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4 エリック様との婚約解消は絶対なのです!

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 明日にでも、と仰った通り、エリック様は夜会の翌日、なんと先触れも無く一人で我が家に来られました。

 お父様には昨日の夜会での事はお伝えしておりましたのでエリック様の訪問自体には驚いてはおられませんでしたが、まさか先触れがないなんて。しかも、婚約という家同士の話し合いに一人で来られるとは、なんて不躾で非常識なのでしょう。
 
 しかも、言うに事欠いて。

「マリサ嬢との婚約を破棄させて頂く!」

 同席しなくても良い、と言うお父様に甘え、隣の部屋から事の次第を窺っていた私は大きな溜息しか出ませんわ。
 それはお父様も同じだった様ですわね。こちらの部屋にまでお父様の呆れ返った溜息が聞こえましたもの。

「破棄、とはどう言う事かね?」
「マリサ嬢は私には釣り合わない! 釣り合おうとする努力も見えない! あのような令嬢を我が伯爵家に迎え入れては、こちらの恥だ!!」
「恥、ですと?」

 お父様、ここは抑えて下さいまし!! 
 明らかに声が怒りで震えておりますわ!!

「この婚約の意味と、マリサが質素な装いでいる事の理由をエリック殿はご理解しておられるのか?」
「マリサ嬢が私と結婚したいとゴネたのだろう? 確かにデシャネル子爵家の融資と業務提携は魅惑的だったが、それをチラつかせて娘の我儘を通して望まぬ政略結婚をさせられる私の身にもなって欲しい。それに、マリサ嬢のあの色気の無い装いに理由があるなら、貴殿方が正して差し上げては如何ですか? 私は理由も何も興味はありませんが、常に不愉快に思っておりましたよ」
「なるほど……君のその言い分だと、お父上にはこの婚約を破棄?したいと言う事はお伝えしておられないようだね」

 そうですわね。ちゃんとミュラトール伯爵当主で在らせられるお義父様にお話を通しておられれば、この様な発言になる訳がありませんもの。
 と言うか、とんでもなく自分に都合の良い様に解釈されていますけど、最初に婚約を結ぶ時にこの婚約の意味をご説明したはずですわよね。お忘れになられたのかしら。

「父には事後報告になるが問題ない! 次期当主の私が自分の結婚相手にマリサ嬢が相応しくないと判断したんだ! なんの問題がある!!」
「そうですか、君がそう言い張るなら、それでも良いでしょう。こちらとしても、これ以上エリック殿を家のマリサの婚約者とし続けるつもりは無いのでね。ただ、『解消』と言うなら我が家は喜んで受け入れるが『破棄』と言うのは受け入れがたい。我が家、ましてやマリサには何も非難される謂われは無い。我々はミュラトール伯爵家にもエリック殿にもきちんと礼節ある付き合いをして来たはずだ。むしろ、そちらの方が我々に無礼を働いていないかい? 先触れも無く来られた今日のようにね」
「なっ!」

 お父様! 私が言いたかった事をズバッと言って下さるなんて、素敵ですわ! お母様が「お父様ってホンワカしてらっしゃるけど、いざという時には頼りになるんですのよ」って仰ってたのも納得ですわね!
 私も、お父様みたいな優しく頼りになるお方と添い遂げたいものですわ。
 その為には、エリック様との婚約解消は絶対なのです! 

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