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元クソ野郎が肉ディルドになるまで~古町視点

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 なにも、僕は最初から陰キャだった訳では無い。
 僕がジメジメとした挙動不審な陰キャになったのは、ここ数年、3~4年位の事だった。
 それまでは、今とは正反対に正々堂々と人前に立ち、人の上に立つのが当たり前で自信に溢れた、寧ろ自信しかない人間だった。

 自分で言うのもなんだが、顔は悪くないし、背も高く肉体も鍛え人目を惹く容姿をしていた。
 それに加え、実家には金もあったし頭も悪く無かった。いや、ある意味悪かったんだが。兎に角、生まれた瞬間から全てに恵まれていた。
 放っておいても男も女も僕の周りに集まって来たし、そうやって擦り寄って来た人達は僕が微笑み、聞こえの良い言葉を口にするだけで僕を持ち上げてくれ、僕は全てにおいて自分が一番だと思っていた
 さらに最悪な事に選民意識も強かった僕は、常に人を見下して生きていた。

 中学に入った頃からそれは顕著に現れ、僕の容姿に群がって来る人達にチヤホヤされて勘違いした僕は、自分は何でも出来るし、やって良い人間なんだと思っていた。
 高校に入れば、男女共に言い寄って来る人達を侍らせ、僕は何をしても許されると更に勘違いを膨らませてしまっていた。

 その頃には僕は外面ばかりが良いクズ野郎だった。
 女は勿論、男も見目が良ければ食い散らかした。
 当時の僕の言い分で言うなら「あっちから抱いてくれって言い寄って来るから抱いてやっただけ」
 ヤリ逃げは当たり前。それどころか当時はヤリ逃げとも思っていなかった。
 特定の相手を作った事もあったが、その相手だけを大事にする、なんてする訳も無く、浮気どころか二股三股なんて当然だった。むしろ「僕が抱いてあげてるんだから、相手にして貰えるだけありがたいと思え」と思っていた。

 そんな非道な事ばかりしていても、外面は良く表面的には優しく気づかいの出来る人間を演じていた為、騙される人は多かった。
 中には、そんな僕の本性を分かっていて侍る人もいて、当時は本当に僕の心も体も人間関係も全て爛れていた。
 女は孕まなければ良かったし、男は孕まないから良かった。
 最低最悪のクソの様な理念なのだが、当時の僕はそれが当然だと思っていたし、周りもそんな僕を許してくれる人ばかりだった。
 結果、もう何処に出しても恥ずかしいクソ野郎の出来上がりだった。

 あの頃の事は良く刺されなかったな、と今さらながらに思う。
 下手をすれば、今も何かのきっかけがあれば復讐の名の元に刺されるかもしれない。
 それだけの事をやって来た自覚が、今ならある。

 それは大学に入っても変わらなかった。
 そんなクソ野郎でも整った容姿と金で僕の周りは人に溢れていたし、僕も当時は人心掌握に長けていたから取り巻きは増えていた。
 寧ろ、遊び方が派手になっていたかもしれない。
 だけど、そんな事をしていれば人の恨みを買うのは必須で、さらにそれを利用して僕を引きずり落とそうとする人間が現れるのも当然の事だった。

 大学は高校までとは違い年齢層も上がり大人もいる事で、大学内外関係なく人間関係も広がった。良くも悪くも色々な人種が僕の周りにはいたのだ。
 それを人脈が広がったと馬鹿みたいに喜び、なにを意味する事なのかも理解していなかった。

 そんな大学生活で、僕はある先輩に紹介された大学外部の成人男性に共同起業をしないかと持ち掛けられた。
 甘い言葉で僕を持ち上げてくれる大人に、僕の自尊心は擽られ、簡単に信用してしまったのだ。
 自分に媚びへつらい、付き従う人間しかいないと思っていた当時の僕は、言われるがままに金をその事業に投入した。
 海外とのルートを繋ぐ為。他の起業家とのパイプを繋ぐ為。業務効率化のツール導入の為。他企業との提携の為。
 色々と理由を付けては金を引っ張られたが、一端の学生起業家になったつもりだった僕は疑う事も無かった。

 当然、全て嘘だった。

 それが判明し男が姿を消した頃、僕に残ったのは多額の借金だけだった。

 そこから転げ落ちるのは早かった。
 僕が怪しい男に騙され多額の借金を負ったのは、瞬く間に大学内に広まったのだ。
 恐らく、最初にあの男を紹介してくれた先輩はグルだったのだと思う。内部の人間でしか知らないような詳細な内容まで一気に広まっていたし、判明した時には卒業してしまい連絡も取れなくなっていたのだから…
 僕に何か恨みがあってした事なのか、ただのバカなカモとして扱われたのかは、今となっては分からない。

 兎に角、この事があってから僕の周りは変わった。
 まず、僕の金に集まっていた人達が一斉にいなくなった。
 次に僕のヒエラルキー的位置に集まっていた人達が、次に僕の学内の地位に集まっていた人達が……
 僕が弱れば弱る程離れて行く人は増え、手を差し伸べてくれる人なんて一人もいなかった。
 それどころか、今まで僕が関係を持って手酷く扱って来た人達がここぞとばかりに誹謗中傷や悪評を学内に広め僕は針の筵状態だった。
 しかし、これはどう考えても自業自得だ。それだけの事を彼女達、彼達に僕はして来たのだから。

 そんな事もあって、僕からも人々から離れて行った。いや、離れざるを得なかった。
 なぜなら、人に対して打ちまくる事はあっても自分が打たれる事が無かった僕の精神は非常に打たれ弱く、惰弱な精神だったからだ。
 あんなに僕の周りにいた人達は誰一人として僕を見ていなかった事にショックを覚え、そんな人達しか側に寄せ付けなかった自分に絶望した。

 自然と常に上を向いていた視線は足元ばかり見る様になり、人と接する事が怖くなり、あれ程あった自信も自己肯定感も地に落ちた。
 精神的な物か性欲も無くなってしまい、何を見ても勃ちもしなければムラムラもしない。不能ではない様なのだがどうこうしようとは微塵にも思わなくなってしまった。

 人の視線から逃れたくて前髪を伸ばして目を隠し、高い背を猫背で低くし、話す声も小さく最低限に、人目の無い場所を好む様になった。
 気が付けば、昔僕が見下していた陰キャなる者に自らなっていた。
 そうして遂に僕の容姿に集まっていた人達もいなくなった。

 見事なまでの身から出た錆を体現した僕は大学を卒業後、逃げる様に地元から離れた土地で就職した。
 あの失態から実家からは見放されており、借金を立て替える代わりに今後一切の縁を切ると言われている。実質勘当って事だ。

 そして卒業してから約3年、今まで住んだ事の無い様な狭い部屋と職場、それと、これだけは続けていた週2~3回のスポーツジムを行き来するだけの毎日を過ごしている。
 人と関わる事事態が苦手になり怖くなった僕に、新たな友人なんて作れるはずも無く、職場でも寡黙で暗い人間として、人との関りは必要最低限で務めていた。

そんな、クソ野郎の成れの果てが今の僕だった。

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