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re.《235》不審人物
しおりを挟む昨日公共の美術館には全て訪問した。
よって、このアース美術館は民間施設だろう。
あの庭園のすぐ側に建てられる民間の建物など想像もできない。
ミチルは迷った後、その矢印が指す方から微量にずれた曲がり道を進んだ。
セントラルロードから1本外れたら、街並みはまた少し変わる。
のどかな市民街があるはずだ。
きっと気になる美術館もこっちだろう。
(真っ直ぐ10分)
自分の足だと15分くらいだろうか。
いや、もう少しかかるか?
美術館まで行ったら戻ることにしよう。
どうせダリアも、すぐには戻ってこないだろう。
もしかしたらもう戻ってこないかも。なんて、バカバカしいことを思いながらテクテク進む。
セントラルロードの音楽が遠ざかってゆく。
細くなった路地は、さっきよりちょっと居心地がいい。
「───こっちに進むの?」
突如、斜め後ろから親しげな声が言った。
それは一瞬、風や木の葉の擦れる音なんかが塞がれるような音色だ。
「─────」
ミチルは立ち止まりかけ、真っ直ぐを貫いた。
危ない。
知らない人の呼びかけに反応してしまうところだった。
きっと片っ端に声をかけて、立ち止まった相手をターゲットに物を売付ける商人とかだろう。
こんな辺鄙な場所にまで混在しているとは、彼らもご苦労なことだ。
「こっちはちょっと、おすすめ出来ないよ。治安悪いんだ」
予想は確信となる。
「止まってよ」
治安悪いのはこの男の方だ。
声はまだ若い感じがするが、この妙に親しげでこっちを気遣うような物言いも慣れた者のそれと思えば納得がいく。
詐欺師に止まれと言われて止まる馬鹿じゃない。
「ううん·····もしかして、耳が悪い?いきなり前に出てったら、びっくりしちゃうかな?ああ、どうしよう」
丁寧に歩幅を合わせながら、彼は離れてゆく気がなかった。
いよいよ不審者だ。
ここまで来ればこちらに、否利益となり得るこちらに献身的とさえ思えてくる。
「悪いこと言わないからさ·····」
ミチルはちょっと変に思った。
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