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第80話
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《RDside》
「アレルはどうかね」
「クラスメイトとも話していますし、授業にも積極的に参加しているので、意欲は見られます」
シルヴェストル魔法学院学院長室で師匠とお茶をしている。 ちなみに今日は、フェルディナント第一王子殿下は、皇帝陛下との謁見があるとかで、席を外している。
いや、別に寂しくないからね!?
アレル王太子殿下についておれからの報告を受けた師匠は、安心しきったように笑った。
「ヘドゥーシャ王国の王太子とだけあって魔法の才能はあります。将来的には期待できる魔法使いですよ」
しかもめちゃめちゃめちゃめちゃイケメンになってて、美形に磨きがかかりまくってるせいで、最近見つめるのも辛いです!!!
淡々と報告してはいるが、心の中は荒れまくっている。お茶を飲もうと、カップに手をかけ口につけたその瞬間________。
「ぐっ…!」
突如師匠が椅子から転げ落ち、床で悶え始めた。おれは「ぶっ!」とお茶を吐き出してしまった。
え、!?急に何!?師匠もアレル王太子殿下の美貌にみ悶えちゃってるわけ!?
師匠は、胸を押さえ苦しそうにしている。どうやら別にアレル王太子殿下は関係ないらしい。
おれのバカ!!!師匠の命の危機に何てことを考えてるんだ!!!
「師匠っ!大丈夫ですか!?」
おれは師匠に駆け寄り、その大きな体を支える。
「し、んぱい…する、でない…」
「どの口が言うとんじゃアホォ!!!」
思わず鋭いツッコミをしながら師匠の頭を思いっきりチョップした。師匠は、ゆらゆらと揺れてその場に倒れてしまった。完全に意識を飛ばしたらしい。
え、おれが悪いの?え?おれが悪い?マジ?
咄嗟に治癒魔法を使おうとするが、何故か無効化されてしまう。
どうして…。
そこまで考えたところで目の前が大きく歪み、視界が暗くなっていく。
「あれ、何かおれも…意識が…」
完全に意識をなくしてしまった…。
死ぬなよ、おれ!
と、自分に言い聞かせたとき、ハッと目が覚めた。
あれ、ここどこ?
「…………本当にどこ?」
太陽の光が一切届かない青みがかった洞窟。原石のようなものが光り輝きながら、おれを見下ろしていた。瞬時に、おれは自身が攫われたのだと理解する。
また攫われたんか、おれ。一緒にいた師匠は、大丈夫かな?
もう年齢的にも身体的にもおじいちゃんな、師匠を心配する。すると、どこからともなく低い声が聞こえてきた。
『リダ・セヴェール・レヴィス・シルヴェストル。シルヴェストル皇族が一人。当代随一の大魔法使い』
「その通りなんだけど…誰?」
『おまえはもう私たちの監視下にある。魔法を使い、逃げようとしても無駄だ。おまえはここから…逃げられない』
その言葉通り、おれは相変わらず魔法が使えない状態になっていた。
何か、この感じ、どこかで…。あっ!ノルと初めて触れ合ったときに発動していた師匠の魔法じゃん!!!
魔法の干渉を一切受けない魔法ではなく、魔法自体の発動を封じるための魔法。
師匠と同じような魔法を扱う魔法使いが、他にいるんだ…。世界は案外広いのかもしれない。まぁ、おれが最強なことに変わりはないけど。
声の主は、おれのこもを「当代随一の大魔法使い」と言った。師匠ではなく、おれのことを…。おれでならなければいけない理由があるの?目的はおれの魔力か、はたまたシルヴェストルの血か。おれを狙ってきたということは、この声の主の正体は、間違いなく《テリオン教》の人間だろう。《アルムグリスト》ではなく、《テリオン教》が直接手を出してきたか。
『おまえには、我らの野望の糧となってもらう!』
男がそう叫んだ瞬間、おれの足元に広がる大魔法陣。
多くの魔法使いと魔女の声が重なり、聴こえてくる。長い長い詠唱。
おれは今、集団による魔法儀式の中にいるのか!この連中らが言った「糧」とは一体どう言う意味なわけ…?ていうか、今おれ魔法使えないからやばくね?え!?命の危機!?師匠より早く死んじゃうじゃんおれ!
「だ、だれ…か!」
掠れた声で助けを呼ぼうとしたそのとき、バリィィン!と激しい音と共に、大魔法陣が破壊された。
何者かの手によって…_____。
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「アレルはどうかね」
「クラスメイトとも話していますし、授業にも積極的に参加しているので、意欲は見られます」
シルヴェストル魔法学院学院長室で師匠とお茶をしている。 ちなみに今日は、フェルディナント第一王子殿下は、皇帝陛下との謁見があるとかで、席を外している。
いや、別に寂しくないからね!?
アレル王太子殿下についておれからの報告を受けた師匠は、安心しきったように笑った。
「ヘドゥーシャ王国の王太子とだけあって魔法の才能はあります。将来的には期待できる魔法使いですよ」
しかもめちゃめちゃめちゃめちゃイケメンになってて、美形に磨きがかかりまくってるせいで、最近見つめるのも辛いです!!!
淡々と報告してはいるが、心の中は荒れまくっている。お茶を飲もうと、カップに手をかけ口につけたその瞬間________。
「ぐっ…!」
突如師匠が椅子から転げ落ち、床で悶え始めた。おれは「ぶっ!」とお茶を吐き出してしまった。
え、!?急に何!?師匠もアレル王太子殿下の美貌にみ悶えちゃってるわけ!?
師匠は、胸を押さえ苦しそうにしている。どうやら別にアレル王太子殿下は関係ないらしい。
おれのバカ!!!師匠の命の危機に何てことを考えてるんだ!!!
「師匠っ!大丈夫ですか!?」
おれは師匠に駆け寄り、その大きな体を支える。
「し、んぱい…する、でない…」
「どの口が言うとんじゃアホォ!!!」
思わず鋭いツッコミをしながら師匠の頭を思いっきりチョップした。師匠は、ゆらゆらと揺れてその場に倒れてしまった。完全に意識を飛ばしたらしい。
え、おれが悪いの?え?おれが悪い?マジ?
咄嗟に治癒魔法を使おうとするが、何故か無効化されてしまう。
どうして…。
そこまで考えたところで目の前が大きく歪み、視界が暗くなっていく。
「あれ、何かおれも…意識が…」
完全に意識をなくしてしまった…。
死ぬなよ、おれ!
と、自分に言い聞かせたとき、ハッと目が覚めた。
あれ、ここどこ?
「…………本当にどこ?」
太陽の光が一切届かない青みがかった洞窟。原石のようなものが光り輝きながら、おれを見下ろしていた。瞬時に、おれは自身が攫われたのだと理解する。
また攫われたんか、おれ。一緒にいた師匠は、大丈夫かな?
もう年齢的にも身体的にもおじいちゃんな、師匠を心配する。すると、どこからともなく低い声が聞こえてきた。
『リダ・セヴェール・レヴィス・シルヴェストル。シルヴェストル皇族が一人。当代随一の大魔法使い』
「その通りなんだけど…誰?」
『おまえはもう私たちの監視下にある。魔法を使い、逃げようとしても無駄だ。おまえはここから…逃げられない』
その言葉通り、おれは相変わらず魔法が使えない状態になっていた。
何か、この感じ、どこかで…。あっ!ノルと初めて触れ合ったときに発動していた師匠の魔法じゃん!!!
魔法の干渉を一切受けない魔法ではなく、魔法自体の発動を封じるための魔法。
師匠と同じような魔法を扱う魔法使いが、他にいるんだ…。世界は案外広いのかもしれない。まぁ、おれが最強なことに変わりはないけど。
声の主は、おれのこもを「当代随一の大魔法使い」と言った。師匠ではなく、おれのことを…。おれでならなければいけない理由があるの?目的はおれの魔力か、はたまたシルヴェストルの血か。おれを狙ってきたということは、この声の主の正体は、間違いなく《テリオン教》の人間だろう。《アルムグリスト》ではなく、《テリオン教》が直接手を出してきたか。
『おまえには、我らの野望の糧となってもらう!』
男がそう叫んだ瞬間、おれの足元に広がる大魔法陣。
多くの魔法使いと魔女の声が重なり、聴こえてくる。長い長い詠唱。
おれは今、集団による魔法儀式の中にいるのか!この連中らが言った「糧」とは一体どう言う意味なわけ…?ていうか、今おれ魔法使えないからやばくね?え!?命の危機!?師匠より早く死んじゃうじゃんおれ!
「だ、だれ…か!」
掠れた声で助けを呼ぼうとしたそのとき、バリィィン!と激しい音と共に、大魔法陣が破壊された。
何者かの手によって…_____。
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