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第93話
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《RDside》
フェルディナント第一王子殿下、イルちゃんに続き、シルヴェストル大帝国第二皇子であり《濡鴉》の長であるフレイまで夫候補に加わった。
フレイに、正式に結婚を申し込まれてから数日。
皇宮が所有する庭園の中でも、最上級に素晴らしい庭園で、おれは優雅にお茶を飲んでいた。正真正銘、ぼっちティーパーティーだ。
「はぁぁぁぁぁぁぁ…」
溜め込んだ分の幸せも逃げるほどに大きな溜息をついたおれ。
それもそのはずだ。既に、皇宮に留まってからかなりの日数が経っていた。正直に言うと、もうそろそろ限界である。破裂しそうである。セックスをすることによってムラムラは発散できているとしても、引きこもり生活は望んでいない。
カップをポイッと放り投げ、白亜のテーブルに体を預ける。硬い。
「どこかに出かけたいな~」
ふと呟く。完全に独り言のつもりだった。
「ならどっか出かけるか?」
凛とした声が聞こえ、ハッと驚き、振り向く。
ネイビーグレージュの髪がサラサラと流れるように風に揺れる。シルヴェストル皇族直系の証であるアウイナイトの双眸は、眩しいほどに輝いていた。独特の煙草の香りが漂い、皇太子殿下の匂いだ、と思う。
「皇太子殿下。こんにちは」
「あぁ。元気だったか?」
愉快そうに笑う皇太子殿下。
めちゃめちゃ久しぶりに会ったな…。
久々に、皇太子殿下の顔を見ただけで何故か興奮してしまう。イケメンの力が怖いのであって、断じておれが気持ちの悪い変態だからではない。…………変態だけど。
ただ煙草を吸いながら、含みのある顔で笑っているだけなのに、隠し切れていない色気に悩殺されそうになる。と、そのとき、皇太子殿下はスっと口から煙草を抜き取る。
「久々に休暇が取れた。二人で遠出でもしねぇか?」
「遠出…ですか?」
「あぁ」
おれと皇太子殿下の間に、長い沈黙が流れる。至って無表情だが、おれの心の中は吹雪の夜のように荒れていた。
イケメンと?旅行?は?は?????遠出????は???????ほんとに、は???????
意識を軽く飛ばしながら、白目になる。皇太子殿下は不服を抱いたのか、ムッとした表情を浮かべた。
「何だよ…。俺とは行けねぇってか?」
眉間に深い皺を刻み、おれを見つめる皇太子殿下。不機嫌そうだ。
イケメンと旅行なんて大チャンス、逃してたまるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!
おれは、激しく左右に首を振る。
「行く!行きたいです!死んでも行きます!」
全力の叫びに、皇太子殿下はキョトンとする。が、すぐに嬉しそうに口角を上げた。
「はっ、いい返事だ。楽しみにしてろよ」
そして、皇太子殿下はおれの頭にキスを落とした。親愛ともとれる、たったそれだけの行為なのに、おれの胸は酷く震えた。
何今の!?イケメンにのみ許される行い!好き!
相変わらず語彙力が皆無になってしまっているが、そんなことは今更気にしない。
一人で興奮していると、皇太子殿下はおれの首にかかるチェーンをクイッと引っ張った。至近距離で見つめられ、顔が熱くなる。
「こんな安っぽい指輪より、もっと価値のある指輪をくれてやるよ」
耳元で、低い声で囁かれた。
「へ…」
「期待してろよ、リダ」
それだけ言うと、皇太子殿下は背を向けて去っていった。皇太子殿下の背中が見えなくなった辺りで、おれは思いっきり叫んだ。
「ふぁぁっ!?!?!?!?!?」
座っていた椅子から転げ落ち、地面をのたうち回る。
こんなところをカタリナにでも見られてしまえば、冷たい目で「何してるんですか」と言われるだろうけど、今はそんなことどうでもいい!
とにかく興奮を抑えなければ!と思い、目に入った近くの草むらに頭を突っ込む。何故、それが最適だと思ったのかは分からないけど…!!!
ノルとのお揃いの指輪を安っぽい指輪と言われたのは悲しいけど、皇太子殿下に指輪を貰えるのは嬉し過ぎて死にそうだ。
「もう好きぃ!!!」
「何してるんですか…」
堪らず再び叫ぶと、氷のように冷たい声が聞こえた。
恐れたことが起こってしまった…。
おれの精神状態を危惧したカタリナに、草むらの中から引っ張り出されるのであった。
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フェルディナント第一王子殿下、イルちゃんに続き、シルヴェストル大帝国第二皇子であり《濡鴉》の長であるフレイまで夫候補に加わった。
フレイに、正式に結婚を申し込まれてから数日。
皇宮が所有する庭園の中でも、最上級に素晴らしい庭園で、おれは優雅にお茶を飲んでいた。正真正銘、ぼっちティーパーティーだ。
「はぁぁぁぁぁぁぁ…」
溜め込んだ分の幸せも逃げるほどに大きな溜息をついたおれ。
それもそのはずだ。既に、皇宮に留まってからかなりの日数が経っていた。正直に言うと、もうそろそろ限界である。破裂しそうである。セックスをすることによってムラムラは発散できているとしても、引きこもり生活は望んでいない。
カップをポイッと放り投げ、白亜のテーブルに体を預ける。硬い。
「どこかに出かけたいな~」
ふと呟く。完全に独り言のつもりだった。
「ならどっか出かけるか?」
凛とした声が聞こえ、ハッと驚き、振り向く。
ネイビーグレージュの髪がサラサラと流れるように風に揺れる。シルヴェストル皇族直系の証であるアウイナイトの双眸は、眩しいほどに輝いていた。独特の煙草の香りが漂い、皇太子殿下の匂いだ、と思う。
「皇太子殿下。こんにちは」
「あぁ。元気だったか?」
愉快そうに笑う皇太子殿下。
めちゃめちゃ久しぶりに会ったな…。
久々に、皇太子殿下の顔を見ただけで何故か興奮してしまう。イケメンの力が怖いのであって、断じておれが気持ちの悪い変態だからではない。…………変態だけど。
ただ煙草を吸いながら、含みのある顔で笑っているだけなのに、隠し切れていない色気に悩殺されそうになる。と、そのとき、皇太子殿下はスっと口から煙草を抜き取る。
「久々に休暇が取れた。二人で遠出でもしねぇか?」
「遠出…ですか?」
「あぁ」
おれと皇太子殿下の間に、長い沈黙が流れる。至って無表情だが、おれの心の中は吹雪の夜のように荒れていた。
イケメンと?旅行?は?は?????遠出????は???????ほんとに、は???????
意識を軽く飛ばしながら、白目になる。皇太子殿下は不服を抱いたのか、ムッとした表情を浮かべた。
「何だよ…。俺とは行けねぇってか?」
眉間に深い皺を刻み、おれを見つめる皇太子殿下。不機嫌そうだ。
イケメンと旅行なんて大チャンス、逃してたまるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!
おれは、激しく左右に首を振る。
「行く!行きたいです!死んでも行きます!」
全力の叫びに、皇太子殿下はキョトンとする。が、すぐに嬉しそうに口角を上げた。
「はっ、いい返事だ。楽しみにしてろよ」
そして、皇太子殿下はおれの頭にキスを落とした。親愛ともとれる、たったそれだけの行為なのに、おれの胸は酷く震えた。
何今の!?イケメンにのみ許される行い!好き!
相変わらず語彙力が皆無になってしまっているが、そんなことは今更気にしない。
一人で興奮していると、皇太子殿下はおれの首にかかるチェーンをクイッと引っ張った。至近距離で見つめられ、顔が熱くなる。
「こんな安っぽい指輪より、もっと価値のある指輪をくれてやるよ」
耳元で、低い声で囁かれた。
「へ…」
「期待してろよ、リダ」
それだけ言うと、皇太子殿下は背を向けて去っていった。皇太子殿下の背中が見えなくなった辺りで、おれは思いっきり叫んだ。
「ふぁぁっ!?!?!?!?!?」
座っていた椅子から転げ落ち、地面をのたうち回る。
こんなところをカタリナにでも見られてしまえば、冷たい目で「何してるんですか」と言われるだろうけど、今はそんなことどうでもいい!
とにかく興奮を抑えなければ!と思い、目に入った近くの草むらに頭を突っ込む。何故、それが最適だと思ったのかは分からないけど…!!!
ノルとのお揃いの指輪を安っぽい指輪と言われたのは悲しいけど、皇太子殿下に指輪を貰えるのは嬉し過ぎて死にそうだ。
「もう好きぃ!!!」
「何してるんですか…」
堪らず再び叫ぶと、氷のように冷たい声が聞こえた。
恐れたことが起こってしまった…。
おれの精神状態を危惧したカタリナに、草むらの中から引っ張り出されるのであった。
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