悪魔皇子達のイケニエ

re.《２０１》ウソ

さっきの人物を探しに───。


「起きてンじゃん」


陽気で意地悪な感じの声に、予定が上手くいかないことを予期する。

いつの間にか閉まっていたはずの扉の内側に入ったのは、たまに調子が悪そうなハインツェだ。
今耳が生えていたら、きっと分かりやすく窄めていたと思う。


「寝たって言うから、さっさと出てこうと思ったけど····」


「ウソついたんだ」と言いながら、涼し気なライムグリーンは様態を確かめるようにこちらを眺め回す。

そして、神経質そうな片眉を歪めた。


「──はっ」


乾いた笑みは嫌な感じがする。
大きな片手が彼の方顔を覆う。指の間から覗いたのは、ゾッとするほど冷たい視線だった。


「ヨハネスあいつで発情したの？」


暴走する前の彼のカオだ。

震え上がって、ベットの羽毛を握りしめる。
だというのに──こちらを見下ろしていた悪魔は、数秒の沈黙の後、軽く首を振った。

へんな動作だ。
まるで、自分を律している様に見えるのは気のせいだろうか？


「へぇ、予想よりよっぽどゲンキで安心したよ。心配して損しちゃったな」


次にはいつもの軽薄な笑みだ。


「·····？？」


てっきり、彼の激動に任せて痛い目を見ると思った。
何が彼の逆鱗に触れたのかは分からないが、今の顔は確実にヤバい地雷を踏んだ時のソレだった。

貼り付けられた笑みを見返す。
糸目になった隙間から輝いたエメラルドは相変わらず冷たくて───然しそれを隠すように傾く。


「言いたいことあったんだけど、まァ今度でいいや」


てか、言う気が無くなった。と、笑顔に似合って気まぐれな発言が吐露される。
何だ？

わざわざ部屋に来るほど伝えなければいけないことなら早めに言われた方がいい。

モヤモヤするうちに「それよりも」と話題をそらされてしまう。
ベットに影ができる。
次には片足のくるぶしを掴まれて、軽く引っ張られた。


「すげえ甘い匂いすんだけど·····んな状態でヨハネスを追い払ったってことは、1人でするつもりだったんだよね？」