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第58話 *

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《RDside》

「その男を生き返らせる代わりに、我と交われ」

 オルクスの言葉に、おれの脳内に宇宙が広がる。
 交わる。まじわる。マジワル。maziwaru???え?
 交わるというのは、つまり………交わる???

「生前の完璧な状態で生き返らすためには、死後十日間が限度だ」
「っ………」
「もう時期は迫っておるだろう?」

 ユージンが亡くなってから既に数日が経過している。限度となる十日間まで、あと少しだ。おれの回答次第で、ユージンの命も…。
 おれは、グッと拳を作る。覚悟を決め、顔を上げた。

「分かった…。オルクスと交わるよ」

 その言葉に、オルクスはニヤリと人の悪い笑みを浮かべる。
 交わる、ということが何を意味するのか。おれはビクビクしながらオルクスを見つめる。

「始めるか」
「っ…………」
「おまえが望んだのだから文句は言うでないぞ」

 ゆっくりと近づいてくるオルクスからおれは逃げることもできず、バイオレットサファイアの瞳をジッと見つめ返す。グッと腰を引かれたと思った瞬間、何かが唇に触れる。
 や、柔らかっ!熱い!気持ちいい!!!
 オルクスにキスをされているという事実に、ドキドキと胸が鳴る。
 おれ、魔神とキスしちゃってるよ…。

「んっ、ん…ふっ、」

 好き勝手に唇を弄ばれたと思ったら、お次は口内に舌が侵入してくる。長く分厚い舌が、逃げ惑うおれの舌を意図も簡単に捕えた。くちゅくちゅと唾液が混じり合い、飲み切れなくなった唾液が口端から溢れる。
 キス上手すぎん!?全然経験はないけど、キス上手すぎん!?イケメンってキスも上手いの!?まぁそうだよね!?こんなイケメンだし、おまけに何千年とか生きてるしね!?
 表には出ないように、心の中で一人騒ぎ立てる。

「ふぁ………」
「キスだけで腰を抜かすとはな」
「ぬ、抜かしてないし!」

 強がってみたものの、オルクスの言う通り、完全に腰の力が抜けてしまっていた。オルクスのキステクニックにふにゃふにゃになっていると、ガバッと抱き上げられる。

「 わー!!!イケメンにお姫様抱っこされちゃった!!!わーーー!!!!!!」
「………少し静かにできんのか、貴様は」

 これでもか!というほどに叫び散らしながら足をバタバタとさせていると、オルクスが呆れたように溜息をついた。寝慣れたベッドに下ろされたため、ピタリと叫ぶのを止める。
 もっとイケメンのお姫様抱っこ堪能したかったのに…。
 ブスッと拗ねていると、オルクスがおれの体の上に跨る。優しく頬を撫でられ、再びキスをされた。まるで、拗ねているのを宥めるように…。

「んっ…オルクス…」
「何だ」
「イケメン…」
「………………」

 貴様はもう黙れ、とでも言いたげな目で見つめられる。
 ていうか、何でおれオルクスにちゃっかりキスとかされちゃってんの?え?あれ?しかも何かベッドにいるし…。待てよ。交わるって、まさかっ!?!?!?
 ようやく真相に気づいたおれは、ゆっくりとベッドの上を後退りする。

「逃げる気か?」
「い、いや~…。その、交わるっていうのが…え、エッチをするっていう意味だとは…」
「今更遅い。腹を括れ」
「わっ…」

 グイッと腰を抱かれ、首元から胸元にかけて何度もキスを落とされる。肩からするりと寝間着を脱がされ、上半身が露になる。恥ずかしさに耐えきれず、両手で体を隠した。しかし、オルクスには逆効果だったようで、手首を捕まれ退かされてしまった。まじまじとおれの体を見つめるオルクス。

「ちょ、そんな…見ないでよ」
「妻の体を見て何が悪い」
「つ、妻じゃない!…って、どこ舐めてっ…んっ!」

 胸元に顔を埋めたオルクスによって、一際敏感な胸の頂きを舐められる。他の男性に比べたら大きめの乳輪をぢゅっぢゅっと激しく吸われ、おれは思わず高い声で喘いでしまった。
 嘘、おれ、本当にオルクスに抱かれちゃうの?確かにノルとはセックス紛いのことはしたけども…。でも皇太子殿下のおかげで?せいで?未遂だったし…。

「余計なことを考えるでない」
「や、やだっ…誰かっ…!」
「ここへは誰も来ん。音も何もかも遮断する結界を施したからな」
「そ、そんなっ」

 胸を堪能し終わったのか、オルクスはおれからそっと離れ、腰をするりと撫でた。
 嫌だと思っているのに、体が言うことを聞いてくれない。ユージンを生き返らすためには、おれがオルクスと体を繋げるしかないのだ。これはおれの意思じゃない。意思じゃないからね!?いくらイケメンでも、本当は嫌なんだからね!?
 必死に自分に言い聞かせ、抵抗を止める。オルクスの首に自身の両腕を回してグッと引き寄せた。

「何だ、急に」
「うっさい。早く終わらせて」
「早く終わらせられるかどうかは、貴様次第だ」

 再び唇が重なり合い、反動で押し倒される。
 イケメンは下から見てもイケメンだな…。
 そんなことを思いながら、今度は自分から積極的に舌を絡めた。と、そのとき、オルクスが胸元で揺れていたネックレスを引きちぎろうとしてきた。

「んぅっ!?こらっ!!!」
「…我の手を叩くとは…」
「これはダメっ!」
 
 指輪が付いたネックレス。ノルとお揃いの物だ。オルクスはムッとしながら頬を膨らませる。
 イケメンの拗ね顔いただきました。
 オルクスが拗ねているのだとすぐに理解したおれは、ネックレスを取り、ベッドサイドに備え付けられているテーブルに丁寧に置く。

「これで、いいでしょ?」
「ふん。十分だ」

 腕を引かれ、オルクスの腕の中へと抱き込まれたのだった。





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