4 / 120
第4話
しおりを挟む
《RDside》
皇太子殿下というイケメンを拝んだその日の夜。おれの伯父であり、皇太子殿下の父である皇帝陛下に夕食へと呼び出された。使用人伝に呼ばれたことに、最早恐怖しか感じなかった。イケメン拝み禁止令を突きつけられてしまえば、それはもう拷問に近いものだ。絶対に耐えられない。頼むから謹慎とかであってくれ。
全力で天に拝みながら、夕食の席へとつく。明らかに不審者らしき行動をしていると、大きな扉を開けて中へと入って来た皇帝陛下。おれは慌てて立ち上がり、皇族特有の敬礼をした。
クラウディオ・ディール・レヴィス・シルヴェストル。シルヴェストル大帝国皇帝であり、おれの母方の伯父。おれの母親であるシャルロディーテ・ダール・レヴィス・シルヴェストルの異母弟にあたるお方だ。皇太子殿下と同様のネイビーグレージュの髪に、アウイナイトの双眸。皇太子殿下とそっくりだが、全身から威厳が溢れ出ていた。
皇帝陛下は、おれを一瞥した後すぐに席へと着いたため、おれも一礼して席に着いた。有難いことに、おれは一連の作法はしっかりできるらしい。とりあえずは粗相をしないでよかった!それにしても皇帝陛下、とてつもないイケおじだ…!
「コホン…」
チラリと見るつもりが血眼になって見つめていたようで、それを見兼ねた皇帝陛下が咳払いをした。ハッとしたおれは、ツーっと鼻から垂れる液体に気が付いた。今日で二人も国宝級、いいや、宇宙級のイケメンを見たせいで鼻血を出してしまったみたいだ。突然の流血に驚いた皇帝陛下は、使用人に布を持ってくるように指示した。使用人からハンカチのような物を受け取り、何とか鼻血を止める。
「最近、使用人や息子から、おまえの様子がおかしいとの報告を受けた」
淡々と告げる皇帝陛下。
「何を企んでいる」
スッと目が細められ、アウイナイトの瞳が鋭くなる。萎縮しそうなほどに強い眼光に、ヒュッと喉が鳴る。何てイケメンなんだ!イケメンに睨まれるとか誰得!?おれ得だよ馬鹿野郎!!!……………一度冷静になろう。前世を思い出したことによって、人格は完全に前世のおれとなってしまっている。悪名高いおれだったけど、最近のおれはイケメンにしか興味がないからな。ここでもし有らぬ疑いをかけられてしまえば、最悪イケメンを拝めなくなるかもしれない。それだけは本気で避けたい!しかし、そう決心したおれはそこでとある重要なことを思い出した。あれ?おれって、本気で嫌われ者じゃない?それはもちろん、皇帝陛下からも然りだ。それもそのはず。皇帝陛下の愛する妻であった今は亡き皇后陛下は、おれの母によって惨殺されたのだから。更に、自身の夫、つまりおれの父までも手にかけた。数々の大罪により最後は、斬首刑に処された…。そんな母の息子だということでさえ嫌われるには十分なのに、前世を思い出す前のおれときたら…。もう本当に救いようがない阿呆だ。馬鹿だ。滅びてしまえ。
「何を企んでいるのか聞いているんだ」
責めるような口調に、おれは本格的に焦る。このままでは本当にイケメンを拝めなくなるのでは!?ピンチ!ピンチ過ぎる!そう思ったおれは、素直に言おうと決める。涙をぽろぽろと流しながら、おれは口を開いた。
「イケメンを拝みたいだけなのです…しくしく」
ただただ涙を流し、そう言うおれに皇帝陛下は首を傾げ、「いけめんとは何ぞや…」と呟いている。この世界の人たちには、イケメンという言葉は通じないのか。この世界にイケメンという言葉を広め、数々のイケメンを拝む。もしかしたらその偉大(?)な事を成し遂げるために、おれは前世を思い出したの?そうか、これはおれの使命なんだ!素晴らしいことに気が付いたおれは、バッと席を立ちあがる。反動で椅子が倒れ、何かが割れる音がしたが気にしない。
「伯父様!!!」
「お、おじさま…」
前世を思い出す前のおれは、自身の魔法の腕を武器に常に周りを脅して、脅して、脅しまくって、数々の悪名を欲しいがままとしていた。だけれど、その頃のおれのままでは、この先イケメンを拝むことにあたって障害になるだろう。まずはそれを挽回させないと!!!
強い決意をすると、両腕を天へと広げる。今世紀最大なんじゃ?と思うほどの大声でおれは叫んだ。
「おれ、イケメンを拝むために名誉回復させます!」
‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦
皇太子殿下というイケメンを拝んだその日の夜。おれの伯父であり、皇太子殿下の父である皇帝陛下に夕食へと呼び出された。使用人伝に呼ばれたことに、最早恐怖しか感じなかった。イケメン拝み禁止令を突きつけられてしまえば、それはもう拷問に近いものだ。絶対に耐えられない。頼むから謹慎とかであってくれ。
全力で天に拝みながら、夕食の席へとつく。明らかに不審者らしき行動をしていると、大きな扉を開けて中へと入って来た皇帝陛下。おれは慌てて立ち上がり、皇族特有の敬礼をした。
クラウディオ・ディール・レヴィス・シルヴェストル。シルヴェストル大帝国皇帝であり、おれの母方の伯父。おれの母親であるシャルロディーテ・ダール・レヴィス・シルヴェストルの異母弟にあたるお方だ。皇太子殿下と同様のネイビーグレージュの髪に、アウイナイトの双眸。皇太子殿下とそっくりだが、全身から威厳が溢れ出ていた。
皇帝陛下は、おれを一瞥した後すぐに席へと着いたため、おれも一礼して席に着いた。有難いことに、おれは一連の作法はしっかりできるらしい。とりあえずは粗相をしないでよかった!それにしても皇帝陛下、とてつもないイケおじだ…!
「コホン…」
チラリと見るつもりが血眼になって見つめていたようで、それを見兼ねた皇帝陛下が咳払いをした。ハッとしたおれは、ツーっと鼻から垂れる液体に気が付いた。今日で二人も国宝級、いいや、宇宙級のイケメンを見たせいで鼻血を出してしまったみたいだ。突然の流血に驚いた皇帝陛下は、使用人に布を持ってくるように指示した。使用人からハンカチのような物を受け取り、何とか鼻血を止める。
「最近、使用人や息子から、おまえの様子がおかしいとの報告を受けた」
淡々と告げる皇帝陛下。
「何を企んでいる」
スッと目が細められ、アウイナイトの瞳が鋭くなる。萎縮しそうなほどに強い眼光に、ヒュッと喉が鳴る。何てイケメンなんだ!イケメンに睨まれるとか誰得!?おれ得だよ馬鹿野郎!!!……………一度冷静になろう。前世を思い出したことによって、人格は完全に前世のおれとなってしまっている。悪名高いおれだったけど、最近のおれはイケメンにしか興味がないからな。ここでもし有らぬ疑いをかけられてしまえば、最悪イケメンを拝めなくなるかもしれない。それだけは本気で避けたい!しかし、そう決心したおれはそこでとある重要なことを思い出した。あれ?おれって、本気で嫌われ者じゃない?それはもちろん、皇帝陛下からも然りだ。それもそのはず。皇帝陛下の愛する妻であった今は亡き皇后陛下は、おれの母によって惨殺されたのだから。更に、自身の夫、つまりおれの父までも手にかけた。数々の大罪により最後は、斬首刑に処された…。そんな母の息子だということでさえ嫌われるには十分なのに、前世を思い出す前のおれときたら…。もう本当に救いようがない阿呆だ。馬鹿だ。滅びてしまえ。
「何を企んでいるのか聞いているんだ」
責めるような口調に、おれは本格的に焦る。このままでは本当にイケメンを拝めなくなるのでは!?ピンチ!ピンチ過ぎる!そう思ったおれは、素直に言おうと決める。涙をぽろぽろと流しながら、おれは口を開いた。
「イケメンを拝みたいだけなのです…しくしく」
ただただ涙を流し、そう言うおれに皇帝陛下は首を傾げ、「いけめんとは何ぞや…」と呟いている。この世界の人たちには、イケメンという言葉は通じないのか。この世界にイケメンという言葉を広め、数々のイケメンを拝む。もしかしたらその偉大(?)な事を成し遂げるために、おれは前世を思い出したの?そうか、これはおれの使命なんだ!素晴らしいことに気が付いたおれは、バッと席を立ちあがる。反動で椅子が倒れ、何かが割れる音がしたが気にしない。
「伯父様!!!」
「お、おじさま…」
前世を思い出す前のおれは、自身の魔法の腕を武器に常に周りを脅して、脅して、脅しまくって、数々の悪名を欲しいがままとしていた。だけれど、その頃のおれのままでは、この先イケメンを拝むことにあたって障害になるだろう。まずはそれを挽回させないと!!!
強い決意をすると、両腕を天へと広げる。今世紀最大なんじゃ?と思うほどの大声でおれは叫んだ。
「おれ、イケメンを拝むために名誉回復させます!」
‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦
47
お気に入りに追加
1,892
あなたにおすすめの小説
【完結】ラスボスヤンデレ悪役令息(仮)に転生。皆に執着溺愛され過ぎて世界滅亡エンドの危機です
日月ゆの
BL
「色無し」と蔑まれる『ラズ・クレイドル』はヤンデレないと死にかけ、いつの間にかヤンデレ製造機になっていた。
ヤンデレの連鎖が止まらない?
黒に近い濃い色であればあるほど、魔力が強いといわれ尊ばれる世界。
『聖爵家』と云われる癒やしの聖魔法を唯一血縁継承可能である、貴重な公爵家『クレイドル家』の嫡男として生まれた『ラズ・クレイドル』。
透けるような白髪、ラズベリーピンクの瞳を持つ彼は『色無し』『忌み子』といわれ蔑まれていた。
彼にはクレイドル家とリューグナー王家との昔からのしきたりにより、「数代おきに婚姻し子を授かる」という生まれる前から決められた運命が。
当の本人ラズは前世の記憶が朧げにあるためなのか、元の性格か。
意外にもこの「しきたり」や「色無し」に対してぽやんと楽観的に受け入れていた。
しきたりにより、将来の伴侶である『レオン・リューグナー』との初顔合わせの日。
ラズの目の前には『清く正しく美しいヤンデレを目指せ!』と目を疑うような文言を表示したウィンドウが出現した。
突然出現したウィンドウの指示により、その日からラズは婚約者相手に『ヤンデレ』行動を強制的に行なうことに。
すると何故か周りの皆のほうがヤンデレが連鎖し、ヤンデレ製造機に。
ひょんなことから知ってしまった、自身の悲惨な未来を回避するだけで精一杯のラズは、周りに過剰に執着溺愛されているのも気付かない。
ある日降された神託により、世界滅亡をも巻き込むラズへの周りの執着溺愛が加速する⸺
※ハピエンです。
※男性妊娠可能な世界のお話です。
直接的な描写はありませんが、苦手な方はご回避下さい。
※攻め視点ヤンデレているので、苦手な方はご回避下さい。
※序盤はショタ時代続きます!
※R18は保険です。最後の方にほんのりあり。※つけます。
※ep13大幅改稿しました。
★ぜひポチッと『お気に入り登録』『いいね』押していただき作者への応援お願いします!どんな感想でも良いのでいただけると嬉しいです。
☆表紙絵はAIで画像作成しました。
ゲイの平凡処女受けバンドマンがどうしてもセックスがしたくてゲイ向け出会い系サイトに登録したらエラいことになってしまった話
すれすれ
BL
受けと同じバンドメンバーの美形攻め×性欲強めのゲイのバリネコ平凡受けの話です【全8話】
セックスがしたくてゲイ向け出会い系サイトに登録した受けが、ある日条件にマッチするタイプの男と出会ってえっちなやりとりをして、とうとうリアルで会うことになり……という話。
ビデオ通話でオナニーの見せ合いからのホテルでセックスです。
乳首責め、手コキ、前立腺責め、結腸責め、連続絶頂、潮噴き、中出しetc
超絶美形だらけの異世界に普通な俺が送り込まれた訳だが。
篠崎笙
BL
斎藤一は平均的日本人顔、ごく普通の高校生だったが、神の戯れで超絶美形だらけの異世界に送られてしまった。その世界でイチは「カワイイ」存在として扱われてしまう。”夏の国”で保護され、国王から寵愛を受け、想いを通じ合ったが、春、冬、秋の国へと飛ばされ、それぞれの王から寵愛を受けることに……。
※子供は出来ますが、妊娠・出産シーンはありません。自然発生。
※複数の攻めと関係あります。(3Pとかはなく、個別イベント)
※「黒の王とスキーに行く」は最後まではしませんが、ザラーム×アブヤドな話になります。
世話焼き風紀委員長は自分に無頓着
二藤ぽっきぃ
BL
非王道学園BL/美形受け/攻めは1人
都心から離れた山中にある御曹司や権力者の子息が通う全寮制の中高一貫校『都塚学園』
高等部から入学した仲神蛍(なかがみ けい)は高校最後の年に風紀委員長を務める。
生徒会長の京本誠一郎(きょうもと せいいちろう)とは、業務連絡の合間に嫌味を言う仲。
5月の連休明けに怪しい転入生が現れた。
問題ばかりの転入生に関わりたくないと思っていたが、慕ってくれる後輩、風紀書記の蜂須賀流星(はちすか りゅうせい)が巻き込まれる______
「学園で終わる恋愛なんて、してたまるか。どうせ政略結婚が待っているのに……」
______________
「俺は1年の頃にお前に一目惚れした、長期戦のつもりが邪魔が入ったからな。結婚を前提に恋人になれ。」
「俺がするんで、蛍様は身を任せてくれたらいいんすよ。これからもずっと一緒っすよ♡」
♢♦︎ ♢♦︎ ♢♦︎ ♢♦︎ ♢♦︎ ♢♦︎ ♢
初投稿作品です。
誤字脱字の報告や、アドバイス、感想などお待ちしております。
毎日20時と23時に投稿予定です。
【R18】両想いでいつもいちゃいちゃしてる幼馴染の勇者と魔王が性魔法の自習をする話
みやび
恋愛
タイトル通りのエロ小説です。
「両想いでいつもいちゃいちゃしてる幼馴染の勇者と魔王が初めてのエッチをする話」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/902071521/575414884/episode/3378453
の続きです。
ほかのエロ小説は「タイトル通りのエロ小説シリーズ」まで
茶番には付き合っていられません
わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。
婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。
これではまるで私の方が邪魔者だ。
苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。
どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。
彼が何をしたいのかさっぱり分からない。
もうこんな茶番に付き合っていられない。
そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。
【R18】翡翠の鎖
環名
ファンタジー
ここは異階。六皇家の一角――翠一族、その本流であるウィリデコルヌ家のリーファは、【翠の疫病神】という異名を持つようになった。嫁した相手が不幸に見舞われ続け、ついには命を落としたからだ。だが、その葬儀の夜、喧嘩別れしたと思っていた翠一族当主・ヴェルドライトがリーファを迎えに来た。「貴女は【幸運の運び手】だよ」と言って――…。
※R18描写あり→*
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる