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第116話
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《RDside》
禁断の名を口にしたその瞬間、再び天井が割れ、美しい天空を裂くようにして禍々しい光柱が現れる。黒煙のようなものの中から現れたのは、魔神オルクス。最高神スクルオとは真逆の位置に属するこの世ならざるものだ。
魔法など一切使っていないのにも関わらず、オルクスの発する気だけで、魔法使いや魔女たちは吹っ飛んでしまう。師匠でさえ、耐えるのがやっとだ。
解放されたおれは、大きく咳をして、深呼吸をする。そんなおれに駆け寄って来た六人の旦那様。フェルに支えられるようにしてその場に立った。
「さっさと我を呼ばんか。リダよ」
「オルクス~!マジで助かったよ~!!!」
腕を組んでいるオルクスに駆け寄り、逞しい体にギュッと抱き着いた。
こうしてると、おれとオルクスの体格差やばいな…。まぁそんなところも好き!
胸元が大きく開いた服を身に纏うオルクス。処女を奪われたときには好き勝手されたから、今回はおれが好き勝手してやろう。ニタァと笑ったおれは、オルクスの胸筋に顔を埋めながらグリグリと頭を動かした。
オルクスは、そんなおれを気にも止めず、正面に立っていた最高神スクルオを見つめる。
「愚兄よ。どういうことだ」
「ちょっと待ってよ、弟。それはこっちのセリフなんだけど」
愚兄?え?弟?え?な、何か似てると思ったらまさかの兄弟!?!?!?
おれは我慢できずに叫ぶ。
「え!?兄弟なの!?」
「あの愚兄は我の双子の兄だ」
ふ、双子!?双子だって!?道理でイケメンなわけじゃん!双子の片割れが最高神で、もう一人の片割れが魔神だなんてどうなってんの!?何があったの!?お父さんお母さん大丈夫!?
湧き出るような興奮は、もう治まることを知らない。
あぁ、たまらん。兄弟と言えば、ルウくんとフレイも兄弟だけど、双子はやばい。やばい。
最高神スクルオは、片手で額を押さえ、困ったように問いかける。
「どうしてその生贄が魔法を使わずに、おまえを呼べるのさ」
「ふん。そんなことも分からんか。最高神は名ばかりだな。まぁしかし、血を分けた片割れ故、特別に教えてやろう。この者は我の妻。ついでに言うとここにいる者共の妻でもある。愚兄よ、我の妻に手を出した覚悟は出来ているのであろうな?」
オルクスは、薄ら笑いをしながら自信ありげに言う。
え?それ教えたことになってんの?我の妻じゃー!って言ってるだけじゃない?
人間離れどころか、神様離れしている美貌を、下から見上げる。オルクスの大きな手が後頭部をするりと撫でた。
「まさか…事前に契約魔法を結んでいたとは…!!!」
師匠は、ブチ切れたかのように叫んでいる。
若造共にやられたわい!とでも言いたそうな顔だな。残念だけど、老いぼれの時代はもう終わってんのよ。これからは、おれたちの時代だから!
やる気が滾ってきたその瞬間。
「待ってくれ」
制止の声が木霊した。最高神スクルオは、手をスっと挙げている。
師匠もボスも、何やってんだこいつという表情だ。実際こちらに聞こえていないだけで、声に出してしまっているかもしれない。
先程までの余裕そうな雰囲気は何処へやら。冷や汗を流しながら、降参の意を示すかのように手を振る。
「さすがに、弟と争おうとは思わないよ。この人間たちに召喚され、あの大魔女シャルロディーテの息子であり、当代随一の大魔法使いリダを捧げると言われて了承しただけのこと。面白半分だから、本気じゃないさ」
「…………………………」
その場に、長い長い沈黙が流れる。師匠やボスだけではない。おれたちでさえ、マジで何言ってんだこいつという目で見つめている。
どうやら、元から乗り気ではなかったらしい。人間たちに召喚されておいて生贄まで捧げられたのに、「え?面白半分だけど、まさか本気だったの?世界征服?え?ウケるw」ということか。ほんのちょっとだけ、師匠たちが可哀想になってきた…。
ていうか、生贄だけ頂いてバックれるつもりだったんかよ、この人。人じゃなかった、神だわ。最高神とか太陽神とか、鳥肌が立つような二つ名つけられといてそれかよ~!
「夫が、六人じゃなくて…七人。しかも、一人は神…」
ボソボソという声が聞こえたためそちらを見ると、皇帝陛下が魂の抜けた表情で虚空を見上げていた。
あ、やばい。早いとこ終わらせないと、皇帝陛下狂っちゃう。
「ちようといいや。そこの金ピカイケメンもこっちに加勢してよ。どうせバックれるつもりだったんだからいいでしよ?」
「きん………何て?」
最高神スクルオのことを無視して、おれはボキボキと体中の関節を鳴らす。軽い準備運動だ。
「オルクス。あの老いぼれをどうにかしてくれない?あの人の魔法、厄介なんだよね」
「フン、誰に言っておる。一瞬で片付けてやろう」
オルクスの楽しそうな顔を見て、おれも嬉しくなる。
生贄としておれを選んだことが間違いだし、そもそもおれたちを最初に敵に回したのがアホのする選択だったね。てなわけで、残念だけど、、、
「とりあえず死んでくれる?」
刹那。辺りは、爆発に包まれた。
‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦
禁断の名を口にしたその瞬間、再び天井が割れ、美しい天空を裂くようにして禍々しい光柱が現れる。黒煙のようなものの中から現れたのは、魔神オルクス。最高神スクルオとは真逆の位置に属するこの世ならざるものだ。
魔法など一切使っていないのにも関わらず、オルクスの発する気だけで、魔法使いや魔女たちは吹っ飛んでしまう。師匠でさえ、耐えるのがやっとだ。
解放されたおれは、大きく咳をして、深呼吸をする。そんなおれに駆け寄って来た六人の旦那様。フェルに支えられるようにしてその場に立った。
「さっさと我を呼ばんか。リダよ」
「オルクス~!マジで助かったよ~!!!」
腕を組んでいるオルクスに駆け寄り、逞しい体にギュッと抱き着いた。
こうしてると、おれとオルクスの体格差やばいな…。まぁそんなところも好き!
胸元が大きく開いた服を身に纏うオルクス。処女を奪われたときには好き勝手されたから、今回はおれが好き勝手してやろう。ニタァと笑ったおれは、オルクスの胸筋に顔を埋めながらグリグリと頭を動かした。
オルクスは、そんなおれを気にも止めず、正面に立っていた最高神スクルオを見つめる。
「愚兄よ。どういうことだ」
「ちょっと待ってよ、弟。それはこっちのセリフなんだけど」
愚兄?え?弟?え?な、何か似てると思ったらまさかの兄弟!?!?!?
おれは我慢できずに叫ぶ。
「え!?兄弟なの!?」
「あの愚兄は我の双子の兄だ」
ふ、双子!?双子だって!?道理でイケメンなわけじゃん!双子の片割れが最高神で、もう一人の片割れが魔神だなんてどうなってんの!?何があったの!?お父さんお母さん大丈夫!?
湧き出るような興奮は、もう治まることを知らない。
あぁ、たまらん。兄弟と言えば、ルウくんとフレイも兄弟だけど、双子はやばい。やばい。
最高神スクルオは、片手で額を押さえ、困ったように問いかける。
「どうしてその生贄が魔法を使わずに、おまえを呼べるのさ」
「ふん。そんなことも分からんか。最高神は名ばかりだな。まぁしかし、血を分けた片割れ故、特別に教えてやろう。この者は我の妻。ついでに言うとここにいる者共の妻でもある。愚兄よ、我の妻に手を出した覚悟は出来ているのであろうな?」
オルクスは、薄ら笑いをしながら自信ありげに言う。
え?それ教えたことになってんの?我の妻じゃー!って言ってるだけじゃない?
人間離れどころか、神様離れしている美貌を、下から見上げる。オルクスの大きな手が後頭部をするりと撫でた。
「まさか…事前に契約魔法を結んでいたとは…!!!」
師匠は、ブチ切れたかのように叫んでいる。
若造共にやられたわい!とでも言いたそうな顔だな。残念だけど、老いぼれの時代はもう終わってんのよ。これからは、おれたちの時代だから!
やる気が滾ってきたその瞬間。
「待ってくれ」
制止の声が木霊した。最高神スクルオは、手をスっと挙げている。
師匠もボスも、何やってんだこいつという表情だ。実際こちらに聞こえていないだけで、声に出してしまっているかもしれない。
先程までの余裕そうな雰囲気は何処へやら。冷や汗を流しながら、降参の意を示すかのように手を振る。
「さすがに、弟と争おうとは思わないよ。この人間たちに召喚され、あの大魔女シャルロディーテの息子であり、当代随一の大魔法使いリダを捧げると言われて了承しただけのこと。面白半分だから、本気じゃないさ」
「…………………………」
その場に、長い長い沈黙が流れる。師匠やボスだけではない。おれたちでさえ、マジで何言ってんだこいつという目で見つめている。
どうやら、元から乗り気ではなかったらしい。人間たちに召喚されておいて生贄まで捧げられたのに、「え?面白半分だけど、まさか本気だったの?世界征服?え?ウケるw」ということか。ほんのちょっとだけ、師匠たちが可哀想になってきた…。
ていうか、生贄だけ頂いてバックれるつもりだったんかよ、この人。人じゃなかった、神だわ。最高神とか太陽神とか、鳥肌が立つような二つ名つけられといてそれかよ~!
「夫が、六人じゃなくて…七人。しかも、一人は神…」
ボソボソという声が聞こえたためそちらを見ると、皇帝陛下が魂の抜けた表情で虚空を見上げていた。
あ、やばい。早いとこ終わらせないと、皇帝陛下狂っちゃう。
「ちようといいや。そこの金ピカイケメンもこっちに加勢してよ。どうせバックれるつもりだったんだからいいでしよ?」
「きん………何て?」
最高神スクルオのことを無視して、おれはボキボキと体中の関節を鳴らす。軽い準備運動だ。
「オルクス。あの老いぼれをどうにかしてくれない?あの人の魔法、厄介なんだよね」
「フン、誰に言っておる。一瞬で片付けてやろう」
オルクスの楽しそうな顔を見て、おれも嬉しくなる。
生贄としておれを選んだことが間違いだし、そもそもおれたちを最初に敵に回したのがアホのする選択だったね。てなわけで、残念だけど、、、
「とりあえず死んでくれる?」
刹那。辺りは、爆発に包まれた。
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