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第79話

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《RDside》

 シルヴェストル魔法学院での仕事を終え、皇宮へと帰って来たその夜のこと。

「リダ様」
「何~」
「フェルディナント第一王子殿下がお訪ねにございます。御案内致しますか?」
「え…!?」

 カタリナの言葉に耳を疑うおれ。
 時間帯としてはまだそんなに遅くはない。しかし、外はすっかり暗く、子供たちは眠る時間だ。
 いや、いやいやいや。まさかね。フェルディナント第一王子殿下に限って、そんなことはないさ。
 自己完結させて、カタリナにフェルディナント第一王子殿下を招き入れるように伝える。

「こんな夜更けにどうされたのですか?フェルディナント第一王子殿下」

 恐る恐る部屋の中へと入って来たフェルディナント第一王子殿下に問いかける。いつも着ている服よりも更にゆったりとした寝間着だ。下手したら、少し前屈みになっただけでも胸元が「わお~♡」と見えてしまいそう。

「少し、話をしたいと思ってな…」

 白い頬を赤らめて、少しモジモジしている。
 大男の部類に入るイケメンがモジモジしているとか、何かここに、こう…来るものがあるね!!!…………みんな、今のは忘れてくれ。
 フェルディナント第一王子殿下はソファーに座り、堂々と足を組んだ。

「ここ数日、おまえの教師としての姿を拝見した」
「そう、ですね…?」
「……………………」
「……………………」
「……………………その…」
「何ですか?」
「その…な、…」

 恥ずかしいのか、なかなか本題を口にしないフェルディナント第一王子殿下。
 いや、どんなけ焦らしプレイするつもりなん!?さっさと言ってくれん!?そんな顔真っ赤にさせてモジモジされると、何かあかんことを考えてしまうんだけと!!!バカ!!!いやでも、悶える姿も良い!!!それは認めるよ!!!
 クソデカボイスで、心の中で叫ぶ。

「…………………」

 まだ何も言わないフェルディナント第一王子殿下。
 ていうか、そこまでになるほどに言い難いことって何なの?………はっ!もしかして、結婚して欲しいとかいうプロポーズ!?フェルディナント第一王子殿下は、面倒な性格だけどそれを打ち消すくらいに顔がいい。きっとその緩い服の下に隠れたブツも立派そうだから、ドンと来いだよ!?ほら!言ってみ!おれに言ってみ!ゆあはーとをおーぷんしてごらん!!!
 と、興奮を全開にしたそのとき。

「す、素晴らしいと思った!」
「………………ぇ…」

 微かな掠れ声。沈黙が流れる空間。
 え、それだけ…。え?それだけ???
 おれは、ポケーっと間抜け顔を晒す。

「おまえとなら、夫婦になってやってもいいとも思った!」
「あ、はい」

 一気に、興奮が鎮火してしまった。
 夫婦になってやってもいいと思った、か。全然そそられない言葉だなぁ。結婚して欲しいって言われたらドンと来い!って叫んでただろうけど、やっぱり何か上から目線なところが鼻につく。まぁそれが彼のいいところだと思うんだけどね?ツンデレで、少しは可愛いし。

「僕にそう思わせたのだぞ?もっと誇って良い!」
「別に誇れることではないんですけど」
「っ…!?おまえ!僕からの好意を蔑ろにするつもりか!?」
「そういうわけではないですね、はい」

 冷静に受け答えすると、フェルディナント第一王子殿下は悔しそうに唇を噛み締めた。
 プロポーズだと思ったのに、少し残念…。いや、プロポーズなのかな?ちょっと違うけど。
 ユージンからは明確な告白をされているし、ノルからも告白兼プロポーズ的なものをされている。イケメンたちからアプローチされて、はわわわ~!の状態だ。だけど、何かと悪い気はしていないし、むしろこれでいいんじゃないかとも思ってしまっている。
 イケメンが好きなだけでゲイではないから、男と結婚するのは嫌だ!って思ってたのに、今では別にそれでも構わない。というか、おれにはその道しか残されていないしね…!!!
 毎日イケメンを拝みながら魔法で無双して、ルイード先生が信じてくれたように母の罪も晴らすことができたら、真の最強だよ!!

「リダ」
「はい?…え、ちょ…」

 思ったよりも近くで聞こえた声に振り向くと、おれが座っていた側のソファーに腰掛けるフェルディナント第一王子殿下。
 一気に距離詰めてくるやん…。

「え、何ですか?」
「その…手を繋いでみてもいいだろうか…」
「…………きゅん」
「きゅん?」
「ナンデモアリマセン」

 思わず口から飛び出てしまった声を咄嗟に否定する。
 初すぎるフェルディナント第一王子殿下に、心を射抜かれてしまったよ今!!!やばい、鼻息が荒くなってきた。
 ふんすふんすし始めたおれは、それを隠すために、フェルディナント第一王子殿下の手をガシッと掴む。

「いくらでも繋いだるわボケェ!!!」

 どこぞの照れヤンキーのように叫んだおれに、フェルディナント第一王子殿下は再び、ぽっと頬を赤くした。
 いや可愛いいぃぃぃぃぃぃぃぃ~~~!!!!!!





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