフにしがみつき、何度も揺さぶって声をかける。ぐったりとしたクリフは既に呻くこともままならなくなっていた。何が起きたのか全然理解出来ていない。雨の音が煩く耳の奥に張り付く。
ヒュン、遠くから無慈悲に火薬筒の矢が撃ち込まれる。まさかあのアカヤケノキは罠だったのか? 突然のことに未だ頭が追いついていないものの、その音にハッとし、反射的にアレクは矢から守るようにリーゼロッテを押し倒して地面に伏せた。
ドォン! 爆発に近い音が空気を揺らし、地面を震わせる。泥となった土の破片が降り注ぎ、呻いた。自分たちを狙ってくる奴らと言ったらギルドハンターぐらいしか思いつかない。何が起こったんだ? 混乱している最中、クリフの黒い目と目が合う。
「ヒヒン……」
かつてないほど力のない声だった。その黒い目に自分の姿を映し、アレクは全てを悟る。瞬時に狼に変身し、クリフにしがみついてぶつぶつと呟くリーゼロッテを軽く咥えると、半ば引きずるようにしてその場から駆け出した。やだ! クリフ! と暴れるリーゼロッテに構わず走り、開墾地の出口を目指す。
「ちっ! 逃がすかよ!」
その声と共に飛び出し、こちらに向けてクロスボウを構える人物にリーゼロッテは更に瞼を押し上げた。何度も見たその顔。何度も恨んだその顔。何度も殺したいと願ったあの顔。
「グレッェェグゥゥゥ!!」
その怒号はグレッグが放った矢の爆破音によってかき消された。
◆
「あーあ。逃げられちゃったね」
逃げていく二人を悔しそうに見つめるグレッグに声が投げかけられる。振り向き、不機嫌そうに「狼に化ける人間がいるなんて聞いてねえ」とグレッグは返した。
「馬を排除すればこっちのものだと思ってたのに。あんた、知ってたんだろ」
「いや、全く」
「嘘つけ! 人が狼に化けるなんて能力、絶対あんたの血縁者か何かだろ!」
見上げる程の切り株の上で横になる黒髪に怒号を浴びせた。黒髪はふわあと欠伸をしてから「知らないって言ってるじゃないか。責任転嫁なんて見苦しいね」と飛び降り、身軽に着地する。
スラリと伸びた長身は百八十ほどもあり、漆黒を思わせる前髪の間からは月のような金色の双眸が見えた。見た目からして二十代の若者のように思える。
「全く、女王もあの紅血の騎士くんも酷い人だよ。わざわざこんな面倒なこと僕に任せてさ。悪魔狩りだの、兵の強化だの勝手にやってくれればいいのに。僕、一応、魔族なんだけど?」
フラフラと左右に揺れながら、クリフの死体の前でピタリと足を止める。そうしてから徐々に自身の影を伸ばしていき、大きな獣の姿に変えた。毛深いそれは爪を生やし、牙を生やし、少し顔を上げて首を振る。そうしてからニンマリと狼の顔で笑ってみせ、地面に転がっている馬の死体を貪り食った。
ブチブチと肉の繊維を引き伸ばし、噛みちぎる様子を背後から見ていたグレッグは思わず顔を歪める。雨で泥まみれになっているというのに食べるなんて、食い意地があるにも程がある。こいつが魔族の月狼―――ジークフリート・ルーナノクスなのか。
「ふう~久々の飯だ……やっぱ、馬はあんま美味くないね。肉が固い」
「久々というか、あんた来る途中でも食べていたじゃねえか。岩みたいなクマをよ。そんな泥まみれの死体を食べるなんてどうかしてる」
「それは人間の感覚だろ? 泥まみれになろうが腐っていようが、食事は食事なんだよ。まあ、やっぱり、食べるなら人型だね。魔力持ってるし」
ペロリと口周りについた血を舐めとる月狼に、グレッグは慌てて「お、俺は美味しくないぞ」と手を前に出して後退した。
「ああ、大丈夫。人間の男は不味くて食えたものじゃない。食べるなら女が一番だ」
「そ、そうだな……」
ははっ、と乾いた笑いで返す。想像したよりも見た目と中身が青年のような奴だ。全くヒヤヒヤさせやがって。こんなふざけたやつにペコペコしている自分がバカみたいだ。骨を噛み砕く音を聞きながら、夢中で食べている月狼をじっと見つめる。
魔族といえば一体分で魔物数十体に相当する討伐金が得られるはずだ。今持っている武器は最新型のクロスボウに火薬筒の矢。対して今のやつは隙だらけ。これは、いけるのではないかと手が震える。無駄だよ、と背中を向けたまま月狼が返した。
「その武器じゃ僕は殺せない。試してみる?」
構わないよと、首を傾げて笑ってみせる。血の混じった唾液が口から垂れてて不気味だ。グレッグは構えたまま「あ……」と声を失う。隙だらけのはずなのに、この足が竦むような感覚はなんなんだ。やらないの? と待っていた月狼が前に歩き出す。
「なんだ。元、名のあるギルドハンターだって聞いてたから期待してたのに」
そう言って人間の姿に戻りながらふらふらと歩く。臆病な奴、横切ると同時に呟き、足腰が震えていたグレッグはその場で尻をついた。こいつには勝てない。早鐘のように自身の胸を打つ鼓動を感じながら、グレッグは思った。
「さあて。あの二人を追うか」
やる気なさそうに間延びした言葉を放ち、月狼は頭の後ろで腕を組んでふらふらと歩いた。
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