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第82話
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《RDside》
フェルディナント第一王子殿下の助けもあり、何とか無事にシルヴェストル魔法学院へと戻って来たおれ。
学院長室で待っていた師匠に声をかける。
「師匠!ご無事ですか!?」
「あぁ。大丈夫じゃよ。リダの方こそ、無事かの?」
「もちろんです!」
師匠の無事に一安心する。
《テリオン教》の目的は、おれの身柄だけ。さすがに師匠には、手を出さなかったようだ。本当に良かった。師匠は、おれの母の師匠でもあるから…。
「フェルディナント第一王子殿下がリダの魔力の痕跡を追って助けに行ってくれたんじゃな…。わしが意識を失っている間に…。フェルディナント第一王子殿下。礼を言う。本当にありがとう」
師匠の言葉に、フェルディナント第一王子殿下は、口角を吊り上げてニヤニヤと笑っていた。
え、何そのドヤ顔…。しかも嬉しさが隠し切れてないせいで、キモくてやばい人みたいな感じになってるけど、大丈夫そ?イケメンなことに変わりはないけど、何かイラッとするわ~。だけど、おれはフェルディナント第一王子殿下に助けてもらった身だし、礼は言っとくべきだよね。それが道理ってもんよ!!!
おれは、フェルディナント第一王子殿下に向き直り、素直に頭を下げた。
「助けてくださり、ありがとうございました」
フェルディナント第一王子殿下がいなければ、おれはどうなっていたことか…。あのまま《テリオン教》に好き勝手にされていたかもしれない。
とりあえず今回のことで、《テリオン教》がおれの体を使って、召喚魔法の魔法儀式をしようとしていたことだけは分かった。もしかしたら、この世ならざるものを召喚しようとしているのかもしれない。それもかなりのヤバいやつを…。
物思いに耽っていると、フェルディナント第一王子殿下は、コホンと咳払いをするのが聞こえた。
「やめろ。先程も言った通り、妻を助けるのは夫の役目だ」
「…………え?」
「その言ったっけ?みたいな顔をやめんか!!!」
鋭いツッコミを受けて、おれはすんっと真顔になる。
本当に、おれの夫になるつもりなんだ…この人。ちょっと半信半疑だった部分もあったんだけど、今の表情を見る限り嘘ではなかったんだね。
おれは、フェルディナント第一王子殿下の大きな手をそっと握る。
「末永く、よろしくお願いしますね。旦那様♡」
「…………………っ!?!?!?」
いや、反応おそ。
顔を真っ赤にさせながら「旦那様などっ!」と、何か抗議をしようとしてくるが、その先の言葉が見つからないのか、黙り込んでしまった。
前も思ったけど、フェルディナント第一王子殿下ってめちゃめちゃ初だよね…。
未来の旦那様とイチャイチャしていると、師匠から横槍が入る。
「魔法学院も危険だと言うことが分かったんじゃ。リダは暫し、皇宮から出ない方が良さそうじゃな」
「確かに…。魔法を使えない空間を創る魔法なんてものを使われちゃったら、おれに勝ち目ないも~ん☆」
ヘラヘラと笑いながらそう言うと、師匠は困った、とでも言うような苦笑いを浮かべた。
《テリオン教》にも師匠と同じ魔法を使う魔法使いまたは魔女がいる。しかもそれを遠隔で行える者が…。師匠よりもやばいヤツじゃね?それを踏まえても、やっぱり危険なところには来ない方が良さそう。今のところ皇宮も安全かは分からないけど、皇太子殿下やフレイ、ノルやフェルディナント第一王子殿下がいるなら、危険は少ない。狙ってくる確率も低い。そう、信じたいけどね。
「しばらくは皇宮にいることにしますね!教師の仕事は難しくなっちゃいますけど、今回の騒動が解決したらまた復帰します!」
「よろしく頼んだぞ。リダ」
「はい!」
元気よく返事をして、フェルディナント第一王子殿下を連れて学院長室を後にする。
「学院長とは、もう長いのか?」
「あぁ…そうですね。おれの母親も師匠の弟子なので」
「母…。あの大魔女シャルロディーテか」
ポツリと呟かれる名前。
かつては、大魔女と言われるまでの女性だった母。今ではすっかりと影を潜めてしまったけれど…。
フェルディナント第一王子殿下は、辺りを見回して誰もいないことを確認すると、おれの耳元でそっと囁いた。
「それにしても、あの老いぼれ。何処か怪しいとは思わないか?」
美貌が歪められる。その言葉に対しふざけているの?と思ったが、アクアマリンの瞳は、至って真剣な色を滲ませている。
師匠が怪しい?どうして?どうしてそう思うの?
師匠は、いつだっておれのことを助けてくれていた。ユージンやアリアーナ嬢の策略にハマり、誘拐されたときだって…。
「やめてください。師匠は怪しくなんてない」
フェルディナント第一王子殿下を睨みつける。強がりにも近い行動だが、今はそれを聞きたくなかった。
魔法を使えない空間を創る魔法。師匠が作った、師匠にしか使えない魔法。師匠と二人でいるときに、何故そんな魔法が発動されたのか………。いや、そんなわけない。ありえない話だ。
考えを一掃して、背を向けて歩き出すおれを、フェルディナント第一王子殿下がどんな顔で見ているかも知らずに…。
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フェルディナント第一王子殿下の助けもあり、何とか無事にシルヴェストル魔法学院へと戻って来たおれ。
学院長室で待っていた師匠に声をかける。
「師匠!ご無事ですか!?」
「あぁ。大丈夫じゃよ。リダの方こそ、無事かの?」
「もちろんです!」
師匠の無事に一安心する。
《テリオン教》の目的は、おれの身柄だけ。さすがに師匠には、手を出さなかったようだ。本当に良かった。師匠は、おれの母の師匠でもあるから…。
「フェルディナント第一王子殿下がリダの魔力の痕跡を追って助けに行ってくれたんじゃな…。わしが意識を失っている間に…。フェルディナント第一王子殿下。礼を言う。本当にありがとう」
師匠の言葉に、フェルディナント第一王子殿下は、口角を吊り上げてニヤニヤと笑っていた。
え、何そのドヤ顔…。しかも嬉しさが隠し切れてないせいで、キモくてやばい人みたいな感じになってるけど、大丈夫そ?イケメンなことに変わりはないけど、何かイラッとするわ~。だけど、おれはフェルディナント第一王子殿下に助けてもらった身だし、礼は言っとくべきだよね。それが道理ってもんよ!!!
おれは、フェルディナント第一王子殿下に向き直り、素直に頭を下げた。
「助けてくださり、ありがとうございました」
フェルディナント第一王子殿下がいなければ、おれはどうなっていたことか…。あのまま《テリオン教》に好き勝手にされていたかもしれない。
とりあえず今回のことで、《テリオン教》がおれの体を使って、召喚魔法の魔法儀式をしようとしていたことだけは分かった。もしかしたら、この世ならざるものを召喚しようとしているのかもしれない。それもかなりのヤバいやつを…。
物思いに耽っていると、フェルディナント第一王子殿下は、コホンと咳払いをするのが聞こえた。
「やめろ。先程も言った通り、妻を助けるのは夫の役目だ」
「…………え?」
「その言ったっけ?みたいな顔をやめんか!!!」
鋭いツッコミを受けて、おれはすんっと真顔になる。
本当に、おれの夫になるつもりなんだ…この人。ちょっと半信半疑だった部分もあったんだけど、今の表情を見る限り嘘ではなかったんだね。
おれは、フェルディナント第一王子殿下の大きな手をそっと握る。
「末永く、よろしくお願いしますね。旦那様♡」
「…………………っ!?!?!?」
いや、反応おそ。
顔を真っ赤にさせながら「旦那様などっ!」と、何か抗議をしようとしてくるが、その先の言葉が見つからないのか、黙り込んでしまった。
前も思ったけど、フェルディナント第一王子殿下ってめちゃめちゃ初だよね…。
未来の旦那様とイチャイチャしていると、師匠から横槍が入る。
「魔法学院も危険だと言うことが分かったんじゃ。リダは暫し、皇宮から出ない方が良さそうじゃな」
「確かに…。魔法を使えない空間を創る魔法なんてものを使われちゃったら、おれに勝ち目ないも~ん☆」
ヘラヘラと笑いながらそう言うと、師匠は困った、とでも言うような苦笑いを浮かべた。
《テリオン教》にも師匠と同じ魔法を使う魔法使いまたは魔女がいる。しかもそれを遠隔で行える者が…。師匠よりもやばいヤツじゃね?それを踏まえても、やっぱり危険なところには来ない方が良さそう。今のところ皇宮も安全かは分からないけど、皇太子殿下やフレイ、ノルやフェルディナント第一王子殿下がいるなら、危険は少ない。狙ってくる確率も低い。そう、信じたいけどね。
「しばらくは皇宮にいることにしますね!教師の仕事は難しくなっちゃいますけど、今回の騒動が解決したらまた復帰します!」
「よろしく頼んだぞ。リダ」
「はい!」
元気よく返事をして、フェルディナント第一王子殿下を連れて学院長室を後にする。
「学院長とは、もう長いのか?」
「あぁ…そうですね。おれの母親も師匠の弟子なので」
「母…。あの大魔女シャルロディーテか」
ポツリと呟かれる名前。
かつては、大魔女と言われるまでの女性だった母。今ではすっかりと影を潜めてしまったけれど…。
フェルディナント第一王子殿下は、辺りを見回して誰もいないことを確認すると、おれの耳元でそっと囁いた。
「それにしても、あの老いぼれ。何処か怪しいとは思わないか?」
美貌が歪められる。その言葉に対しふざけているの?と思ったが、アクアマリンの瞳は、至って真剣な色を滲ませている。
師匠が怪しい?どうして?どうしてそう思うの?
師匠は、いつだっておれのことを助けてくれていた。ユージンやアリアーナ嬢の策略にハマり、誘拐されたときだって…。
「やめてください。師匠は怪しくなんてない」
フェルディナント第一王子殿下を睨みつける。強がりにも近い行動だが、今はそれを聞きたくなかった。
魔法を使えない空間を創る魔法。師匠が作った、師匠にしか使えない魔法。師匠と二人でいるときに、何故そんな魔法が発動されたのか………。いや、そんなわけない。ありえない話だ。
考えを一掃して、背を向けて歩き出すおれを、フェルディナント第一王子殿下がどんな顔で見ているかも知らずに…。
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