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re.《326》粗相
しおりを挟む「!」
ギョッとする。
あのころと同じように、彼が自分の目の前で膝を着いたから。
誰の前であっても、こんな風にかしずいてはいけないはずの人だ。
慌てるミチルだが、あまりに深い紅の瞳と見つめ合うと、逸らすことすら罪になる気がする。
「·····良かった。また·····───」
「また、悲しい顔をしていると思ったんだ」と微笑む造形美に瞬きを忘れる。
(·····悲しい顔·····?)
ツキリといたんだ胸元の違和感に、首を振る。
声を聞くとソワソワしたり、見つめ合うと胸が痛んだり、彼限定の病気にでもかかったみたいだ。
それなのに姫抱きされて体が密着している時は、酷く落ち着いた。
まるで誰も侵せない、絶対に安全な場所を確保したような居心地だったのだ。
それもこれも、彼が天界人だからだろうか。
(そういえば)
はたと意識を戻す。
彼はもう立ち上がって、姿見の前でカフスを外している。
シャツのボタンに手を伸ばす様を見て、ミチルは慌てて視線を泳がせた。
当たり前のようにお邪魔してしまったが、深夜の寝室に2人きりだ。
「!」
不意に、ベット横のテーブルにカップが置かれた。
ハーブの香りがする湯気だ。
促されるまま口をつけたら、以外にも熱くない。隣に座った男は、しばらくして口火を切った。
「落ち着いた?」
ミチルは不思議に思いながら頷いた。
この前から思っていたけれど、想像よりずっと親しげだ。
声は公の場より優しい。肖像画では冷たい印象のあった目元も、セクシーな唇も、今は別の人格みたいに───。
「!」
見上げたらすぐに目が合ってしまった。
こんなに赤い輝きは他にないだろう。
目線の先で長い足が組まれる。それすらどこか背徳的で、また違うところに視界を移す。
「遅くに·····ごめんなさい。あの····っ······」
チクタクと響く時計に混ざって、もう出ていくと告げたはずだった。
「ミチル·····」
名前を呼ばれて口をつぐむ。
やってしまった。もう手遅れだ。
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