悪魔皇子達のイケニエ

re.《３４５》ぐちゃぐちゃ

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「なぜそんな顔をする？」


涙を流すピンクに、呆れるほど目が離せなくなる。

ルビーの世話を任せている今、ミチルには負担が多い。
身体的な負担を減らすための備えを用意しているといえば、たった一人の伴侶は言うのだ。
他の者を抱いてマナを凌ぐのかと。

それは、ミチルにとって都合の良い妄想。
そして有ってはならない屈辱だ。

この子ウサギには、自分の想いなど何一つ伝わっていない。
悪気もなく他を抱く可能性を口にして背を向けるのは、侮辱以外の何物でもないだろう。

どうしようもない怒りに混じる絶望を、行き場もなく握りしめる。

いっそ道具のように使って、彼に解らせれば良いだろうか。
この役目からは逃れられないと。恐怖を植え付けて、二度と自分を無視できないようにしてやれば良いのか？

それなのに────なぜ彼が涙を流すのか。


「ミチル」

「や·····っ」


一方、ミチルが手を振り払うのは必然だった。

(嫌)

頭の中がぐちゃぐちゃだ。

心を殺してしまいたい。何度もそう思わさせられる。
この靱やかな手も、神経質で知的な目も、自分以外を抱いて熱を帯びたのだろう。

今度こそ逃げ出そうとしたのに、この身は無力だった。


「俺を拒むことは許されない」


両手は頭上で拘束されてしまう。
片手の指先で束ねられているのだ。柔らかなベットへ身が沈むのと同時に、首筋を高い鼻が撫でる。
慌てふためく間もなかった。


「ふニャ·····ぁ·····ッ」


(痛い)


甘い針が、皮を破る気配。

血を吸われたところがじんじん熱い。
唇は撫でるだけで服を割いてゆく。


「ぃやぁ·····っ·····ん·····ッ！、♡」


乳頭をズレてキスが落とされる。
牙を立てる前の味見みたいだ。
フーフー息を吐いて痛みに備えるのに、その周りや腹、ヘソなんかに、何度もリップ音が響く。


「はふ、ン、ッ♡」

「嫌だと言いながら·····」


見下ろした先には高い鼻。
彫りの深い顔立ちに大袈裟なほどドキリとする。
いつの間にか、ほぼ素っ裸だった。


「腰がくねっているよ」

「ちが·····───ぁ·····ッ」


胸のてっぺんに寄せられた唇がピタリと止まる。

ドキドキ高鳴る鼓動が、触れなくても伝わってしまいそうだ。
ミチルはまた泣きそうになった。