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第95話
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《RDside》
皇太子殿下からの突然のプロポーズを受けた。
共にシルヴェストルを統治する。それは、おれが皇太子妃となり、そして行く行くはシルヴェストル大帝国の皇后となるということ。
おれが、大国の皇后?めちゃめちゃ似合ってない気がするんだけど…!?
「わっ…!」
「リダっ!」
驚きのあまり、つい足を滑らせてしまった。おれの方へ手を伸ばした皇太子殿下の手を咄嗟に握る。その結果、皇太子殿下と共に転んでしまった。水飛沫が上がり、おれたちはビショビショに濡れる。皇太子殿下が身に纏っている白いシャツは、濡れてしまったせいで透けてしまっている。美しい健康的な肌と、綺麗に割れた腹筋が目に入りおれは思わずそれに釘付けとなる。
イケメンの、イケメンの体っ!!!しかも皇太子殿下の!色気ムンムンのあの皇太子殿下のっ!!!
「そんな見んなよ」
「っ…」
濡れた前髪を邪魔そうに掻き上げながら、ニヤリと笑う。
ジークリッドの美しい海も、夕焼けも、街並みも、皇太子殿下の美しさには敵わない。
見んなよと言われれば言われるほど、見てしまうのが人間の心理。穴が空くほどに見つめていると、皇太子殿下がそっと近寄って来た。その動きと共にパシャン、と水が跳ねる。
「こ、皇太子殿下…」
「リダ。俺の名を呼んでくれ」
「…………ル、ルウくん」
かつて、街にお忍びでデートに行ったとき、呼んだ名前。懐かしさを覚えたのか、ルウくんの瞳がそっと細められた。そして、何を思ったのか徐々に顔を近づけてくる。
「え、えっ…ちょっ、んッ」
状況が理解できずあたふたしている間に、唇を奪われてしまった。ルウくんとキスをするのは、これで二度目。だが、一度目とはまた違うキスだ。
「はっ…んっ、」
キスの合間に激しい息継ぎを繰り返す。何度も唇が合わさっては離れていく。唇から伝わってくる熱にドギマギしていると、ルウくんはおれから距離を取った。
急に終わったキスに、またもおれはあたふたとしてしまう。
も、もしかして思いの外よくなかったとか…?おれとのキスが気持ち悪かったとか…!?ルウくんにそんなん思われたら生きていけないよ!?おれ!
悲しみに暮れていると、ルウくんが重々しい溜息をついた。
「俺が悠長にしている間に随分と仕込まれてくれたもんだな」
そんな言葉の後にチッ、と激しい舌打ちが聞こえてきた。
し、仕込まれた?何を言っているの?一体、いつ誰が誰に何を仕込まれたって?
ルウくんはその場で軽々と立ち上がり、おれの腕を無理矢理引っ張り上げた。少しの痛みに眉を顰める。
「な、何なんですかっ!急に!」
「…分かんねぇのか」
「分かんないですよっ!…むぐっ!」
腕を掴んでいない方の手で、ガシッとおれの頬を挟む。
待って。今おれめっちゃブサイクじゃない?イケメンの前でブサイク面するの嫌なんですけどー!!!
抵抗しようにも、全くできない。あまりの力の強さに、恐れ慄く。
「俺が一から仕込み直してやるよ」
「え、」
全く笑っていない目を見て、おれは事の重大さにようやく気がついた。
めちゃめちゃ怒ってらっしゃるっ!!!沸点どこ!?沸点どこよ!!!マジで何が気に食わなかったんだ!?キスが下手すぎたから、仕込み直してやるってこと!?そういうこと!?
ルウくんはおれの腕を引いて、ズカズカと歩き始める。水に濡れてしまったせいで、体が重く感じる。
宿泊先のホテルまで戻り、大勢のスタッフの皆さんに心配されるが、ルウくんは全てを無視する。バスタオルを持って来てくれたり、魔法で乾かしましょう!と申し出てくれるスタッフもいた。しかし、ルウくんはそんな行為をまるで空気のようにしか扱わない。おれはそんな可哀想な人たち一人一人にペコペコと頭を下げる。
最上階の部屋に戻った際には、もうヘトヘトに疲れてしまっていた。
「ルウくん…。先にお風呂に、」
「必要ねぇよ」
いや、あなたは必要なくてもおれは必要ありまくりなんですけど!?このまま風邪引いちゃうとか嫌だよ!
今の空気間の中で、そう反論できるわけもなく…。黙りこくるおれをルウくんは寝室へと引きずる。
「え、ちょっ…!ぁっ」
ドサッ、とベッドへ投げ飛ばされる。ふかふかのベッドが体を支えてくれた。が、残念なことにシーツはベチョベチョに濡れてしまった。ちょっとだけイラッとして、顔を上げる。
「へ、」
するとルウくんは、服を脱いでいた。さっきの状態でも服を着ていないのとほぼ同じ感じだった。しかし、一枚の隔たりがなくなったおかげで、肉体美がよく見える。程よい肌の濃さに、綺麗に割れた腹筋が浮き上がる腹周り。キュッと引き締まった体は、男であれば誰しもが憧れるような美しさだった。
心臓の音がやけにうるさく、脳内に直接響く。
ルウくんは、ただ濡れた服を脱いでいるだけ、だよね?他意なんて、ないよね!?
目の前の肉体美から目を逸らしながらあせあせしていると、ルウくんが笑った気配を感じ取った。
「何人の男を食い散らかしてきたかは知らねぇが、忘れられない夜をくれてやるよ」
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皇太子殿下からの突然のプロポーズを受けた。
共にシルヴェストルを統治する。それは、おれが皇太子妃となり、そして行く行くはシルヴェストル大帝国の皇后となるということ。
おれが、大国の皇后?めちゃめちゃ似合ってない気がするんだけど…!?
「わっ…!」
「リダっ!」
驚きのあまり、つい足を滑らせてしまった。おれの方へ手を伸ばした皇太子殿下の手を咄嗟に握る。その結果、皇太子殿下と共に転んでしまった。水飛沫が上がり、おれたちはビショビショに濡れる。皇太子殿下が身に纏っている白いシャツは、濡れてしまったせいで透けてしまっている。美しい健康的な肌と、綺麗に割れた腹筋が目に入りおれは思わずそれに釘付けとなる。
イケメンの、イケメンの体っ!!!しかも皇太子殿下の!色気ムンムンのあの皇太子殿下のっ!!!
「そんな見んなよ」
「っ…」
濡れた前髪を邪魔そうに掻き上げながら、ニヤリと笑う。
ジークリッドの美しい海も、夕焼けも、街並みも、皇太子殿下の美しさには敵わない。
見んなよと言われれば言われるほど、見てしまうのが人間の心理。穴が空くほどに見つめていると、皇太子殿下がそっと近寄って来た。その動きと共にパシャン、と水が跳ねる。
「こ、皇太子殿下…」
「リダ。俺の名を呼んでくれ」
「…………ル、ルウくん」
かつて、街にお忍びでデートに行ったとき、呼んだ名前。懐かしさを覚えたのか、ルウくんの瞳がそっと細められた。そして、何を思ったのか徐々に顔を近づけてくる。
「え、えっ…ちょっ、んッ」
状況が理解できずあたふたしている間に、唇を奪われてしまった。ルウくんとキスをするのは、これで二度目。だが、一度目とはまた違うキスだ。
「はっ…んっ、」
キスの合間に激しい息継ぎを繰り返す。何度も唇が合わさっては離れていく。唇から伝わってくる熱にドギマギしていると、ルウくんはおれから距離を取った。
急に終わったキスに、またもおれはあたふたとしてしまう。
も、もしかして思いの外よくなかったとか…?おれとのキスが気持ち悪かったとか…!?ルウくんにそんなん思われたら生きていけないよ!?おれ!
悲しみに暮れていると、ルウくんが重々しい溜息をついた。
「俺が悠長にしている間に随分と仕込まれてくれたもんだな」
そんな言葉の後にチッ、と激しい舌打ちが聞こえてきた。
し、仕込まれた?何を言っているの?一体、いつ誰が誰に何を仕込まれたって?
ルウくんはその場で軽々と立ち上がり、おれの腕を無理矢理引っ張り上げた。少しの痛みに眉を顰める。
「な、何なんですかっ!急に!」
「…分かんねぇのか」
「分かんないですよっ!…むぐっ!」
腕を掴んでいない方の手で、ガシッとおれの頬を挟む。
待って。今おれめっちゃブサイクじゃない?イケメンの前でブサイク面するの嫌なんですけどー!!!
抵抗しようにも、全くできない。あまりの力の強さに、恐れ慄く。
「俺が一から仕込み直してやるよ」
「え、」
全く笑っていない目を見て、おれは事の重大さにようやく気がついた。
めちゃめちゃ怒ってらっしゃるっ!!!沸点どこ!?沸点どこよ!!!マジで何が気に食わなかったんだ!?キスが下手すぎたから、仕込み直してやるってこと!?そういうこと!?
ルウくんはおれの腕を引いて、ズカズカと歩き始める。水に濡れてしまったせいで、体が重く感じる。
宿泊先のホテルまで戻り、大勢のスタッフの皆さんに心配されるが、ルウくんは全てを無視する。バスタオルを持って来てくれたり、魔法で乾かしましょう!と申し出てくれるスタッフもいた。しかし、ルウくんはそんな行為をまるで空気のようにしか扱わない。おれはそんな可哀想な人たち一人一人にペコペコと頭を下げる。
最上階の部屋に戻った際には、もうヘトヘトに疲れてしまっていた。
「ルウくん…。先にお風呂に、」
「必要ねぇよ」
いや、あなたは必要なくてもおれは必要ありまくりなんですけど!?このまま風邪引いちゃうとか嫌だよ!
今の空気間の中で、そう反論できるわけもなく…。黙りこくるおれをルウくんは寝室へと引きずる。
「え、ちょっ…!ぁっ」
ドサッ、とベッドへ投げ飛ばされる。ふかふかのベッドが体を支えてくれた。が、残念なことにシーツはベチョベチョに濡れてしまった。ちょっとだけイラッとして、顔を上げる。
「へ、」
するとルウくんは、服を脱いでいた。さっきの状態でも服を着ていないのとほぼ同じ感じだった。しかし、一枚の隔たりがなくなったおかげで、肉体美がよく見える。程よい肌の濃さに、綺麗に割れた腹筋が浮き上がる腹周り。キュッと引き締まった体は、男であれば誰しもが憧れるような美しさだった。
心臓の音がやけにうるさく、脳内に直接響く。
ルウくんは、ただ濡れた服を脱いでいるだけ、だよね?他意なんて、ないよね!?
目の前の肉体美から目を逸らしながらあせあせしていると、ルウくんが笑った気配を感じ取った。
「何人の男を食い散らかしてきたかは知らねぇが、忘れられない夜をくれてやるよ」
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