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〖108〗怪しい店
しおりを挟む「!?」
見上げるより先に首根っこを掴まれる。
「ったく····こんな所まで、どうやって逃げてきたんだ」
「早く戻るぞ」
ガタイの大きな中年の2人組だった。
片方がシオンを担ぎ上げ、丘を下り始める。
「放──むぐっ」
開きかけた口に、何かを咥え込ませられる。
直径3センチくらいの球体だ。吐き出そうとするが、両側には細い革ベルトが付けられていて、後頭部で固定されると、自分で取ることは出来なくなってしまった。
シオンは両手両足を拘束され、馬車の荷台に放り込まれた。
一体、どういうことだ?
この世のユートピアであるオルトンの内側は、全住民が何の不自由もなく暮らしているのでは?
しかし彼らはシオンをどこかの逃亡者と勘違いして、無理矢理馬車に押し込んだのだ。
車輪は間もなくして停止した。
シオンは荷台から下ろされ、城門の中へと連れ去られる。
やけに派手な外観の建物だ。
うさぎの形に光った大きなパラペットには、よく分からない文字とハートが散りばめられていた。
「次、くだらないことを考えてみろ」
「っ!」
地下に引きずられたシオンは、背中を押され、冷たい床に倒れ込んだ。
「鞭打ち100回だ」
中年の男はそう吐き捨て、次にピンクの布を投げて寄こした。
「早く着替えろ」
「·····?」
広げると、それは変な服だった。
すけた短パンと、妙にぴっちりした丈の短い上着。胸元は細い切れ目があって、うさぎの耳みたいなカチューシャまでセットだ。
ビー、と、耳をつんざくような音が響く。
地下の奥には、シオンが渡されたのと似たような服を着た少年が沢山いた。
同時刻、リアムはオルトンの街でシオンを探していた。
探せどシオンは見つからない。
しかし、コアは反応している。彼がこの島のどこかにいることは確かだった。
とすると───残りは壁の内側。
呆れを通り越していっそ不思議な心境だ。
臆病で能力もないくせに、なぜじっとしていられないのだろう。
コロシアムにいたバイモンの末裔と双子は、パンドラの人間だ。
そのうちバイモンの末裔は、エドワードの監視を巻き、昨日から姿を消しているという。
嫌な予感がする。
リアムは舌打ちを落とした。
時計台を見上げると、時刻は正午を過ぎたところだった。
準決勝のトーナメント戦が終わった頃だろうか。
町はいつにも増して賑やかだった。
今夜零時から、ついに市民権獲得者決定戦が行われる為だ。
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