《完結》平民の子で嫌われ者のおれは幸せになるために奮闘します。

後日談

幸せな日常を大切に、今日もまた時を刻む ℯ𝓃𝒹

《TBside》

　ゆったりとした時間が流れる中、風が穏やかに吹く。

「お兄様！」
「アベル兄さんっ！」
「ラウラ、シュテル。あまり走るなよ」

　濡羽色の髪に、広大な海を映す青色の瞳。齢十歳ながら、既にオルドガルド大公とそっくりの風貌をしている男の子。名は、アベル・レルファルド・クロニカル・オルドガルド。オルドガルド大公家嫡男である。
　そんなアベルを後ろから追うのは、ピンク色の長髪を靡かせた炎の瞳の女の子と、ピンク色の髪に同じく炎の瞳の男の子。女の子の名は、ラウラティーファ・ベルナ・クロニカル・オルドガルド。オルドガルド大公家長女であり、既にオルドガルド大公夫人の面影を受け継いでいる。男の子は、シュルベステル・ロット・クロニカル・オルドガルドという。オルドガルド大公家次男であり、アベルとラウラの弟だ。
　子供たちが庭園を駆け回るのを見つめながら、おれ、ティファニベル・クロニカル・オルドガルドは、一枚の手紙を開いた。

「レミルアナ、二人目の子供ができたって…！」
「ライドニッツ夫人が…。とてもめでたいことですね。返事を書かなくては」
「ふふ。ランスは本当にライドニッツ卿が気に食わないんだね」

　目の前に座っているのは、ランスロット・アルト・クロニカル・オルドガルド。オルドガルド大公であり、おれの夫。十年ほど前とは違う、大人の男の色気を孕んだランスは、もう既に立派な父親だ。
　手紙の差出人は、グラディドール大帝国に住まう守護神《剣聖》ライドニッツ家の夫人にして、カーデリアン侯爵家の令嬢レミルアナである。おれの予想通り、ライドニッツ卿とレミルアナは数年前に結婚をした。そして、既に長女が生まれている。早くも剣の才能が出始めているとか…。
　子供と言えば、マリアとフェオも三人の子供がいる。エリノアも最近恋人ができたと言っていたっけ？
　嬉しいことばかりだ。

「ふえっ、ふぇっ…」
「な、泣き出してしまった…。ティファニベル」

　もう一人、右隣に座っていた男性、お父様が抱いていた赤ちゃんが泣き始めてしまった。おれはお父様から赤ちゃんを貰い受け、優しくあやす。
　薄く生えた濡羽色の髪。大きな炎の瞳からぽろぽろと大粒の涙が溢れる。この子は、三男のヴェルディア・リラ・クロニカル・オルドガルド。おれと同じ子を孕める神の御加護を受けている子だ。

「ティファニベル、変わります。あなたは座っていてください」

　ヴェルディアはランスに移る。ランスの逞しい胸を小さな手で触りながら、キャッキャっと笑い始めた。
　おれはランスの厚意に甘えて、ゆっくりと座る。
　おれのお腹には、既に五人目の子供がいた。ラフィコン侯爵の診察によれば、お腹の子は女の子だという。

「ティファニベル、子の名前は決めたのか」
「はい。お父様も愛した女性の名前ですよ」
「っ…」
「この子は、ルラナ。母の名から取りました」

　そう言って微笑むと、お父様が驚いた顔をしていた。お父様が何かを言いかけようとしたとき、ラウラとシュテルがひょっこりと顔を出した。

「おじい様～！ラウラたちと遊んでください！」
「おじいさまっ！あそんでください！」

　ラウラの真似をして拙い言葉を伝えるシュテル。お父様は「うっ…」という声を上げ、孫たちの可愛さに悶絶した。

「はやく～！」

　ラウラに腕を引かれ、お父様は渋々立ち上がる。「孫たちが可愛すぎる…」とボソボソと呟きながら、ラウラとシュテルに腕を引かれながら、庭園へと向かって行った。
　お父様とアベルとラウラとシュテルが遊んでいる様子を見つめながら、心が満たされるように胸が締め付けられる。


「幸せ、ですか？」
「もちろん。おれは、もうずっと前から、幸せだ」


　そう言って微笑むと、ランスも優しく笑った。
　幸せな日常を大切に、今日もまた時を刻む。大好きな人たちと、共に_______。





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『平民の子で嫌われ者のおれは幸せになるために奮闘します。』後日談完結

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　後日談完結です！
　後日談までお付き合いくださった読者の皆様、本当に本当に本当にありがとうございました。
　他作品もよろしくお願い致します！