オナニー愛好家と肉ディルド

オナニー愛好家と元クソ野郎が恋人になるまで

３０

「もももっ、申し訳ございませんでした！！！」

　ボクサーパンツ一枚だけの古町さんがベッドの下で額を絨毯に擦り付けながらの土下座を披露している。
　この土下座を見るのも久しぶりだな～、なんて現実逃避をしていても古町さんが頭を上げる事が無いのは経験上良く分かってる。

「古町さん、土下座はやめましょ？　ね？　地べたでそんな事しちゃ汚いですから、ね？」

　出来るなら側に行って立ち上がらせたいけど、今俺はベッドの上で自分で出したものに塗れてビショビショだ。正直汚い。
 だから、古町さんに触れる訳には行かないから自分で立ち上がって欲しいんだけど。

「で、ですが……廣邊君に、と、とんでもない無体を……すすすすみませんンン！　廣邊君が途中で本気で嫌がっている事に気が付いていたのに、僕は……僕は何て事をっ！」
「大丈夫ですから！　いや、大丈夫じゃないけど……兎に角顔を上げて下さいって！」
「だ、大丈夫じゃない！？　どこか痛いですか！？　僕が勝手に結腸突いたから！？　ごめなさいごめんなさい！　負担かけない様に出来る限り解して快感漬けにしてから結腸抜きしたつもりなんですけど、ど、どこが痛いですか！？」
「痛くない！　どこも痛くないですから！！　痛くないどころか結腸滅茶苦茶気持ち良かったです。ありがとうございました！　麻薬級の気持ち良さでした。本当にありがとうございました！！　今は、まだ腹の中に古町さんが入ってる感じがする位の違和感しか無いので何の問題もありませんから！　ああ！　ベッドに登ってきちゃ駄目ですって！　俺が漏らしたので汚いんですよ！？」

　俺の大丈夫じゃない発言に顔色を変えた古町さんが土下座を止めてくれたのはいいけど、ベッドの上に登って来たうえに俺の体をペタペタ触ってくるもんだから俺の方も血の気が引く。

「だから！　俺の、お……おしっこが」
「あ、あの。廣邊君、違います。これは……あの、おしっこじゃなくて、潮です」
「え？　し、潮！？」
「そ、そうです。だから汚くありませんから、あ、あの、だ、大丈夫です。例え、おしっこだったとしても、廣邊君が出したものは汚くありませんから！」

　おいおいおい？　今、重大な単語が聞こえたぞ？　潮？　潮って、あの潮？

「俺……潮吹いてたんですか？」
「すみません……僕の勝手な予想ですけど、廣邊君は潮を吹いた事がなさそうだったので、吹ければ、あの……喜んで、貰えるかと思って……き、気持ちいい事が、お好きですし、折角ラブホテルにまで来たのなら心ゆくまで快感に溺れて頂こうと……おも、思って」

　潮吹き……それは射精後も容赦なくチンコや前立腺をイジメ続ける事で射精の比ではない程の快感を得られるという男のロマン。

　道理で滅茶苦茶気持ち良かった訳だ！！

　当然、エッチな事に好奇心旺盛な俺は潮を吹いてみたい、と色々奮闘はしていた。だけど、なかなか吹くまでには至らずで、結果として開発済みでモロ感なケツオナでナカイキやトコロテンしまくりだったんだけど……
　それが、今日だけで何度も吹けてたなんて……

「すみませんでした……嫌、でしたか？」
「嫌だなんてとんでもない！　大感激ですよ！　ありがとうございます、古町さん！！　俺、ずっと潮って吹いてみたかったんです！　自分でも色々試したんですけど、なかなか吹けなくって。流石です！　もう、俺古町さんのテクニック無しでは生きていけない！！」

　素晴らしい！　素晴らしいよ古町さん！！　結腸だけでなく潮吹きまで！　俺の念願の夢を一度に二つも、いとも簡単に叶えてくれちゃうなんて。
　説明も無しにやるから戸惑ったしヒヤヒヤしたけど許す！　そういう事ならどんどんやっちゃってぇ！　もう、好き！

　さっきまでは汚いって思ってたけど、おしっこじゃなくて潮なら、まぁ、臭いもしないし良いか。って事でガバッと目の前の古町さんに抱き付く。
　それに、結構な勢いで吹いていたから古町さんにもかかってたし、今更だよな？

　膝の上に乗り上げる様にして抱き付いた俺に古町さんはアワアワするだけで、手なんてずっと宙をかいて抱きしめ返しもしない。
　セックス中はずっと拘束かな？　と思う位抱き締めてたクセに。やっぱり古町さんは古町さんだなぁ。

「え、ええあ……い、生きて、いけないだなんて、そんな……こ、光栄です」
「俺、おしっこが漏れそうなんだとばかり思ってたから嫌だ—ってなってたけど、潮吹きの為なんだったら、全然ＯＫウエルカムですよ！　俺、古町さんの事信頼してますから、多少強引でも無理矢理でも気持ち良くしてくれるなら大歓迎です！！　これからもどんどんヤッちゃって下さい！」
「あ……あぅ……ぇ、あの、よ、喜んでいただける、なら……廣邊君が望むなら、潮吹き癖が付くまで、ご奉仕させていただき、ます」
「最高ですか」

　恐る恐るって感じで俺の背中にちょこっと触れる古町さんの手の感触に、思わず噴き出す。　
　本当にこの挙動不審な古町さんと雄み溢れる古町さんのギャップって凄い。

「あっ、あ、えっと……」
「恋人になるんですよね？　だったら遠慮せずにギュッと来てもらっていいんですよ？　俺もその方が嬉しいし」
「ほぁっ、ほ、本当にいいんですか？　こここ恋人、なんて……男ですし、僕、ですし……いや、僕が言い出した事なんですけど。しかも、快楽責めで承諾させた節もありますし。それに、僕は常に強気な、あの性格のままでは、いられ無い、ですし……いや、でもっ、ど、努力はします！　あっちの方が社交性もありますし、堂々としてるので、い、今の僕みたいな陰キャとは違って……見た目だってあの、色々と……ただ、どうしても強引で、性格が悪くて……自信過剰なクソ野郎で……」
「タンマタンマ！　古町さん？　何言ってるんですか？」

　本当に何言ってるんですか？　この人は。
　薄っすらとだけど、この古町さんの性格の変わり様には何か事情があるのかなぁ、とは思ってたけど。それはそれ、これはこれでしょ。

　よーしよしよし、落ち着きなさーい、って感じで抱き付いた体勢のまま古町さんの背中を撫でる。
　お？　古町さんてば背中の筋肉も結構がっつり付いてる。いつも古町を見る時って正面からばっかりだから新発見だ。

「アッチの古町さんもコッチの古町さんも同じ古町さんでしょう？　どちらの古町さんもそれぞれの良さがあって俺は好きですよ。今の古町さんは体は大きいのに可愛いし、雄み溢れる古町さんは格好良いスパダリだし、この高低差の激しさがクセになると言うか……。だから、どっちが良いとか悪いとか、俺考えた事も無いし」

　みんなちがってみんないい、ってか？　それか、一粒で二度美味しい。
　俺的にはメリットは感じてもデメリットは正直感じない。　

「確かに勢いで恋人になる、とは言いましたけど、それはちゃんと本心からですよ？　別に後悔もしてないですし。むしろ古町さんが本気なら俺は全然ＯＫですもん。だって、古町さんエッチ上手いし絶倫だしエロ知識豊富だし痒いところに届くチンコだし」
「うううう、セックスを評価して頂けるのは嬉しいんですけど……」

　抱き付いてるから古町さんの顔は見え無いけど、きっと眉をハの字にしてしょんぼりした顔をしているだろう事が容易に想像出来る。
　何かもう、最近は古町さんのリアクションが簡単に想像出来るようになって来たんだけど。
　でも、それが別に嫌だとかではなくて、それだけ親密になって来たって事の様な気がして密かに嬉しかったりするんだけど。古町さんは気付いて無いんだろうなぁ？

「勿論、人間性も評価してますって！　エッチな事出来なくなっても良いから古町さんとの付き合いは続けたいって。俺、思ってるんですよ？　知らなかったでしょ？　一人の男として古町さんの事は好きです。当然、古町さんのチンコも大好きです！　恋人としてお付き合いするのもやぶさかでは無い程に！！」
「なんなんですか、それ！？　もう！　そういう歪みない廣邊君だからそこ好きです！！　僕と付き合って下さい！！」
「はい！　喜んで～」




　こうして、俺は肉ディルドを手に入れたと思ったら、その肉ディルドが恋人になってしまった。
　今までそんな風に意識した事は無かったけど、古町さんの告白を嬉しいと思っちゃったんだから、気付かないうちに俺も……そういう事、だったのかな？
　そして、今日から俺の称号はオナニー愛好家からセックス愛好家にクラスチェンジした訳だ。
　至高のチンコを持った最高にカッコカワイイ恋人なんて最高じゃなかろうか？



「これからも宜しくお願いしますね？　つきましては古町さんの経験値を知りたいんですが……ガン掘り電マ責めとか習得されておりますでしょうか？」
「ご希望とあらば対応いたしますが……お手柔らかにお願いいたしますね」

　あ～、古町さんてばマジ最高。