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第75話
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《RDside》
「おい、」
「……………………」
「おい!」
「……………………」
「リダ!!!」
「リダは何も聞こえておりません」
「聞こえているではないかっ!」
耳元で大声で叫ばれ、おれは思わず両耳を塞ぐ。その行為が気に入らなかったのか、更にキレ散らかすフェルディナント第一王子殿下。
「この僕を無視するとは…。こうしてやる!」
「へっ!?」
脇の下を抱えられ、擽られる。驚いたおれは思わず仰け反り、地面をのたうち回る。フェルディナント第一王子殿下は、動きを止めることなくおれを押し倒したまま、ゲスの笑みを浮かべた。
「ちょっ、ほんと!ダメっ…!」
「フハハハッ!もっと無様になれ!」
悪役のセリフを叫んだフェルディナント第一王子殿下の手をグッと掴むが、止めてくれる気配はない。
だめ、やばい。リダの体がまさか、こんなにこしょこしょが効く体とは。油断していた…!!!
息も絶え絶えになり、涙が滲んだ瞳でフェルディナント第一王子殿下を見上げた。
「も、もう、止めて…」
「っ!?!?!?」
ゲスの笑みは一瞬で消え去る。白い頬が見る見るうちに、赤く染っていく様を見つめる。
イケメンのめちゃめちゃに可愛い顔。心の内にあった虐めたいという感情がブワッと溢れ出した。
おれは、フェルディナント第一王子殿下の首にするりと自身の腕を回す。そして、力一杯引き寄せた。
「っ…」
「こんなことで顔を真っ赤にしちゃうなんて、意外と初なんですね?フェルディナント第一王子殿下」
形の良い耳に息を吹きかけるように甘い甘い声で囁くと、フェルディナント第一王子殿下は分かりやすく体を跳ね上がらせた。おれは、更に虐めてやろうと思う。逞しい腰に手を添えて優しく撫でる。
あら、やだ。とても逞しい体♡
「こ、婚前交渉は駄目だ!」
フェルディナント第一王子殿下が目をぎゅっと瞑り、そう叫んだそのとき。ノックもなしに、扉がガチャリと開けられた。
ノックもしないとは、無礼過ぎん?おれが言えんけど!
「おまえらは何をしてる…」
聞き覚えのある声。チラッと覗くと、そこには、額に血管を浮き上がらせた男がいた。明らかに怒りが滲むアウイナイトの瞳は、一心にフェルディナント第一王子殿下を見つめている。
「こ、皇太子殿下!」
「フェルディナント。今すぐリダから離れろ」
部屋の温度が急激に下がる。ドスの効いた声を発した皇太子殿下に、さすがのフェルディナント第一王子殿下も恐れたのか、ぴゃっと素早くおれの上から退いた。
「ル、ルシウス…!これは誤解だ!僕は決して婚前交渉をしようとなど思っていない…!!!」
え!?否定するとこそこじゃないよ!?!?!?ちゃんと弁明しなきゃ!どうしてこうなったのか!婚前交渉するつもりじゃなかったなんて言ってしまえば、逆に怪しいからね!?マジでさっきから思ってたけど、この人アホなんかな…。
フェルディナント第一王子殿下の年齢は、二十四。皇太子殿下とは同い年で昔からも仲が割と良いのだけど。今回ばかりはそうとはいかないらしい。
「婚前交渉…だと?どういうことだ」
「ど、どういうことって…僕はいずれリダの夫となるから…」
「………………………………はぁぁぁぁ」
長い沈黙の後、隠すこともなく大きい溜息をついた皇太子殿下。そういうことか、とでも言いたげな表情だ。皇帝陛下の仕業であると、粗方予想は着いたのだろう。
「言っとくがフェルディナント。リダの夫は一人じゃねえぞ」
「……は?一人じゃない?」
「おまえだけじゃねえっつってんだ」
皇太子殿下は、ガシガシと頭を搔く。フェルディナント第一王子殿下は、言葉の意味が分からず「ボクダケジャナイ…ワッツ?」と謎の言葉を発している。
「リティヤーラ聖王国が一夫一妻なのは知っている。だが、シルヴェストル大帝国は権力者にのみ、子孫繁栄のため多くの伴侶を迎えることを許されている。リダは歴史に類を見ない、最強の魔法使いだ。その血を絶やしてはいけないと、何人かの伴侶を迎えることを認められた」
「そ、そんな…だ、誰によってですか?」
「皇帝陛下しかいないだろ。ほら、証拠だ」
おれは震え混じりに「ソンナハズハナイ…」と呟く。地面から立ち上がり、皇太子殿下が差し出す紙を受け取った。
簡単にザッと目を通す。内容はこうだ。シルヴェストル皇族が一人。リダ・セヴェール・レヴィス・シルヴェストルは、歴史上最強の魔法使いのため、その子孫を繁栄させる必要がある。よって、多夫制度を認める。そして、リダ・セヴェール・レヴィス・シルヴェストルに限り、複数の地位(例:皇后、王妃、大公夫人など)を所有することを認める。
…………………………は?
「あれ、あれぇ?結婚するのは、おれの身の安全のためとか言ってなかったっけ?え?おかしいなぁ」
必死に首を捻る。正直頭の中は大混乱だ。
おれの意思は関係ない。皇帝陛下の一存だけでこんなにも大事なことを許してしまうなんて。
皇太子殿下は、おれの手から紙を奪い去り、フェルディナント第一王子殿下に手渡す。
「フェルディナント。その話の上で、リダと結婚するかしないか、よく考えろ」
そう言うと、フェルディナント第一王子殿下はグッと唇を噛み締めて目線を下に落とした。
自らのたった一人の伴侶を永遠に愛す風習のリティヤーラ聖王国。権力者にのみ複数の伴侶を持つことを許されるシルヴェストル大帝国。
フェルディナント第一王子殿下からしたら、この話を知る前におれと結婚することを決断して、遠くの地からここまでやって来たのだ。侮辱もいいところだろう。
しかし、ここでの皇帝陛下の決定は絶対。
一体どうするのだろう、フェルディナント第一王子殿下は…。
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「おい、」
「……………………」
「おい!」
「……………………」
「リダ!!!」
「リダは何も聞こえておりません」
「聞こえているではないかっ!」
耳元で大声で叫ばれ、おれは思わず両耳を塞ぐ。その行為が気に入らなかったのか、更にキレ散らかすフェルディナント第一王子殿下。
「この僕を無視するとは…。こうしてやる!」
「へっ!?」
脇の下を抱えられ、擽られる。驚いたおれは思わず仰け反り、地面をのたうち回る。フェルディナント第一王子殿下は、動きを止めることなくおれを押し倒したまま、ゲスの笑みを浮かべた。
「ちょっ、ほんと!ダメっ…!」
「フハハハッ!もっと無様になれ!」
悪役のセリフを叫んだフェルディナント第一王子殿下の手をグッと掴むが、止めてくれる気配はない。
だめ、やばい。リダの体がまさか、こんなにこしょこしょが効く体とは。油断していた…!!!
息も絶え絶えになり、涙が滲んだ瞳でフェルディナント第一王子殿下を見上げた。
「も、もう、止めて…」
「っ!?!?!?」
ゲスの笑みは一瞬で消え去る。白い頬が見る見るうちに、赤く染っていく様を見つめる。
イケメンのめちゃめちゃに可愛い顔。心の内にあった虐めたいという感情がブワッと溢れ出した。
おれは、フェルディナント第一王子殿下の首にするりと自身の腕を回す。そして、力一杯引き寄せた。
「っ…」
「こんなことで顔を真っ赤にしちゃうなんて、意外と初なんですね?フェルディナント第一王子殿下」
形の良い耳に息を吹きかけるように甘い甘い声で囁くと、フェルディナント第一王子殿下は分かりやすく体を跳ね上がらせた。おれは、更に虐めてやろうと思う。逞しい腰に手を添えて優しく撫でる。
あら、やだ。とても逞しい体♡
「こ、婚前交渉は駄目だ!」
フェルディナント第一王子殿下が目をぎゅっと瞑り、そう叫んだそのとき。ノックもなしに、扉がガチャリと開けられた。
ノックもしないとは、無礼過ぎん?おれが言えんけど!
「おまえらは何をしてる…」
聞き覚えのある声。チラッと覗くと、そこには、額に血管を浮き上がらせた男がいた。明らかに怒りが滲むアウイナイトの瞳は、一心にフェルディナント第一王子殿下を見つめている。
「こ、皇太子殿下!」
「フェルディナント。今すぐリダから離れろ」
部屋の温度が急激に下がる。ドスの効いた声を発した皇太子殿下に、さすがのフェルディナント第一王子殿下も恐れたのか、ぴゃっと素早くおれの上から退いた。
「ル、ルシウス…!これは誤解だ!僕は決して婚前交渉をしようとなど思っていない…!!!」
え!?否定するとこそこじゃないよ!?!?!?ちゃんと弁明しなきゃ!どうしてこうなったのか!婚前交渉するつもりじゃなかったなんて言ってしまえば、逆に怪しいからね!?マジでさっきから思ってたけど、この人アホなんかな…。
フェルディナント第一王子殿下の年齢は、二十四。皇太子殿下とは同い年で昔からも仲が割と良いのだけど。今回ばかりはそうとはいかないらしい。
「婚前交渉…だと?どういうことだ」
「ど、どういうことって…僕はいずれリダの夫となるから…」
「………………………………はぁぁぁぁ」
長い沈黙の後、隠すこともなく大きい溜息をついた皇太子殿下。そういうことか、とでも言いたげな表情だ。皇帝陛下の仕業であると、粗方予想は着いたのだろう。
「言っとくがフェルディナント。リダの夫は一人じゃねえぞ」
「……は?一人じゃない?」
「おまえだけじゃねえっつってんだ」
皇太子殿下は、ガシガシと頭を搔く。フェルディナント第一王子殿下は、言葉の意味が分からず「ボクダケジャナイ…ワッツ?」と謎の言葉を発している。
「リティヤーラ聖王国が一夫一妻なのは知っている。だが、シルヴェストル大帝国は権力者にのみ、子孫繁栄のため多くの伴侶を迎えることを許されている。リダは歴史に類を見ない、最強の魔法使いだ。その血を絶やしてはいけないと、何人かの伴侶を迎えることを認められた」
「そ、そんな…だ、誰によってですか?」
「皇帝陛下しかいないだろ。ほら、証拠だ」
おれは震え混じりに「ソンナハズハナイ…」と呟く。地面から立ち上がり、皇太子殿下が差し出す紙を受け取った。
簡単にザッと目を通す。内容はこうだ。シルヴェストル皇族が一人。リダ・セヴェール・レヴィス・シルヴェストルは、歴史上最強の魔法使いのため、その子孫を繁栄させる必要がある。よって、多夫制度を認める。そして、リダ・セヴェール・レヴィス・シルヴェストルに限り、複数の地位(例:皇后、王妃、大公夫人など)を所有することを認める。
…………………………は?
「あれ、あれぇ?結婚するのは、おれの身の安全のためとか言ってなかったっけ?え?おかしいなぁ」
必死に首を捻る。正直頭の中は大混乱だ。
おれの意思は関係ない。皇帝陛下の一存だけでこんなにも大事なことを許してしまうなんて。
皇太子殿下は、おれの手から紙を奪い去り、フェルディナント第一王子殿下に手渡す。
「フェルディナント。その話の上で、リダと結婚するかしないか、よく考えろ」
そう言うと、フェルディナント第一王子殿下はグッと唇を噛み締めて目線を下に落とした。
自らのたった一人の伴侶を永遠に愛す風習のリティヤーラ聖王国。権力者にのみ複数の伴侶を持つことを許されるシルヴェストル大帝国。
フェルディナント第一王子殿下からしたら、この話を知る前におれと結婚することを決断して、遠くの地からここまでやって来たのだ。侮辱もいいところだろう。
しかし、ここでの皇帝陛下の決定は絶対。
一体どうするのだろう、フェルディナント第一王子殿下は…。
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