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re.《27》ミチルの心配事
しおりを挟む「い、痛いかもしれないし·····」
「?」
相手が首を傾げる。
痛い。そう何度か呟いて、彼は釈然としない顔をした。余談だが、アーモンド型の瞳にモノクルは本当によく似合っている。
「うーんと、ミチル様」
レイモンドが人差し指を立てる。
「夫婦なのですから、痛い時は痛いと言えば良いのです。嫌なことは嫌、そうでしょう」
また子供に言い聞かせるみたいなそれだ。
彼はわかっていないのだ。
ダリアにとって、自分は伴侶なんかじゃない。
ただの道具だ。
「·····これはいけないな」
しばらくして彼は呟いた。
「私から陛下に申し伝えておきましょう」
「!だめ」
告げ口したと思って怒らせるかもしれない。
·····いいや、こんなことで彼が感情を出す訳がないことは分かっている。
本当は、面倒なやつだと煙たがられるのが怖いのだ。
「ダリアには、言わないで」
ミチルは消え入りそうな声で告げた。
「秘密にして·····」
「··········」
ギュっと服の裾を握りしめる。
無駄なことはしない。言わない。
誰かが言ったとおり、自分はとても───。
「臆病ですね」
「へ」
脳内に浮かんだ二文字が吐露されると、ミチルはギクリとしてレイモンドを見上げた。
正統派の美形はどこまでも上品だ。
「ぅ·····」
何も言い返せなくなって下唇を噛むと、彼は「いいえ」と両手を振った。
「陛下の事ですよ。ミチル様の事が気が気でない思いが強いあまり、ミチル様ご自身にも伝わってしまったんでしょう。あの覇気じゃ、怖くなっちゃいますよねぇ」
言いながら腕を組むレイモンド。
一介の使用人が、ダリアを臆病呼ばわり。何を聞いてそう思ったのかは不明だが、上から目線に評価までしている。とんでもない事だ。
いや、彼は一介の使用人と言うには変だろうか。
ダリアが自分をこの上なく気にしているだって?
もう何からツッコめばいいのか分からなくなってくる。
ブンブンと首を振る。
レイモンドの言うことを宛にしてはいけない。
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