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第119話

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《RDside》

 シルヴェストル魔法学院学院長であり、マーフィカルガ公爵でもあったエルセリベルグ・ティデンド・ラン・マーフィカルガは、長年シルヴェストル大帝国を欺き、尊き皇族をも危険に晒したとして、公開処刑の刑に処された。非人道的として公開処刑は長年行われてこなかったが、あまりの罪の重さにより、今回は異例として認められた。多くの民たちが見つめる中、皇都の中心部で行われた師匠の処刑。怒号が飛び交い、石や物を投げられる中、師匠は断固として表情を崩さなかった。首を落とされるその瞬間まで________。一体何を思い、何を感じて死んで行ったかは定かではない。だが、大犯罪を犯したからと言って、おれの師匠であることに変わりはなかった。多くの人間から嫌われていたおれを温かく迎えてくれたのは、師匠だけだったから。どうか、安らかに眠って欲しい。
 《アルムグリスト》のボスであるリカルド・アルムグリストは、シャルロディーテ皇妃並びにリューク殿下の殺害を指揮したとして、一般の処刑に処された。
 こうして無事に、母の罪を晴らすことができたおれは、シルヴェストル魔法学院学院長の就任式へと訪れた。

「リダ・セヴェール・レヴィス・シルヴェストル。貴殿をシルヴェストル魔法学院学院長へと任命する」

 シルヴェストル魔法学院大講堂にて、多くの教師、生徒が見守る中、おれは皇帝陛下より任命の儀式を受けていた。学院長である証として、初代学院長の物である派手やかなローブと杖を受け取る。

「励むが良い」

 皇帝陛下の激励の言葉に、深々と頭を下げる。

「「「わ~~~!!!!!!!!!」」」

 瞬く間に喝采が沸き起こり、大講堂は拍手に包まれた。
 まさか、こんなに歓迎されることになるとは…。教師として就任したときよりもすごい歓声だ。嫌われていたあの頃には、全く想像できなかったこと。
 目の前の光景を目の当たりにしたおれは、薄らと涙を浮かべる。
 バカ、泣いちゃダメだよ。せっかくの晴れ舞台なんだから、胸を張らなくちゃ!旦那様たちも見ているし!

「若き魔法使い、魔女の皆さん。おれはシルヴェストル魔法学院に恥じぬよう励みます。よろしくお願いします!」

 簡潔にそう述べると、更に大きな歓声が沸き起こった。歓迎されているのだと嬉しくなったおれは、その場で無詠唱で魔法を唱え、簡素的な花火を打ち上げた。頭上で散り行く花火は、とても美しいものだった。
 お祭り騒ぎの中、おれは壇上を後にする。

「リダ先生…いえ、もう、学院長ですね」
「ルイード先生…」

 おれに話しかけてきたのは、リーダ・ルイード先生。相変わらずのメガネイケメンだ。

「前学院長の件は、本当に心苦しいものでした。心情お察し致します」
「学院長も相当驚かれたことでしょう。あの方の一番近くにいたのにも関わらず、私は見抜くことができなかった…。未だに後悔をしております」
「それを言ったらおれだって、師匠が裏切り者とは思いもしませんでした。今はそれも解決しましたし…。差し支えなければ今日という日を祝福してくださると嬉しいです」

 おれの言葉に、ルイード先生は感慨深い表情を浮かべ、深く頷いた。

「もちろんです。学院長。就任、誠におめでとうございます。そして、先輩方の罪を晴らしてくださり、本当にありがとうございます…」

 冷たいレンズの向こう、グレースピネルの瞳に薄らと膜が張る。
 両親をよく知らないおれからしたら、あまり実感は湧いていない。だが、息子であるおれよりも両親のことをよく知っているルイード先生からすれば、本当に嬉しいことなのだろう。冷たく見えても、心は温かい人だ。相当、二人のことを好いていてくれたのだろうな。

「こちらこそ、母の無実を信じてくださり、そして父を好いていてくださり、ありがとうございます。大罪人のレッテルは見事に剥がれ、近いうちに皇宮内に墓が立てられる予定です。ぜひ、母に会いに来てください」

 流れ落ちる涙。ルイード先生は、震える声を噛み締めて、「はい、」と呟いたのだった。おれは、ルイード先生の背中にそっと手を添える。そんなおれたちの様子を、旦那様が微笑ましく見ているとも知らず。
 こうして、おれはシルヴェストル魔法学院の新学院長に就任し、多くの方々からの祝福を受けることになったのだった。





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