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第48話
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《RDside》
おれの顔を覗き込むのは、第二皇子。プラチナブロンドの髪が何処からか迷い込んだ風に靡く。無限の青を示す瞳に、心配の色が混じっている。
見るも無残に散らばった死体を、じっくりと観察するイルちゃん。ふわふわと揺れるスノーホワイトの髪が可愛らしい。
「一体、どこから…」
「俺たちを誰だと思ってんだ」
純粋な疑問を口にすると、第二皇子は呆れたように溜息を着いて、おれの拘束具を外す。
地下だから、この部屋に窓はない。侵入するとしたら扉からしか方法はない。確か、鍵はかかっていたはず。それなのに、中にいるおれやブサメン共に気付かれずに堂々と室内に侵入していたなんて…。扉一つどうってことないってわけか。
無事に拘束具を外してもらえたおれは、そうだ!とでも言うように立ち上がる。
「まだ敵はいますよ!」
「把握済だ」
「え?」
「もう一人、助っ人がいるからね」
第二皇子とイルちゃんの言葉の意味が分からず、首を傾げる。
もう一人?ここへは第二皇子とイルちゃんだけで来たんじゃないの?もしかして、《濡鴉》の幹部の人?そんな職権乱用みたいな行為して大丈夫なの、第二皇子…。
「ほら、行くぞ」
第二皇子に手を取られ、地下室を後にする。長い階段を上がり終えた先には、申し訳程度に設置されたかのような古びた一室が。既に扉は蹴り破られているのか、見当たらない。第二皇子に引かれるがまま恐る恐る部屋の中へ入ると、何とそこには対峙するアリアーナ嬢と…ルイード先生の姿が!
ど、どうしてこんな場所にルイード先生がいるわけ!?裏切り者じゃなかったの!?
「あ、あなたたちは…」
「大人しく諦めたらどうだ。つまらん悪足掻きはやめろ」
地の底を這い蹲るような低い声。第二皇子の殺気に、アリアーナ嬢は、ブルブルと子犬のように震え出す。一目見ただけで只者ではないと判断した様子。
おれがアリアーナ嬢の立場だったらすぐにその場で土下座して、大人しく連行されるけどね。まぁ、そうとはいかないのがアリアーナ嬢だ。
震える手で魔法杖を握り直し、おれたちへとそれを向ける。どうやら、裏切り者としての意地があるらしい。
「やっと…やっとここまで来たのよ!今更引き下がれるわけがないでしょう!?」
「どうして、そこまでして?」
「全てはあの御方のためよ!」
アリアーナ嬢はそう叫び、魔法を発動させる。が、一瞬でそれはルイード先生の魔法により相殺される。第二皇子は、驚いた表情をしているアリアーナ嬢に近づく。そして結い上げたストロベリーブロンドの髪を掴み、そのまま思いっきり地面へと叩きつけた。ドゴォォォン!と建物が揺れるほどの衝撃が走り、アリアーナ嬢はピクピクと痙攣をしている。
「…………………」
「…………………」
「…………………」
あまりの突然の出来事に、そして人情のにの字もない行為に、おれとイルちゃんとルイード先生は第二皇子をジトっとした目で見つめた。
女の子だよ。裏切り者だと言え、女の子だよ。しかもその子たぶん操られてるよ。それなのに思いっきり頭を叩き割るが如く叩きつけるとか、何考えてるの?やだ、気まずそうに目を逸らす姿もイケメン。
「どうせ拷問するし…」
「コホン…。お言葉ですが第二皇子殿下。そういう問題ではないですよ」
第二皇子に向かって、ルイード先生は注意をする。
ていうか、何で?何でよ。何でルイード先生がここにいるわけ?
おれは、ルイード先生をキッと睨む。
師匠の次は、第二皇子やイルちゃんに取り入ろうとしているわけ?
「リダ。睨む気持ちも分からなくはないけど、積もる話は後だ」
「積もる話って何?」
「………後って言ったろ」
「いてっ」
剥き出しになった額に優しいデコピンをされ、思わず声を漏らす。
イケメンにデコピンされちゃった…!
一人で興奮するおれは、イルちゃんから鋭い視線を向けられる。
だからそういう目をしても、イケメンなだけだからダメだって!
「とりあえず学院長の元へ行くぞ。リダ、頼めるか」
「も~。第二皇子の頼みなら何でも聞いちゃいますよ~♡」
語尾にハートマークを付けて可愛こぶる。後ろからの視線が痛いけど、無視しよう。おれは魔法陣を描きながら、魔力を体内で練る。
ここにルイード先生が来ていたということは、少なくともルイード先生は裏切り者ではないっていうことだ。取り入るつもり?とも思ったが、彼の性格を考えてそれはない。ルイード先生が忠誠を誓うのは、師匠だけ。
第二皇子とイルちゃんは暗殺組織の一員だし。おれ以上に人を見る目には長けている。そんな二人がルイード先生を連れて来たんだ。もうこれ以上、おれが疑う理由はない。あのときの廊下での会話が気になるけれど、それも後々分かるだろう。
「これだけの人数を一度で転移させたことはないので成功するかは分かりませんが、文句は言わないでくださいね?」
そう言って、魔法陣を完成させる。「行きますよ?」と言いながら振り向いたと同時にイルちゃんが口を開く。
「言うの忘れてたけど、もう一人の裏切り者は、_________」
フッと無音になる。おれは大きく目を見開いた。
イルちゃんが発した言葉とほぼ同時に、魔法が展開され桃色の優しい光に包み込まれた。
‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦
おれの顔を覗き込むのは、第二皇子。プラチナブロンドの髪が何処からか迷い込んだ風に靡く。無限の青を示す瞳に、心配の色が混じっている。
見るも無残に散らばった死体を、じっくりと観察するイルちゃん。ふわふわと揺れるスノーホワイトの髪が可愛らしい。
「一体、どこから…」
「俺たちを誰だと思ってんだ」
純粋な疑問を口にすると、第二皇子は呆れたように溜息を着いて、おれの拘束具を外す。
地下だから、この部屋に窓はない。侵入するとしたら扉からしか方法はない。確か、鍵はかかっていたはず。それなのに、中にいるおれやブサメン共に気付かれずに堂々と室内に侵入していたなんて…。扉一つどうってことないってわけか。
無事に拘束具を外してもらえたおれは、そうだ!とでも言うように立ち上がる。
「まだ敵はいますよ!」
「把握済だ」
「え?」
「もう一人、助っ人がいるからね」
第二皇子とイルちゃんの言葉の意味が分からず、首を傾げる。
もう一人?ここへは第二皇子とイルちゃんだけで来たんじゃないの?もしかして、《濡鴉》の幹部の人?そんな職権乱用みたいな行為して大丈夫なの、第二皇子…。
「ほら、行くぞ」
第二皇子に手を取られ、地下室を後にする。長い階段を上がり終えた先には、申し訳程度に設置されたかのような古びた一室が。既に扉は蹴り破られているのか、見当たらない。第二皇子に引かれるがまま恐る恐る部屋の中へ入ると、何とそこには対峙するアリアーナ嬢と…ルイード先生の姿が!
ど、どうしてこんな場所にルイード先生がいるわけ!?裏切り者じゃなかったの!?
「あ、あなたたちは…」
「大人しく諦めたらどうだ。つまらん悪足掻きはやめろ」
地の底を這い蹲るような低い声。第二皇子の殺気に、アリアーナ嬢は、ブルブルと子犬のように震え出す。一目見ただけで只者ではないと判断した様子。
おれがアリアーナ嬢の立場だったらすぐにその場で土下座して、大人しく連行されるけどね。まぁ、そうとはいかないのがアリアーナ嬢だ。
震える手で魔法杖を握り直し、おれたちへとそれを向ける。どうやら、裏切り者としての意地があるらしい。
「やっと…やっとここまで来たのよ!今更引き下がれるわけがないでしょう!?」
「どうして、そこまでして?」
「全てはあの御方のためよ!」
アリアーナ嬢はそう叫び、魔法を発動させる。が、一瞬でそれはルイード先生の魔法により相殺される。第二皇子は、驚いた表情をしているアリアーナ嬢に近づく。そして結い上げたストロベリーブロンドの髪を掴み、そのまま思いっきり地面へと叩きつけた。ドゴォォォン!と建物が揺れるほどの衝撃が走り、アリアーナ嬢はピクピクと痙攣をしている。
「…………………」
「…………………」
「…………………」
あまりの突然の出来事に、そして人情のにの字もない行為に、おれとイルちゃんとルイード先生は第二皇子をジトっとした目で見つめた。
女の子だよ。裏切り者だと言え、女の子だよ。しかもその子たぶん操られてるよ。それなのに思いっきり頭を叩き割るが如く叩きつけるとか、何考えてるの?やだ、気まずそうに目を逸らす姿もイケメン。
「どうせ拷問するし…」
「コホン…。お言葉ですが第二皇子殿下。そういう問題ではないですよ」
第二皇子に向かって、ルイード先生は注意をする。
ていうか、何で?何でよ。何でルイード先生がここにいるわけ?
おれは、ルイード先生をキッと睨む。
師匠の次は、第二皇子やイルちゃんに取り入ろうとしているわけ?
「リダ。睨む気持ちも分からなくはないけど、積もる話は後だ」
「積もる話って何?」
「………後って言ったろ」
「いてっ」
剥き出しになった額に優しいデコピンをされ、思わず声を漏らす。
イケメンにデコピンされちゃった…!
一人で興奮するおれは、イルちゃんから鋭い視線を向けられる。
だからそういう目をしても、イケメンなだけだからダメだって!
「とりあえず学院長の元へ行くぞ。リダ、頼めるか」
「も~。第二皇子の頼みなら何でも聞いちゃいますよ~♡」
語尾にハートマークを付けて可愛こぶる。後ろからの視線が痛いけど、無視しよう。おれは魔法陣を描きながら、魔力を体内で練る。
ここにルイード先生が来ていたということは、少なくともルイード先生は裏切り者ではないっていうことだ。取り入るつもり?とも思ったが、彼の性格を考えてそれはない。ルイード先生が忠誠を誓うのは、師匠だけ。
第二皇子とイルちゃんは暗殺組織の一員だし。おれ以上に人を見る目には長けている。そんな二人がルイード先生を連れて来たんだ。もうこれ以上、おれが疑う理由はない。あのときの廊下での会話が気になるけれど、それも後々分かるだろう。
「これだけの人数を一度で転移させたことはないので成功するかは分かりませんが、文句は言わないでくださいね?」
そう言って、魔法陣を完成させる。「行きますよ?」と言いながら振り向いたと同時にイルちゃんが口を開く。
「言うの忘れてたけど、もう一人の裏切り者は、_________」
フッと無音になる。おれは大きく目を見開いた。
イルちゃんが発した言葉とほぼ同時に、魔法が展開され桃色の優しい光に包み込まれた。
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