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第36話
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《TBside》
後日。レラさんの御遺体をリラ夫人と同じ墓に埋葬すると共に、オルドガルド大公家のみでひっそりと静かな葬式を行った。
そして、ようやくリラ夫人を殺したというおれの母ルラーナの虚偽の罪が晴らされた。オルドガルド大公夫人を殺したのはオルドガルド大公の愛人ではなく、身分の低い貴族であり、真の黒幕はエウデラード家によって暗殺された。既に社交界には、その話が広まっており、アルフェンロード大帝国中に広まるのも時間の問題だった。母の罪も晴らされ、エウデラード家も疑われない。身分の低い貴族とは、まさにレラさんのこと。エウデラード家は、またしても偽の黒幕を吊し上げたのだ。
「ようやく、願いが叶いましたね。ティファニベル様」
「そうだね。長かったよ、ここまで」
椅子に深く腰掛けて、溜息を吐く。
「これも協力してくれたみんなのおかげだ。マリア、エリノア、フェオ。ありがとう」
日頃の感謝も込めて、心からの礼を口にした。
マリアは、おれの事業の一つを担当してくれている。エリノアは、諜報に長けているからリラ夫人の元専属使用人であったジーナさんを見つけてくれた。フェオは、ベルの護衛とカーデリアン伯爵家の新事業を手伝ってくれている。みんながみんな、それぞれの役割を全うしてくれているから、今のおれがあるんだ。ここまで手伝ってくれた三人には、本当に頭が上がらない。
「おいおい、女王様らしくないぜ」
「じょ、女王様…?」
「おまえはただ、俺らをこき使って、主人として堂々と玉座に座ってればいいんだよ」
首の後ろを掻くようにして、照れ隠しのようにそう言ったフェオ。
初めて会ったときよりも、随分と伸びた銀髪。浅黒い肌に合った色素の薄い髪は柔らかく風に靡いている。そんなフェオの脇腹をグッと摘むマリア。
「ティファニベル様に向かっておまえだなんてっ…!」
「痛えよ…!」
小声で言い争っているが、はっきりこちらまで聞こえてしまっている。やっぱりマリアとフェオ、良いコンビだ。良妻とダメな夫的な雰囲気を二人から感じる。そんな二人の横で、エリノアはただ一人呆れたような表情を浮かべている。どうやら、いつものことらしい。いつか、マリアとフェオの朗報を聞けたら、いいな_____。
「二人共、ティファニベル様の御前ですよ。少しくらい静かにしたらどうなんですか?」
言い争いながらもイチャイチャしているマリアとフェオに、耐え切れなくなったエリノアが冷たい声で告げる。エリノアに注意をされ、ビクッと体を跳ね上がらせた二人はすっかりと静かになりおれに向き合った。エリノア恐るべし…。
「ティファニベル様。ルラーナ様の罪も無事に晴らすことができましたし、この後はどうなされるおつもりで?」
エリノアの質問に、おれは小さく頷いた。
母の罪を晴らし、幸せになる。それが目的だった。既に母の罪は晴らすことができているため、後はおれが幸せになるだけだ。この先どんな手を使ってでも、おれは幸せになる。
「幸せになるためなら、どんな障壁も潰すまで」
手元に積み上がった手紙。母の罪が晴らされたことにより、お茶会やら生誕日の舞踏会やらの招待状が数多く届いている。ベル宛ではなく、ティファニベル・クロニカル・オルドガルド宛に。ころりと掌を返すなんて、貴族たちは扱いやすくて困るよ、本当に。
積み重なった手紙の一番上に置かれた一際上品な便箋。真ん中に存在を主張するかのように大々的に皇族の家紋が描かれている。不定期で開催される舞踏会の招待状だ。
「そう、どんな障壁も」
舞踏会には、べリザード大公令嬢も出席されることだろう。ティファニベルとベルの策略により、新事業で大赤字を生み出してしまったことだから、何かしらのアクションは仕掛けてくることだろう。二人の策略に見事にハマりイラついたところに、追い打ちをかけるように母の罪が晴らされティファニベルの名誉が回復した。べリザード大公家はおれに比べて酷い劣勢だ。何を仕掛けてくるかは、大体想像はついている。どうせ、前よりもランスへの執着を激しくするつもりだ。ランスと早々に結婚して平民であるおれをオルドガルド大公家から追い出そうとしているのだろう。そろそろ、ティファニベルがベルであるというのを明かしても良さそうな頃合だし。その時が来たら明かそう。
「べリザード大公家の没落を望まれるのですか…?」
「邪魔になるからね。おれが幸せになるためだもの。彼女らが没落するのは、仕方がないよ」
エリノアの問いかけに、ニッコリと微笑んで見せる。
「ティファニベル様に、一生を捧げると誓いました。あなた様にどこまでも着いて参りましゅ!」
また大事なところで噛んだな、と思いながらもこの上ない忠誠を捧げてくれたマリア。おれに着いてきてくれると言ってくれたマリアとエリノアとフェオのためにも、必ず目的を成し遂げる。
もう二度と、誰にも不名誉なことは言わせないよ。
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後日。レラさんの御遺体をリラ夫人と同じ墓に埋葬すると共に、オルドガルド大公家のみでひっそりと静かな葬式を行った。
そして、ようやくリラ夫人を殺したというおれの母ルラーナの虚偽の罪が晴らされた。オルドガルド大公夫人を殺したのはオルドガルド大公の愛人ではなく、身分の低い貴族であり、真の黒幕はエウデラード家によって暗殺された。既に社交界には、その話が広まっており、アルフェンロード大帝国中に広まるのも時間の問題だった。母の罪も晴らされ、エウデラード家も疑われない。身分の低い貴族とは、まさにレラさんのこと。エウデラード家は、またしても偽の黒幕を吊し上げたのだ。
「ようやく、願いが叶いましたね。ティファニベル様」
「そうだね。長かったよ、ここまで」
椅子に深く腰掛けて、溜息を吐く。
「これも協力してくれたみんなのおかげだ。マリア、エリノア、フェオ。ありがとう」
日頃の感謝も込めて、心からの礼を口にした。
マリアは、おれの事業の一つを担当してくれている。エリノアは、諜報に長けているからリラ夫人の元専属使用人であったジーナさんを見つけてくれた。フェオは、ベルの護衛とカーデリアン伯爵家の新事業を手伝ってくれている。みんながみんな、それぞれの役割を全うしてくれているから、今のおれがあるんだ。ここまで手伝ってくれた三人には、本当に頭が上がらない。
「おいおい、女王様らしくないぜ」
「じょ、女王様…?」
「おまえはただ、俺らをこき使って、主人として堂々と玉座に座ってればいいんだよ」
首の後ろを掻くようにして、照れ隠しのようにそう言ったフェオ。
初めて会ったときよりも、随分と伸びた銀髪。浅黒い肌に合った色素の薄い髪は柔らかく風に靡いている。そんなフェオの脇腹をグッと摘むマリア。
「ティファニベル様に向かっておまえだなんてっ…!」
「痛えよ…!」
小声で言い争っているが、はっきりこちらまで聞こえてしまっている。やっぱりマリアとフェオ、良いコンビだ。良妻とダメな夫的な雰囲気を二人から感じる。そんな二人の横で、エリノアはただ一人呆れたような表情を浮かべている。どうやら、いつものことらしい。いつか、マリアとフェオの朗報を聞けたら、いいな_____。
「二人共、ティファニベル様の御前ですよ。少しくらい静かにしたらどうなんですか?」
言い争いながらもイチャイチャしているマリアとフェオに、耐え切れなくなったエリノアが冷たい声で告げる。エリノアに注意をされ、ビクッと体を跳ね上がらせた二人はすっかりと静かになりおれに向き合った。エリノア恐るべし…。
「ティファニベル様。ルラーナ様の罪も無事に晴らすことができましたし、この後はどうなされるおつもりで?」
エリノアの質問に、おれは小さく頷いた。
母の罪を晴らし、幸せになる。それが目的だった。既に母の罪は晴らすことができているため、後はおれが幸せになるだけだ。この先どんな手を使ってでも、おれは幸せになる。
「幸せになるためなら、どんな障壁も潰すまで」
手元に積み上がった手紙。母の罪が晴らされたことにより、お茶会やら生誕日の舞踏会やらの招待状が数多く届いている。ベル宛ではなく、ティファニベル・クロニカル・オルドガルド宛に。ころりと掌を返すなんて、貴族たちは扱いやすくて困るよ、本当に。
積み重なった手紙の一番上に置かれた一際上品な便箋。真ん中に存在を主張するかのように大々的に皇族の家紋が描かれている。不定期で開催される舞踏会の招待状だ。
「そう、どんな障壁も」
舞踏会には、べリザード大公令嬢も出席されることだろう。ティファニベルとベルの策略により、新事業で大赤字を生み出してしまったことだから、何かしらのアクションは仕掛けてくることだろう。二人の策略に見事にハマりイラついたところに、追い打ちをかけるように母の罪が晴らされティファニベルの名誉が回復した。べリザード大公家はおれに比べて酷い劣勢だ。何を仕掛けてくるかは、大体想像はついている。どうせ、前よりもランスへの執着を激しくするつもりだ。ランスと早々に結婚して平民であるおれをオルドガルド大公家から追い出そうとしているのだろう。そろそろ、ティファニベルがベルであるというのを明かしても良さそうな頃合だし。その時が来たら明かそう。
「べリザード大公家の没落を望まれるのですか…?」
「邪魔になるからね。おれが幸せになるためだもの。彼女らが没落するのは、仕方がないよ」
エリノアの問いかけに、ニッコリと微笑んで見せる。
「ティファニベル様に、一生を捧げると誓いました。あなた様にどこまでも着いて参りましゅ!」
また大事なところで噛んだな、と思いながらもこの上ない忠誠を捧げてくれたマリア。おれに着いてきてくれると言ってくれたマリアとエリノアとフェオのためにも、必ず目的を成し遂げる。
もう二度と、誰にも不名誉なことは言わせないよ。
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