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竜人嫌いの魔族、竜人の子供を育てる
28.二人のおかげ
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空が暗くなるにつれ、ミール王国の城下町はさらに賑やかさを増していった。
ランタンに火が灯り、街中がキラキラと煌きだす。
ルーフとシロははぐれないように手を繋ぎ、ルカの酒場に向かった。
酒場の前に着くと店の中から陽気な音楽と笑い声が聞こえる。ドアを開けるとカラン、カランとベルの音と共に店員の元気な挨拶に出迎えられた。
「シロ!それにルーフもいらっしゃい!!」
両手にビールジョッキを持ったルカが嬉しそうにやってきた。
「やあ、ルカ。お店、大盛況だね!」
「まあな。でもこれ運んだら俺の仕事は終わりだから出掛けよう!ルーフは飲んでくだろ?奥のカウンターが空いてるよ!案内するからついて来て」
「おう。じゃあな、シロ。楽しんで来いよ」
そう言ってルーフは手を離し、シロの頭をポンっとなでた。
「はい、ありがとうございます…」
シロはひとりぼっちになった片手を握りしめ、ルーフを見送った。
「手、繋いできたのね。仲良しねー」
「うわっ、アリスか。驚かせないでよ」
急にシロの耳元でアリスが話しかけてきた。
「ひどい!私、シロにちゃんと挨拶したのよ。シロはルーフを見つめてて全然気づいてくれなかったけど」
アリスは腕を組んで口を尖らせた。
「え…、そうだったんだ。ごめん」
「ふふ、恋は盲目ってやつね」
「もー、あんまりからかわないでよ。アリスが変なことばかり言うから、僕、ルーフさんのこと変に意識しちゃって困ってるんだよ」
シロが困ったようにアリスをみると「へぇ、何その話。もっと聞きたい」と目を輝かせた。
「おーい、二人とも、お待たせ!出掛けようぜ!!」
店の手伝いを終わらせたルカが合流し、3人は夏祭りに向かった。
3人はランタンの灯る城下町を見て回りながら、射的や輪投げ、宝探しなど気が済むまで遊んだ。その後はチョコバナナやリンゴ飴など祭りならではの食べ物をたくさん買い、人気の少ない石階段に座って食べることにした。
「見て!ルカが射的で取ってくれたぬいぐるみ、すごくふわふわで可愛いのよ!」
アリスは嬉しそうにオレンジ色のリスのぬいぐるみを抱きしめた。
ルカは「本当はぬいぐるみの隣りにあったカードゲームを狙ったんだけどなあ」と笑ってリンゴ飴をかじっている。
そんな二人のやり取りを見ているだけで、シロは温かい気持ちになった。
(二人と出会えて良かったな…)
「カードゲームは残念だったけど、ぬいぐるみに当たって良かったね。僕、お祭りなんて初めてだったけど、こんなに楽しい日なんだね。二人が誘ってくれなきゃ知らないままだったよ。城下町もたくさん案内してもらったし、美味しい物もいっぱい食べた。二人のおかけですごく楽しかったよ。僕、すごく幸せ。本当にありがとう」
シロがニコニコしながら急にお礼を言い出すので、ルカとアリスは顔を見合わせ、吹き出した。
「あははっ!やめろよ、シロっ。照れるだろ!俺たちだってお前と一緒に遊べてすごい楽しいよ…って何言わせるんだよ。俺、本当に恥ずかしくなってきた」
ルカは赤くなった顔を手でパタパタと仰ぎながら笑った。
「そうよ、友達なんだから普通の事でしょ!それに夏祭りが終わったら今度は収穫祭や学園祭もあるのよ。きっとどれも楽しいわ。それに…」
アリスは悪戯っぽい笑みでシロを見た。
「シロがそんなに楽しいと思えるのは、私たちだけのおかげじゃないでしょ」
「え?」
今度はシロとルカが顔を見合わせ、不思議そうな顔をした。
「大好きなルーフさんとの夏休みが充実しているからすごく幸せだと思えるんじゃない?」
「ア、アリス!またその話題?もう、やめてよー」
シロは恥ずかしくなり、下を向いて両手で顔を隠した。
「あー、なるほどね。そういえば酒場に来た時なんてルーフと手を繋いでたもんなぁ」
ルカもニヤニヤしながらシロの顔を覗く。
「ルカまで!あれは、はぐれないようにって繋いでただけで…」
ドン、ドン、ドンー…
突然大砲のような音が鳴り、シロはびっくりして顔を上げた。
「あ、花火の始まる合図だ!ここからじゃよく見えないからうちの酒場に戻ろう。屋上から見る花火は絶景なんだぜ」
「花火?」
「シロ、花火も初めて?火薬で作った大きな花よ。夜空に打ち上がるとすごく綺麗なの。好きな人と見るのが定番なのよ。ルーフを誘って一緒に見なきゃ!」
「もうアリスってば!!」
ルカとアリスが笑いながら駆け出したので、シロも二人の後を追いかけた。
ランタンに火が灯り、街中がキラキラと煌きだす。
ルーフとシロははぐれないように手を繋ぎ、ルカの酒場に向かった。
酒場の前に着くと店の中から陽気な音楽と笑い声が聞こえる。ドアを開けるとカラン、カランとベルの音と共に店員の元気な挨拶に出迎えられた。
「シロ!それにルーフもいらっしゃい!!」
両手にビールジョッキを持ったルカが嬉しそうにやってきた。
「やあ、ルカ。お店、大盛況だね!」
「まあな。でもこれ運んだら俺の仕事は終わりだから出掛けよう!ルーフは飲んでくだろ?奥のカウンターが空いてるよ!案内するからついて来て」
「おう。じゃあな、シロ。楽しんで来いよ」
そう言ってルーフは手を離し、シロの頭をポンっとなでた。
「はい、ありがとうございます…」
シロはひとりぼっちになった片手を握りしめ、ルーフを見送った。
「手、繋いできたのね。仲良しねー」
「うわっ、アリスか。驚かせないでよ」
急にシロの耳元でアリスが話しかけてきた。
「ひどい!私、シロにちゃんと挨拶したのよ。シロはルーフを見つめてて全然気づいてくれなかったけど」
アリスは腕を組んで口を尖らせた。
「え…、そうだったんだ。ごめん」
「ふふ、恋は盲目ってやつね」
「もー、あんまりからかわないでよ。アリスが変なことばかり言うから、僕、ルーフさんのこと変に意識しちゃって困ってるんだよ」
シロが困ったようにアリスをみると「へぇ、何その話。もっと聞きたい」と目を輝かせた。
「おーい、二人とも、お待たせ!出掛けようぜ!!」
店の手伝いを終わらせたルカが合流し、3人は夏祭りに向かった。
3人はランタンの灯る城下町を見て回りながら、射的や輪投げ、宝探しなど気が済むまで遊んだ。その後はチョコバナナやリンゴ飴など祭りならではの食べ物をたくさん買い、人気の少ない石階段に座って食べることにした。
「見て!ルカが射的で取ってくれたぬいぐるみ、すごくふわふわで可愛いのよ!」
アリスは嬉しそうにオレンジ色のリスのぬいぐるみを抱きしめた。
ルカは「本当はぬいぐるみの隣りにあったカードゲームを狙ったんだけどなあ」と笑ってリンゴ飴をかじっている。
そんな二人のやり取りを見ているだけで、シロは温かい気持ちになった。
(二人と出会えて良かったな…)
「カードゲームは残念だったけど、ぬいぐるみに当たって良かったね。僕、お祭りなんて初めてだったけど、こんなに楽しい日なんだね。二人が誘ってくれなきゃ知らないままだったよ。城下町もたくさん案内してもらったし、美味しい物もいっぱい食べた。二人のおかけですごく楽しかったよ。僕、すごく幸せ。本当にありがとう」
シロがニコニコしながら急にお礼を言い出すので、ルカとアリスは顔を見合わせ、吹き出した。
「あははっ!やめろよ、シロっ。照れるだろ!俺たちだってお前と一緒に遊べてすごい楽しいよ…って何言わせるんだよ。俺、本当に恥ずかしくなってきた」
ルカは赤くなった顔を手でパタパタと仰ぎながら笑った。
「そうよ、友達なんだから普通の事でしょ!それに夏祭りが終わったら今度は収穫祭や学園祭もあるのよ。きっとどれも楽しいわ。それに…」
アリスは悪戯っぽい笑みでシロを見た。
「シロがそんなに楽しいと思えるのは、私たちだけのおかげじゃないでしょ」
「え?」
今度はシロとルカが顔を見合わせ、不思議そうな顔をした。
「大好きなルーフさんとの夏休みが充実しているからすごく幸せだと思えるんじゃない?」
「ア、アリス!またその話題?もう、やめてよー」
シロは恥ずかしくなり、下を向いて両手で顔を隠した。
「あー、なるほどね。そういえば酒場に来た時なんてルーフと手を繋いでたもんなぁ」
ルカもニヤニヤしながらシロの顔を覗く。
「ルカまで!あれは、はぐれないようにって繋いでただけで…」
ドン、ドン、ドンー…
突然大砲のような音が鳴り、シロはびっくりして顔を上げた。
「あ、花火の始まる合図だ!ここからじゃよく見えないからうちの酒場に戻ろう。屋上から見る花火は絶景なんだぜ」
「花火?」
「シロ、花火も初めて?火薬で作った大きな花よ。夜空に打ち上がるとすごく綺麗なの。好きな人と見るのが定番なのよ。ルーフを誘って一緒に見なきゃ!」
「もうアリスってば!!」
ルカとアリスが笑いながら駆け出したので、シロも二人の後を追いかけた。
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