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re.《325》既視感
しおりを挟む「失礼」
その場に立ちすくんでいた身体は、ふわりと宙に浮いた。
「取り敢えず·····俺の部屋でいい?」
「ニャア」
開いた口から、呆れるほど情けない鳴き声が漏れる。
自分自身驚いて手で口を塞ぐが、「ミチルの寝室は暖まっていないから」と言う相手は、特にそれを気にしていなさそうだ。
(·····あれ?)
───一瞬、感じたことのある既視感。
優しい抱き方なのに、手は大きくて堅い。
高くなった景色。
この状況に、覚えがある。
「·····?」
そして、恐る恐る相手をみあげる。
どんなに気が動転したとしても、ため息が漏れるほどの美男ということだけは解る。
「偶然会えてよかった。寒かったでしょう、可哀想に·····」
優しい声に思わずうっとりして、またハッとする。
いくら良い声だからって、あまり知りもしない、それも天界人の彼に姫抱きされているのに落ち着いてしまうなんてどうかしている。
緊張感を保とうとするのに、恥ずかしさと緊張は決して悪い居心地では無い。
ドギマギしながらまたちょっと盗み見たら、目が合ってしまった。
相手は微笑みかけて、しかしちょっと目を見開く。
そんな表情一つ一つに見惚れそうになる。
彼は1度立ち止まった。
抱き上げていた手は片手になって、自由になった方がこちらへ伸びてくる。
「·····??」
なんだろう。
彼の言動に気を取られていたミチルは、その行先を見て驚愕した。
なんと、胸元を晒す形で、そこが丸見えだ。
自分で隠すより先に、器用な手が片手でボタンを留めた。
ミチルは無言のまま身を委ねるしか無くなった。
確かに両方丸出しだった。
新手の変質者と思われてもおかしくない。
ぐるぐる考えているうちに、彼は再び立ち止まった。
扉の前だ。
中は、ほかの皇子たちと同じような風景。しかしどこか生活感がない。
それが、彼がここに長くとどまる気がないことを表しているみたいだった。
そっとベットに降ろされて、ミチルは戸惑いながらも礼を言った。
「大丈夫?」
「!」
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